療養病棟入院基本料 「医療区分㉛:悪性腫瘍」の評価ポイント【R8.6診療報酬改定対応】

  • URLをコピーしました!

※本記事は「医科点数表の解釈 令和8年6月版」を基にしています。

療養病棟に入院する患者の医療区分やADL区分は、療養病棟入院基本料の算定に直結する重要な評価です。

そのため、入院患者ごとに毎日これらの区分を確認し、「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に正確に記録することになっています。

また、その評価を行う際には、「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を基準として用いることになっています。

この記事では、この手引きに基づき、「医療区分㉛:悪性腫瘍」の項目を分かりやすく解説し、現場での評価のポイントを整理します。

医療区分・ADL区分の評価は、必ず「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を理解した上で行いましょう。

目次

医療区分「悪性腫瘍」の算定要件と評価・判断基準

医療区分「悪性腫瘍」の算定要件と評価・判断基準について解説します。

算定期限(なし)・医療区分2に該当

【疾患・状態に係る医療区分㉛】悪性腫瘍(疼痛コントロールが必要な場合に限る)

分類医療区分算定期間評価の単位
疾患・状態医療区分2期間に限りなし1日毎

医療区分「悪性腫瘍」は、疾患・状態に係る医療区分に分類され、算定期間に限りはありません。

医療区分の定義(医科点数表の解釈での記載事項)

医療区分「悪性腫瘍」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


31. 悪性腫瘍(医療用麻薬等の薬剤投与による疼痛コントロールが必要な場合に限る。)

項目の定義
悪性腫瘍医療用麻薬等の薬剤投与による疼痛コントロールが必要な場合に限る。)
評価の単位
1日毎
留意点
ここでいう医療用麻薬等とは、WHO’s pain ladderに定められる第2段階以上のものをいう。

リンクをクリックすると、関連用語の説明を確認できます。


医療区分の算定要件・確認事項

医療区分の評価に間違いがないように、以下の点に注意しましょう。

① 悪性腫瘍に罹患していることの確認

悪性腫瘍に罹患していることを確認します。

② 医療用麻薬等で疼痛コントロールが必要なことの確認

医療用麻薬等で疼痛コントロールが必要なことを確認します。

医療用麻薬等とは、WHO’s pain ladderに定められる第2段階以上のものになります。

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

判断・評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

① 該当要件のチェックポイント

該当要件のチェックポイント
悪性腫瘍(医療用麻薬等の薬剤投与による疼痛コントロールが必要な場合に限る。)に該当する。     
症状の経過と現状が十分把握されている。
疼痛コントロールと診療・看護計画が作成されている。
QOLに十分な配慮がなされている。
緩和ケア計画が作成され、対応がなされている。
ここでいう医療用麻薬等とは、WHO’s pain ladderに定められる第2段階以上のものをいう。

② 算定期間のチェックポイント

算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。                                      

他の医療区分を確認する
※クリックすると開きます。

≪評価の手引き≫

≪処置等に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪疾患・状態に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪ADL区分≫

≪身体的拘束の実施≫

医療区分は入院基本料にどう影響するのか?

療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を行い、それをもとに入院料が決定する仕組みになっています。

入院患者の医療区分・ADL区分の評価

医療区分は「入院患者の医療必要度」を評価したもので、その評価によって「医療区分1、医療区分2、医療区分3」のいずれかに決定されます。

医療の必要度低い高い
医療区分医療区分1医療区分2医療区分3

ADL区分は「入院患者の介護必要度」を評価したもので、その評価によって「ADL区分1、ADL区分2、ADL区分3」のいずれかに決定されます。

介護の必要度低い高い
ADL区分ADL区分1ADL区分2ADL区分3

医療区分・ADL区分による入院料の決定

療養病棟入院基本料は30分類に分かれていて、医療区分とADL区分の組み合わせによって、入院料1~入院料30までのいずれかになる仕組みになっています。

医療区分とADL区分の組み合わせは、

  • 疾患・状態に係る医療区分1・2・3
  • 処置等に係る医療区分1・2・3
  • ADL区分1・2・3

上記の3つを組み合わせた27分類に、「スモンに関する3分類」を加えた計30分類の入院料になっています。


( 疾患・状態の医療区分1~3 × 処置等の医療区分1~3 × ADL区分1~3 )
+
スモン3分類

⇩⇩⇩⇩⇩⇩

( 3 × 3 × 3 ) + 3 = 27 + 3 = 30分類の入院料

[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

[令和8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合について、Excelシートをnoteにて公開中です。

「医療区分2・3の割合|Excelシート」では、以下の4シートをひと月分として、入力を行っていきます。

① 割合シート

「割合シート」では、医療区分2・3の割合を求めます。

≪主な入力項目≫

  • 患者氏名
  • 日々の入院料
  • 前月、前々月の医療区分2・3の総数
  • 前月、前々月の延べ患者数

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • その月の最大入院数、最小入院数、延べ患者数、重症度割合
  • 直近3ヵ月の重症度割合
  • 入院料1~30の総数
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

② 分類シート

「分類シート」では、入院患者の医療区分を分類します。

≪主な入力項目≫

  • ADL区分(その月の主な区分)
  • 算定した医療区分(疾患・状態)(処置等)の内容

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • 医療区分(疾患・状態)の分類(%表示)
  • 医療区分(処置等)の分類(%表示)
  • 医療区分(疾患・状態)と医療区分(処置等)を合わせた分類(%表示)
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

③ 拘束シート

「拘束シート」では、身体的拘束の実施割合を計算します。

≪主な入力項目≫

  • 身体的拘束を実施した日
  • 前月、前々月の身体的拘束を実施した日数
  • 前月、前々月の入院料算定日数

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • その月の身体的拘束の実施日数、入院料算定日数、身体的拘束の実施割合
  • 直近3ヵ月の身体的拘束の実施割合
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

④ 点数シート

「点数シート」では、入院料の件数に対しての診療報酬を計算します。

≪主な入力項目≫

  • 一般、生活療養における各入院料の数
  • 入院基本料1、入院基本料2、特別入院基本料の選択

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • 入院料別の診療報酬点数
  • 入院料の診療報酬の合計点数
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

医療区分「悪性腫瘍」に関連する用語

「悪性腫瘍」とは?

悪性腫瘍とは、体の細胞が異常に増殖して周囲の組織に広がり(浸潤)、他の臓器に転移する可能性がある、生命を脅かす可能性のある腫瘍です。

一般的に「がん」とも呼ばれ、上皮細胞から発生する「癌(がん)」と、骨や筋肉などの細胞から発生する「肉腫」に大きく分けられます。

悪性腫瘍の特徴
異常な増殖正常な細胞と異なり、自律的な制御を失って無制限に増殖します。
浸潤周囲の健康な組織や臓器に侵入します。
転移血管やリンパの流れに乗って、体の離れた場所にある臓器にも広がり、新たな腫瘍を形成します。

「医療区分の定義」に戻る≫≫

「医療用麻薬」とは?

医療用麻薬は、主にがんによる強い痛みや息苦しさなどの症状を和らげるために使用される鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)です。

脳や脊髄のオピオイド受容体に作用することで鎮痛効果を発揮します。

医療用麻薬には様々な種類があり、痛みの強さに応じて使い分けられます。

種類と投与方法
主な種類モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、コデイン、トラマドールなどがあります。
投与経路飲み薬(錠剤、散剤、液剤)、貼り薬、坐薬、注射薬などがあり、患者さんの状態や症状の強さに応じて選択されます。注射薬は、携帯装置を用いて自宅療養時にも使用可能です。

「医療区分の定義」に戻る≫≫

「疼痛コントロール」とは?

疼痛コントロールとは、薬物療法と非薬物療法の組み合わせで、痛みを和らげ、患者のQOL(生活の質)を向上させるための医学的・看護的アプローチです。

主な薬物療法としては、鎮痛薬を定期的に投与し、痛みの程度に応じて段階的に強力な薬に変更していきます(鎮痛薬使用の4原則)。

非薬物療法には、運動療法、温熱・冷却、マッサージ、鍼治療などがあります。

疼痛コントロールの目標
・痛みによって夜間の睡眠が妨げられない。
・安静時の痛みがなくなる。
・体動時の痛みがなくなる。

「医療区分の定義」に戻る≫≫

「WHO’s pain ladder(WHO方式の三段階除痛ラダー)」とは?

WHO’s pain ladder(WHO方式の三段階除痛ラダー)は、がん性疼痛に対する薬物療法の基本的な考え方です。

これは、基礎および臨床研究に基づいて考案された治療法で、非オピオイド鎮痛薬とオピオイド鎮痛薬を痛みの強さによって段階的に進めていく方法です。

鎮痛補助薬、神経ブロック、放射線治療は必要に応じて、どの時点から導入しても良いとされています。

WHO’s pain ladder(WHO方式の三段階除痛ラダー)
第1段階軽度の痛みに対し非オピオイド鎮痛薬(NSAIDsやアセトアミノフェン)を開始する。
第2段階軽度から中等度の痛みに対し、弱オピオイド(コデインやトラマドール)を追加する。
第3段階中等度から高度の痛みに対し、弱オピオイドから強オピオイド(モルヒネ・フェンタニル・オキシコドン・タペンタドール)に切り替える。この4種類のオピオイドで管理が困難な症例にメサドンを考慮する。

第一段階の薬剤は作用機序が異なるので基本的に継続します。放射線治療や神経ブロックなどにより痛みが減弱した場合には、鎮痛薬の減量が可能となります。オピオイドの適応は、痛みの強さと原因で決定されるべきであり、生命予後の長短を考慮する必要はありません。

「WHOがん疼痛治療ガイドライン」のがん疼痛マネジメントの1つ、「鎮痛薬使用の4原則」も重要です。

鎮痛薬使用の4原則
経口投与を基本とする簡便かつ容量調節が容易で、経済的にも望ましい。貼付剤は、経口困難、経口投与を希望しない患者や、痛みが安定している症例に適している。
時刻を決めて規則正しくがんの痛みは薬剤の血中濃度が低下する(痛み閾値が下がる)と出現する。先取り鎮痛の目的で時刻を決めて投与し、血中濃度(痛み閾値)を安定させQOLの向上を目指す。
③ 患者ごとの個別の量で年齢・体重・腎機能・肝機能などを考慮し、最少量で最大の鎮痛効果が得られる用量調節を行う。
④ その上で細かい配慮を痛みの原因、鎮痛薬の必要性、作用機序などを患者と家族に十分説明し、安心して使用継続できるように配慮する。便秘、悪心嘔吐、眠気などの副作用にも十分に配慮し、鎮痛薬の効果および副作用を評価し、治療の継続を行う。鎮痛効果が得られず副作用のみ発現してしまうと、オピオイドに対する拒否感が強くなりその後の疼痛治療に大きな影響をもたらす危惧がある。

「医療区分の定義」に戻る≫≫

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次