療養病棟入院基本料 「医療区分⑨:せん妄」の評価ポイント【R8.6診療報酬改定対応】

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※本記事は「医科点数表の解釈 令和8年6月版」を基にしています。

療養病棟に入院する患者の医療区分やADL区分は、療養病棟入院基本料の算定に直結する重要な評価です。

そのため、入院患者ごとに毎日これらの区分を確認し、「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に正確に記録することになっています。

また、その評価を行う際には、「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を基準として用いることになっています。

この記事では、この手引きに基づき、「医療区分⑨:せん妄」の項目を分かりやすく解説し、現場での評価のポイントを整理します。

医療区分・ADL区分の評価は、必ず「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を理解した上で行いましょう。

目次

医療区分「せん妄」の算定要件と評価・判断基準

医療区分「せん妄」の算定要件と評価・判断基準について解説します。

算定期限(連続7日を限度)・医療区分2に該当

【処置等に係る医療区分⑨】せん妄に対する治療

分類医療区分算定期間評価の単位
処置等医療区分2連続7日を限度1日毎

医療区分「せん妄」は、処置等に係る医療区分に分類され、算定期間は連続7日を限度とされています。

医療区分の定義(医科点数表の解釈での記載事項)

医療区分「せん妄に対する治療」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


9. せん妄に対する治療

項目の定義
せん妄に対する治療を実施している場合(せん妄の症状に対応する治療を行っている場合に限る。)
評価の単位
1日毎
留意点
「せん妄の兆候」は、以下の6項目のうち「この7日間は通常の状態と異なる」に該当する項目が1つ以上ある場合、本項目に該当するものとする。

a.注意がそらされやすい
b.周囲の環境に関する認識が変化する
c.支離滅裂な会話が時々ある
d.落ち着きがない
e.無気力
f.認知能力が1日の中で変動する


7日間を限定とし、8日目以降は該当しないものとする。ただし、一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には、本項目に該当する。

リンクをクリックすると、関連用語の説明を確認できます。


医療区分の算定要件・確認事項

医療区分の評価に間違いがないように、以下の点に注意しましょう。

① せん妄に対する治療の確認

せん妄に対する治療を実施している状態であることを確認します。

せん妄の兆候は以下の6項目の中で1つ以上の項目が、「7日間、通常の状態と異なる場合」に本項目に該当するものとします。

a.注意がそらされやすい。
b.周囲の環境に関する認識が変化する。
c.支離滅裂な会話が時々ある。
d.落ち着きがない。
e.無気力
f.認知能力が1日の中で変動する。

② 継続日数の考え方

評価票の記入は、連続7日間までになり8日目以降は記入できません。

ただし、一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には該当するため、評価票への記入が可能になります。

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

判断・評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

① 該当要件のチェックポイント

該当要件のチェックポイント
せん妄の診断が適切に行われている。
「せん妄の兆候」に該当する診断根拠、患者の訴え、診察所見、治療方針について経過記録に記載している。
せん妄に対しての治療が適切に行われている。
判定の確認は医師が行っている。

② 算定期間のチェックポイント

算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。
7日間を限度とし、8日目以降は該当しないものとする。
一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には該当になる。                        

他の医療区分を確認する
※クリックすると開きます。

≪評価の手引き≫

≪処置等に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪疾患・状態に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪ADL区分≫

≪身体的拘束の実施≫

医療区分「せん妄」の記入例

医療区分「せん妄」の記入例です。

せん妄に対する治療を10日間継続中の記入例

11/1にせん妄に対する治療を開始。

その後、治療を10日間継続中。

日付症状・治療評価票
11/1せん妄に対する治療を開始該当(1日目)
11/2せん妄に対する治療を継続該当(2日目)
11/3せん妄に対する治療を継続該当(3日目)
11/4せん妄に対する治療を継続該当(4日目)
11/5せん妄に対する治療を継続該当(5日目)
11/6せん妄に対する治療を継続該当(6日目)
11/7せん妄に対する治療を継続該当(7日目)
11/8せん妄に対する治療を継続非該当(8日目)
11/9せん妄に対する治療を継続非該当(9日目)
11/10せん妄に対する治療を継続非該当(10日目)

連続した7日間を超えてせん妄の治療を行っていても、8日目以降は「非該当」になります。


他の医療区分を確認する
※クリックすると開きます。

≪評価の手引き≫

≪処置等に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪疾患・状態に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪ADL区分≫

≪身体的拘束の実施≫

せん妄と認知症の振り分け

せん妄と認知症は合併することもあり症状の区別が難しいのですが、せん妄の評価をするにあたり、認知症と混同しないように注意することが必要です。

せん妄は、主に「注意力が障害される」ことを特徴とします。

突然発生して精神機能の変動をもたらしますが、原因(身体の病気や薬剤など)を特定することで改善する可能性があります。

高齢者の場合は、急な入院による環境の変化や、高熱・転倒などのイベント後などに発生しやすくなります。

認知症は、主に「記憶力が障害される」ことを特徴とします。

症状は比較的安定していますが、緩やかに進行して根治が難しいとされています。

特徴せん妄認知症
発症突然、急激緩徐、徐々に進行
意識状態混乱、もうろうとしている清明(意識ははっきりしている)
症状の変動1日のうちで大きく変動する(特に夜間悪化しやすい)比較的安定している
主な障害注意力障害が目立つ記憶障害が目立つ
原因身体の病気、手術、薬剤など、明確な原因があることが多い脳の神経細胞の変性など、原因は多様
予後原因が取り除かれれば改善する可能性がある(可逆的)基本的に不可逆的で、進行していく(進行性)

他の医療区分を確認する
※クリックすると開きます。

≪評価の手引き≫

≪処置等に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪疾患・状態に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪ADL区分≫

≪身体的拘束の実施≫

医療区分は入院基本料にどう影響するのか?

療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を行い、それをもとに入院料が決定する仕組みになっています。

入院患者の医療区分・ADL区分の評価

医療区分は「入院患者の医療必要度」を評価したもので、その評価によって「医療区分1、医療区分2、医療区分3」のいずれかに決定されます。

医療の必要度低い高い
医療区分医療区分1医療区分2医療区分3

ADL区分は「入院患者の介護必要度」を評価したもので、その評価によって「ADL区分1、ADL区分2、ADL区分3」のいずれかに決定されます。

介護の必要度低い高い
ADL区分ADL区分1ADL区分2ADL区分3

医療区分・ADL区分による入院料の決定

療養病棟入院基本料は30分類に分かれていて、医療区分とADL区分の組み合わせによって、入院料1~入院料30までのいずれかになる仕組みになっています。

医療区分とADL区分の組み合わせは、

  • 疾患・状態に係る医療区分1・2・3
  • 処置等に係る医療区分1・2・3
  • ADL区分1・2・3

上記の3つを組み合わせた27分類に、「スモンに関する3分類」を加えた計30分類の入院料になっています。


( 疾患・状態の医療区分1~3 × 処置等の医療区分1~3 × ADL区分1~3 )
+
スモン3分類

⇩⇩⇩⇩⇩⇩

( 3 × 3 × 3 ) + 3 = 27 + 3 = 30分類の入院料

[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

[令和8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合について、Excelシートをnoteにて公開中です。

「医療区分2・3の割合|Excelシート」では、以下の4シートをひと月分として、入力を行っていきます。

① 割合シート

「割合シート」では、医療区分2・3の割合を求めます。

≪主な入力項目≫

  • 患者氏名
  • 日々の入院料
  • 前月、前々月の医療区分2・3の総数
  • 前月、前々月の延べ患者数

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • その月の最大入院数、最小入院数、延べ患者数、重症度割合
  • 直近3ヵ月の重症度割合
  • 入院料1~30の総数
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

② 分類シート

「分類シート」では、入院患者の医療区分を分類します。

≪主な入力項目≫

  • ADL区分(その月の主な区分)
  • 算定した医療区分(疾患・状態)(処置等)の内容

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • 医療区分(疾患・状態)の分類(%表示)
  • 医療区分(処置等)の分類(%表示)
  • 医療区分(疾患・状態)と医療区分(処置等)を合わせた分類(%表示)
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

③ 拘束シート

「拘束シート」では、身体的拘束の実施割合を計算します。

≪主な入力項目≫

  • 身体的拘束を実施した日
  • 前月、前々月の身体的拘束を実施した日数
  • 前月、前々月の入院料算定日数

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • その月の身体的拘束の実施日数、入院料算定日数、身体的拘束の実施割合
  • 直近3ヵ月の身体的拘束の実施割合
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

④ 点数シート

「点数シート」では、入院料の件数に対しての診療報酬を計算します。

≪主な入力項目≫

  • 一般、生活療養における各入院料の数
  • 入院基本料1、入院基本料2、特別入院基本料の選択

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • 入院料別の診療報酬点数
  • 入院料の診療報酬の合計点数
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

医療区分「せん妄」に関連する用語

「せん妄」とは?

せん妄とは、身体的な原因(脱水、感染、薬物、手術など)によって引き起こされる、一過性の意識障害と精神症状を伴う状態です。

突然発症し、集中力の低下、見当識障害(時間や場所がわからなくなること)、幻覚、妄想、興奮などの症状が見られます。

原因を取り除けば回復する可能性が高い病態であり、認知症とは区別されます。

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「せん妄の症状に対応する治療」とは?

せん妄の症状に対応する治療は、症状に対して以下のことが行われます。

  • 原因となっている身体疾患の治療
  • 症状を緩和するための環境調整
  • 薬物療法

具体的には、感染症などの原因疾患の治療、原因となっている薬の見直し、静かで安心できる環境整備、睡眠・覚醒リズムの調整、水分補給や疼痛管理などを行います。

重度の興奮がある場合は、医師の判断で抗精神病薬などの薬剤が使われることもあります。

根本的な原因の治療
原因疾患の特定と治療体の病気(感染症など)が原因であれば、その疾患を治療します。
薬の見直し原因となっている薬剤がある場合は、中止や変更を検討します。
環境調整と身体的ケア
安心できる環境整備・刺激の少ない、静かな環境をつくります。
・危険なものを片付け、安全を確保します。
・住み慣れた環境を急激に変えないように配慮します。
生活リズムの調整・昼間に日光を浴び、夜間は照明を暗くするなどして、昼夜のメリハリをつけます。
・時計やカレンダーを近くに置き、時間や曜日の感覚を保てるようにします。
身体的ケア・脱水や便秘に注意し、適切な水分補給を行います。
・痛みの管理を徹底します。痛みがあるとせん妄になりやすいためです。
精神的ケア
本人の話をよく聞く不安や恐怖を感じている本人の話を否定せずに聞き、気持ちに寄り添います。
安心させる声かけ名前を呼んだり、そばにいることを伝えたりして、安心させます。
無理に制止しない興奮を助長しないように、無理に制止せず、様子を観察します。
薬物療法
抗精神病薬興奮が強い場合、医師の判断で使われることがあります。
その他の薬剤睡眠薬の種類を見直したり、不眠時や興奮時に使用する頓服薬を検討したりすることもあります。

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