療養病棟入院基本料 「医療区分㉝:末期心不全」の評価ポイント【R8.6診療報酬改定対応】

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※本記事は「医科点数表の解釈 令和8年6月版」を基にしています。

療養病棟に入院する患者の医療区分やADL区分は、療養病棟入院基本料の算定に直結する重要な評価です。

そのため、入院患者ごとに毎日これらの区分を確認し、「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に正確に記録することになっています。

また、その評価を行う際には、「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を基準として用いることになっています。

この記事では、この手引きに基づき、「医療区分㉝:末期心不全」の項目を分かりやすく解説し、現場での評価のポイントを整理します。

医療区分・ADL区分の評価は、必ず「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を理解した上で行いましょう。

目次

医療区分「末期心不全」の算定要件と評価・判断基準

医療区分「末期心不全」の算定要件と評価・判断基準について解説します。

算定期限(なし)・医療区分2に該当

【処置等に係る医療区分㉝】末期心不全

分類医療区分算定期間評価の単位
疾患・状態医療区分2期間に限りあり1日毎

医療区分「末期心不全」は、疾患・状態に係る医療区分に分類され、算定上限日数に限りはありません。

医療区分の定義(医科点数表の解釈での記載事項)

医療区分「末期心不全」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


32. 末期心不全

項目の定義
末期心不全(器質的な心機能障害により、適切な治療が実施されているにもかかわらず、慢性的にNew York Heart Associationの心機能分類のⅣ度相当の症状に該当し、頻回若しくは持続的に医療用麻薬の投与又はその他の点滴薬物療法による苦痛及び症状のコントロールが必要な状態に限る。)
評価の単位
1日毎
留意点
ここでいう末期とは、医学的に終末期と判断される状態である。また、医療用麻薬の投与又はその他の点滴薬物療法による苦痛及び症状のコントロールが必要な状態とは、心不全による症状のコントロールのために、医療用麻薬又は静注強心薬等の1日2回以上又は持続的な投与を要する状態をいう。

リンクをクリックすると、関連用語の説明を確認できます。


医療区分の算定要件・確認事項

医療区分の評価に間違いがないように、以下の点に注意しましょう。

① 医学的に「終末期」と判断されている

医学的に終末期と判断される状態であること。

② 末期心不全の確認

末期心不全であり、適切な治療が実施されていること。

③ NYHA分類のⅣ度相当に該当

適切な治療を実施しても、慢性的にNew York Heart Associationの心機能分類のⅣ度相当の症状に該当する。

④ 「①~③」に加えて、以下に該当

頻回若しくは持続的に医療用麻薬の投与、またはその他の点滴薬物療法による苦痛及び症状のコントロールが必要な状態である。

  • 医療用麻薬の投与
  • 静注強心薬等の1日2回以上、持続的な投与

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

判断・評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

① 該当要件のチェックポイント

該当要件のチェックポイント
医学的に終末期と判断される状態である。
末期心不全に対して適切な治療が実施されている状態である。
慢性的にNew York Heart Associationの心機能分類のⅣ度相当の症状に該当する。
頻回若しくは持続的に医療用麻薬の投与、またはその他の点滴薬物療法による苦痛及び症状のコントロールが必要な状態である。

② 算定期間のチェックポイント

算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。

他の医療区分を確認する
※クリックすると開きます。

≪評価の手引き≫

≪処置等に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪疾患・状態に係る医療区分≫

【算定期間に限りのある医療区分】

[医療区分2(別表第五の三)]

【算定期間に限りのない医療区分】

[医療区分3(別表第五のニ)]

[医療区分2(別表第五の三)]

≪ADL区分≫

≪身体的拘束の実施≫

医療区分は入院基本料にどう影響するのか?

療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を行い、それをもとに入院料が決定する仕組みになっています。

入院患者の医療区分・ADL区分の評価

医療区分は「入院患者の医療必要度」を評価したもので、その評価によって「医療区分1、医療区分2、医療区分3」のいずれかに決定されます。

医療の必要度低い高い
医療区分医療区分1医療区分2医療区分3

ADL区分は「入院患者の介護必要度」を評価したもので、その評価によって「ADL区分1、ADL区分2、ADL区分3」のいずれかに決定されます。

介護の必要度低い高い
ADL区分ADL区分1ADL区分2ADL区分3

医療区分・ADL区分による入院料の決定

療養病棟入院基本料は30分類に分かれていて、医療区分とADL区分の組み合わせによって、入院料1~入院料30までのいずれかになる仕組みになっています。

医療区分とADL区分の組み合わせは、

  • 疾患・状態に係る医療区分1・2・3
  • 処置等に係る医療区分1・2・3
  • ADL区分1・2・3

上記の3つを組み合わせた27分類に、「スモンに関する3分類」を加えた計30分類の入院料になっています。


( 疾患・状態の医療区分1~3 × 処置等の医療区分1~3 × ADL区分1~3 )
+
スモン3分類

⇩⇩⇩⇩⇩⇩

( 3 × 3 × 3 ) + 3 = 27 + 3 = 30分類の入院料

[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

[令和8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合について、Excelシートをnoteにて公開中です。

「医療区分2・3の割合|Excelシート」では、以下の4シートをひと月分として、入力を行っていきます。

① 割合シート

「割合シート」では、医療区分2・3の割合を求めます。

≪主な入力項目≫

  • 患者氏名
  • 日々の入院料
  • 前月、前々月の医療区分2・3の総数
  • 前月、前々月の延べ患者数

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • その月の最大入院数、最小入院数、延べ患者数、重症度割合
  • 直近3ヵ月の重症度割合
  • 入院料1~30の総数
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

② 分類シート

「分類シート」では、入院患者の医療区分を分類します。

≪主な入力項目≫

  • ADL区分(その月の主な区分)
  • 算定した医療区分(疾患・状態)(処置等)の内容

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • 医療区分(疾患・状態)の分類(%表示)
  • 医療区分(処置等)の分類(%表示)
  • 医療区分(疾患・状態)と医療区分(処置等)を合わせた分類(%表示)
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

③ 拘束シート

「拘束シート」では、身体的拘束の実施割合を計算します。

≪主な入力項目≫

  • 身体的拘束を実施した日
  • 前月、前々月の身体的拘束を実施した日数
  • 前月、前々月の入院料算定日数

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • その月の身体的拘束の実施日数、入院料算定日数、身体的拘束の実施割合
  • 直近3ヵ月の身体的拘束の実施割合
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

④ 点数シート

「点数シート」では、入院料の件数に対しての診療報酬を計算します。

≪主な入力項目≫

  • 一般、生活療養における各入院料の数
  • 入院基本料1、入院基本料2、特別入院基本料の選択

上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。

  • 入院料別の診療報酬点数
  • 入院料の診療報酬の合計点数
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介

医療区分「末期心不全」に関連する用語

「末期心不全」とは?

末期心不全とは、心臓のポンプ機能が著しく低下し、従来の治療では改善が見込めず、日常生活に重い支障をきたす状態です。

息切れや強いむくみ、全身の倦怠感が現れるため、病状の進行によっては緩和ケアを含めた治療方針の検討が必要となります。

心臓から全身へ十分に血液が送れなくなることや、水分が体内に滞ることで以下の症状が強く表れます。

呼吸困難・息切れ安静時でも息苦しく、横になると肺に水がたまりやすいため(肺うっ血)、体を起こしていないと呼吸が困難になります。
全身の強いむくみと体重増加足や顔のむくみだけでなく、お腹に水がたまったり(腹水)、短期間で急激に体重が増加します。
意識の混濁・めまい脳への血流が減少することで、反応が鈍くなったり、意識が低下したりすることがあります。
極度の疲労感・冷感全身の血流不足により、常に強いだるさを感じ、手足が冷たくなります。

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「New York Heart Associationの心機能分類」とは?

NYHA重症度分類は、心不全患者の自覚症状に基づき心臓の機能をI度からIV度までに分類するものです。

NYHA分類は、ニハ分類やナイハ分類と呼ばれ、ニューヨーク心臓協会が定めた心不全の症状の程度の分類になります。

NYHA重症度分類
I度(無症候性)・心疾患はあるが、身体活動の制限はない。
・日常的な身体活動で、疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛などを起こさない。
II度(軽症)・軽度から中等度の身体活動で症状が出る。
・安静時には症状はない。
・階段や坂道を上るといった比較的強い労作で、疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛などが生じる。
・身体活動に軽度制限がある「IIs度」と中等度制限がある「IIm度」に分けることもある。
III度(中等度~重症)・高度の身体活動制限が必要。
・安静時には症状はないが、平地を歩くといった軽い労作でも症状が出る。
IV度(難治性)・心疾患によるいかなる身体活動も制限される。
・安静時にも心不全症状や狭心痛が存在する。
・わずかな身体活動でも症状が悪化する。

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「医療用麻薬」とは?

医療用麻薬は、主にがんによる強い痛みや息苦しさなどの症状を和らげるために使用される鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)です。

脳や脊髄のオピオイド受容体に作用することで鎮痛効果を発揮します。

医療用麻薬には様々な種類があり、痛みの強さに応じて使い分けられます。

種類と投与方法
主な種類モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、コデイン、トラマドールなどがあります。
投与経路飲み薬(錠剤、散剤、液剤)、貼り薬、坐薬、注射薬などがあり、患者さんの状態や症状の強さに応じて選択されます。注射薬は、携帯装置を用いて自宅療養時にも使用可能です。

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「終末期」とは?

終末期とは、病気の進行や高齢による衰弱により、複数の医師が客観的に回復の見込みがないと判断し、余命が数週間から数ヶ月以内と予測される時期を指します。

この時期は延命治療を優先するのではなく、身体的・精神的な苦痛を和らげ、患者さんらしい最期の時間を過ごせるようにケアを行うことが最大の目的となります。

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