療養病棟入院基本料 「医療区分⑩:経鼻胃管・胃瘻等の経管栄養(発熱又は嘔吐を伴う)」の評価ポイント【R8.6診療報酬改定対応】

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※本記事は「医科点数表の解釈 令和8年6月版」を基にしています。

療養病棟に入院する患者の医療区分やADL区分は、療養病棟入院基本料の算定に直結する重要な評価です。

そのため、入院患者ごとに毎日これらの区分を確認し、「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に正確に記録することになっています。

また、その評価を行う際には、「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を基準として用いることになっています。

この記事では、この手引きに基づき、「医療区分⑩:経管栄養(発熱又は嘔吐を伴う)」の項目を分かりやすく解説し、現場での評価のポイントを整理します。

医療区分・ADL区分の評価は、必ず「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を理解した上で行いましょう。

目次

医療区分「経管栄養(発熱又は嘔吐を伴う)」の算定要件と評価・判断基準

医療区分「経管栄養(発熱又は嘔吐を伴う)」の算定要件と評価・判断基準について解説します。

算定期限(連続7日を限度)・医療区分2に該当

【処置等に係る医療区分⑩】経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養(発熱又は嘔吐を伴う状態に限る。)

分類医療区分算定期間評価の単位
処置等医療区分2連続7日を限度1日毎

医療区分「経管栄養(発熱又は嘔吐を伴う)」は、処置等に係る医療区分に分類され、算定期間は連続7日を限度とされています。

医療区分の定義(医科点数表の解釈での記載事項)

医療区分「経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


10. 経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養(発熱又は嘔吐を伴う状態に限る。)

項目の定義
経鼻胃管胃瘻等の経腸栄養が行われており、かつ発熱又は嘔吐を伴う状態
評価の単位
1日毎
留意点
発熱又は嘔吐に対する治療を行っている場合に限る。

連続する7日間を限度とし、8日目以降は該当しないものとする。ただし、一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には、本項目に該当する。

リンクをクリックすると、関連用語の説明を確認できます。


医療区分の算定要件・確認事項

医療区分の評価に間違いがないように、以下の点に注意しましょう。

① 経腸栄養の確認

経腸栄養(経鼻胃管や胃瘻など)が行われていることを確認します。

② 発熱・嘔吐の確認

経腸栄養が行われている上で、発熱や嘔吐を伴い、その治療を行っていることを確認します。

③ 継続日数の考え方

経腸栄養が行われている状態で、発熱または嘔吐の治療が行われている日をカウントします。

評価票の記入は、連続7日間までになり8日目以降は記入できません。

ただし、一旦非該当になった後に、再び病状が悪化して該当要件を満たしていれば、評価票への記入が可能になります。

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

判断・評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

① 該当要件のチェックポイント

該当要件のチェックポイント
経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養が行われている。
経鼻胃管や経腸栄養に加えて、発熱または嘔吐を伴う状態である。
現に経腸栄養を実施している旨、経過記録より判断可能である。
発熱または嘔吐に対する治療(氷枕・水分補給も含む)を実施し、診療録に記載している。       
各種の検査を実施して、発熱・嘔吐の原因を明確にする努力をしている。
絶食期間中は、経腸栄養が行われていないため、当項目は該当しない。(絶食の時点で一旦非該当として取り扱う)

② 算定期間のチェックポイント

算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。
連続した7日間を超えて24時間持続点滴を行っていても、8日目以降は該当しない。
一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には該当になる。                        

他の医療区分を確認する
※クリックすると開きます。

≪評価の手引き≫

≪処置等に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪疾患・状態に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪ADL区分≫

≪身体的拘束の実施≫

医療区分「経管栄養(発熱又は嘔吐を伴う)」の記入例

医療区分「経管栄養(発熱又は嘔吐を伴う)」の記入例です。

経鼻胃管の患者が発熱、その後10日間、治療継続中

11/1に経鼻胃管の患者が発熱。

その後10日間、治療継続中。

日付症状・治療評価票
11/1経鼻胃管の患者が発熱、治療開始該当(1日目)
11/2発熱に対する治療該当(2日目)
11/3発熱に対する治療該当(3日目)
11/4発熱に対する治療該当(4日目)
11/5発熱に対する治療該当(5日目)
11/6発熱に対する治療該当(6日目)
11/7発熱に対する治療該当(7日目)
11/8発熱に対する治療非該当(8日目)
11/9発熱に対する治療非該当(9日目)
11/10発熱に対する治療非該当(10日目)

連続した7日間を超えた場合には、8日目以降は「非該当」になります。


他の医療区分を確認する
※クリックすると開きます。

≪評価の手引き≫

≪処置等に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪疾患・状態に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪ADL区分≫

≪身体的拘束の実施≫

医療区分は入院基本料にどう影響するのか?

療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を行い、それをもとに入院料が決定する仕組みになっています。

入院患者の医療区分・ADL区分の評価

医療区分は「入院患者の医療必要度」を評価したもので、その評価によって「医療区分1、医療区分2、医療区分3」のいずれかに決定されます。

医療の必要度低い高い
医療区分医療区分1医療区分2医療区分3

ADL区分は「入院患者の介護必要度」を評価したもので、その評価によって「ADL区分1、ADL区分2、ADL区分3」のいずれかに決定されます。

介護の必要度低い高い
ADL区分ADL区分1ADL区分2ADL区分3

医療区分・ADL区分による入院料の決定

療養病棟入院基本料は30分類に分かれていて、医療区分とADL区分の組み合わせによって、入院料1~入院料30までのいずれかになる仕組みになっています。

医療区分とADL区分の組み合わせは、

  • 疾患・状態に係る医療区分1・2・3
  • 処置等に係る医療区分1・2・3
  • ADL区分1・2・3

上記の3つを組み合わせた27分類に、「スモンに関する3分類」を加えた計30分類の入院料になっています。


( 疾患・状態の医療区分1~3 × 処置等の医療区分1~3 × ADL区分1~3 )
+
スモン3分類

⇩⇩⇩⇩⇩⇩

( 3 × 3 × 3 ) + 3 = 27 + 3 = 30分類の入院料

[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

[令和8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合について、Excelシートをnoteにて公開中です。

「医療区分2・3の割合|Excelシート」では、以下の4シートをひと月分として、入力を行っていきます。

① 割合シート

「割合シート」では、医療区分2・3の割合を求めます。

≪主な入力項目≫

  • 患者氏名
  • 日々の入院料
  • 前月、前々月の医療区分2・3の総数
  • 前月、前々月の延べ患者数

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • その月の最大入院数、最小入院数、延べ患者数、重症度割合
  • 直近3ヵ月の重症度割合
  • 入院料1~30の総数
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

② 分類シート

「分類シート」では、入院患者の医療区分を分類します。

≪主な入力項目≫

  • ADL区分(その月の主な区分)
  • 算定した医療区分(疾患・状態)(処置等)の内容

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • 医療区分(疾患・状態)の分類(%表示)
  • 医療区分(処置等)の分類(%表示)
  • 医療区分(疾患・状態)と医療区分(処置等)を合わせた分類(%表示)
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

③ 拘束シート

「拘束シート」では、身体的拘束の実施割合を計算します。

≪主な入力項目≫

  • 身体的拘束を実施した日
  • 前月、前々月の身体的拘束を実施した日数
  • 前月、前々月の入院料算定日数

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • その月の身体的拘束の実施日数、入院料算定日数、身体的拘束の実施割合
  • 直近3ヵ月の身体的拘束の実施割合
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

④ 点数シート

「点数シート」では、入院料の件数に対しての診療報酬を計算します。

≪主な入力項目≫

  • 一般、生活療養における各入院料の数
  • 入院基本料1、入院基本料2、特別入院基本料の選択

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • 入院料別の診療報酬点数
  • 入院料の診療報酬の合計点数
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

医療区分「経管栄養(発熱又は嘔吐を伴う)」に関連する用語

「経鼻胃管」とは?

経鼻胃管は、経鼻経管栄養法のひとつです。

経鼻経管栄養法は、腸は使えるものの口から摂取できない状態が短期間(4週間以内)であると見込まれる患者に使用される栄養補給法です。

口の代わりに消化管にアクセスするための管を用いて経腸栄養剤を投与します。

誤嚥のリスクがない場合は鼻から胃に通す管を用いる「経鼻胃管栄養法」を行います。

一方、誤嚥リスクがある場合は鼻から幽門後(十二指腸・空腸)まで通す管を用いる「経鼻十二指腸栄養法」や「経鼻空腸栄養法」を検討します。

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「胃瘻」とは?

胃瘻は、経瘻孔法(けいろうこうほう)のひとつです。

経瘻孔法は、腸は使えるものの口から摂取できない状態が長期間(4週間以上)に及ぶと見込まれる患者に使用される栄養補給法です。

消化管と外部をつなぐ孔(瘻孔)を作り、そこから経腸栄養剤を投与します。

胃に瘻孔を作れば「胃瘻」、十二指腸なら「十二指腸瘻」、空腸なら「空腸瘻」となります。

経瘻孔法を行う場合は、手術をして瘻孔を造設する必要があります。

胃瘻を作る手段として比較的負担の少ないPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)がよく行われており、PEGが行いにくい場合は外科的胃瘻造設術、もしくは首から食道へチューブを挿入し、胃まで送り届けるPTEG(経皮経食道胃菅挿入術)が選択されます。

空腸瘻では、PEG-J(経胃瘻的空腸瘻)や外科的空腸瘻造設術が行われます。

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「経腸栄養」とは?

栄養補給法の種類は、腸から栄養を摂取する経腸栄養(EN)と血管から栄養を摂取する静脈栄養(PN)に大きく分けられます。

そして、さらに経腸栄養(EN)は、口から飲食物を摂取する経口栄養と、経鼻経管栄養法・経瘻孔法によって栄養を摂取する経管栄養に分けられます。

経腸栄養(EN:enteral nutrition)
経口栄養経口的栄養補充(ONS)
経管栄養<経鼻経管栄養法>
 ・経鼻胃管
 ・経鼻十二指腸管
 ・経鼻空腸管
<経瘻孔法>
 ・胃瘻、空腸瘻、十二指腸瘻
 ・経食道胃管
経静脈栄養(PN:parenteral nutrition)
末梢静脈栄養(PPN)
中心静脈栄養(TPN)

本項目は「経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養」となっているので、経口栄養による経腸栄養は含まれず、経管栄養による経腸栄養のみが該当することになります。

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「かつ」とは?

「かつ」は、その前後両方の要件を満たすべきことを表す接続詞です。

「AかつB」であれば、「AとBのどちらも」という意味になります。

本項目では、「経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養が行われており、かつ、発熱又は嘔吐を伴う状態」とあるので、以下のような意味になります。

状態・症状該当・非該当
経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養 + 発熱(治療)該当
経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養 + 嘔吐(治療)該当
経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養 + 発熱、嘔吐なし非該当

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「発熱」とは?

日本の感染症法において「発熱を37.5℃以上、高熱を38℃以上」と定義されています。

また、体温は早朝に低く夕方に高くなるため、1日の中で約1℃の日内変動があると言われ、学術的にハリソン内科学では「午前の体温で37.2℃以上、午後の体温で37.7℃以上を発熱と定義する」と記載されています。

加えて、平熱が低い人の場合には、感染症法やハリソン内科学で定義された体温より低くても、発熱と捉える必要があります。

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