療養病棟に入院する患者の医療区分やADL区分は、療養病棟入院基本料の算定に直結する重要な評価です。
そのため、入院患者ごとに毎日これらの区分を確認し、「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に正確に記録することになっています。
また、その評価を行う際には、「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を基準として用いることになっています。
この記事では、この手引きに基づき、「その他 91:身体的拘束を実施している」の項目を分かりやすく解説し、現場での評価のポイントを整理します。
その他 91「身体的拘束を実施している」の算定要件と評価・判断基準
その他 91「身体的拘束を実施している」の算定要件と評価・判断基準について解説します。
定義(医科点数表の解釈での記載事項)
その他 91「身体的拘束を実施している」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。
91. 身体的拘束を実施している
| 項目の定義 |
| 抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいう。 |
| 留意点 |
| 患者又は他の患者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束を行ってはならないこと。 身体抑制を行う場合には、その態様及び時間、その際の患者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録すること。 なお、以下のアからウまでに該当する場合は、身体的拘束を行った日に含めない。ただし、これらに該当する場合であっても、常に身体的拘束の介助や代替策の導入について検討し、身体的拘束の最小化に努めること。 ア 衣服に触れるものの、患者の動作により容易に外れ、患者の自発的な運動を制限することはない状況で用いられる、見守りや職員を呼ぶためのセンサー等のみを使用している場合 イ 処置時や移動時に、患者本人又はその家族の同意を得た上で、安全確保のために短時間固定ベルト等を使用する場合であって、使用している間、常に職員が介助等のために当該患者の側に付き添っており、処置や移動の終了時に確実に解除している場合 ウ 患者が訓練のために自由に車椅子を操作することのできる状態であって、患者本人又はその家族の同意を得た上で、車椅子操作による訓練の時間中のみ安全確保のために固定ベルトを使用する場合(車椅子の前にオーバーテーブルを設置する、車椅子をロックする等の方法により、患者本人の活動を制限している場合は該当せず、身体的拘束を行った日に含めること。) |
身体的拘束の考え方
「医科点数表の解釈」での記載事項
身体的拘束については、医科点数表の解釈で以下のように記載があります。
7 身体的拘束最小化の基準(抜粋)
(3)身体的拘束とは、抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいうこと。
医科点数表の解釈(令和6年6月版p1312)
上記の記載では、「患者の身体または衣服に触れる用具で拘束し、運動の抑制や行動の制限を行うこと」が身体的拘束となっています。
そのため、身体拘束の「3つのロック」であるフィジカルロック、ドラッグロック、スピーチロックの中で、フィジカルロックのみが身体的拘束に該当することになります。
- フィジカルロック:物理的な手段による拘束 ⇨ 身体的拘束
- ドラッグロック :薬物による過度な鎮静・抑制
- スピーチロック :言葉による行動制限・威圧
「厚生労働省HP 令和8年度診療報酬改定説明資料等について」での記載事項
加えて、【厚生労働省HP 令和8年度診療報酬改定説明資料等について「令和8年度診療報酬改定の概要 6.入院(共通事項)」】において、以下のように記載があります。
以下の場合は、身体的拘束を実施した日数に含めない。
- センサークリップ等のみを使用する場合
(患者の動作により容易に外れ、自発的な運動を制限することはない状況に限る) - 処置時や移動時に、患者等の同意を得た上で、安全確保のために短時間固定ベルト等を使用する場合
(使用中は職員が介助等のために常に当該患者の側に付き添っており、処置や移動の終了時に確実に解除している場合のみ) - 患者が訓練のために自由に車椅子を操作することのできる状態であって、患者等の同意を得た上で、車椅子操作による訓練の時間中のみ安全確保のために固定ベルトを使用する場合
(車椅子の前にオーバーテーブルを設置する、車椅子をロックする等の方法により、患者本人の活動を制限している場合は該当せず、身体的拘束を実施した日としてカウントする)
※クリックすると開きます。
≪評価の手引き≫
≪処置等に係る医療区分≫
【算定期間に限りのある医療区分】
[医療区分3(別表第五のニ)]
[医療区分2(別表第五の三)]
【算定期間に限りのない医療区分】
[医療区分3(別表第五のニ)]
[医療区分2(別表第五の三)]
- ㊲ 中心静脈栄養(対象疾患以外、30日を超える)
- ㊳ 人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜灌流・血漿交換療法
- ㊴ 肺炎
- ㊵ 褥瘡
- ㊶ 末梢循環障害による下肢末端の開放創
- ㊷ うつ症状
- ㊸ 喀痰吸引(1日8回以上)
- ㊹ 気管切開・気管内挿管(発熱なし)
- ㊺ 創傷、皮膚潰瘍、下腿・足部の蜂巣炎、膿等の感染症
- ㊻ 酸素療法(高密度除く)
≪疾患・状態に係る医療区分≫
【算定期間に限りのある医療区分】
[医療区分2(別表第五の三)]
【算定期間に限りのない医療区分】
[医療区分3(別表第五のニ)]
[医療区分2(別表第五の三)]
- ㉒ 筋ジストロフィー
- ㉓ 多発性硬化症
- ㉔ 筋萎縮性側索硬化症
- ㉕ パーキンソン病関連疾患
- ㉖ その他の指定難病等
- ㉗ 脊髄損傷
- ㉘ 慢性閉塞性肺疾患
- ㉙ 別紙8の2の注2を参照 (※まだまとめていません。)
- ㉚ 基本診療料の施設基準等の別表第五の三の三の患者 (※まだまとめていません。)
- ㉛ 悪性腫瘍(疼痛コントロールが必要な場合に限る)
- ㉜ 末期呼吸器疾患
- ㉝ 末期心不全
- ㉞ 末期腎不全
- ㉟ 他者に対する暴行
- ㊱ A212の注2に規定する準超重症の状態(15歳未満に限る)
≪ADL区分≫
≪身体的拘束の実施≫
医療区分は入院基本料にどう影響するのか?
療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を行い、それをもとに入院料が決定する仕組みになっています。
入院患者の医療区分・ADL区分の評価
医療区分は「入院患者の医療必要度」を評価したもので、その評価によって「医療区分1、医療区分2、医療区分3」のいずれかに決定されます。
| 医療の必要度 | 低い | ⇔ | 高い |
| 医療区分 | 医療区分1 | 医療区分2 | 医療区分3 |
ADL区分は「入院患者の介護必要度」を評価したもので、その評価によって「ADL区分1、ADL区分2、ADL区分3」のいずれかに決定されます。
| 介護の必要度 | 低い | ⇔ | 高い |
| ADL区分 | ADL区分1 | ADL区分2 | ADL区分3 |
医療区分・ADL区分による入院料の決定
療養病棟入院基本料は30分類に分かれていて、医療区分とADL区分の組み合わせによって、入院料1~入院料30までのいずれかになる仕組みになっています。
医療区分とADL区分の組み合わせは、
- 疾患・状態に係る医療区分1・2・3
- 処置等に係る医療区分1・2・3
- ADL区分1・2・3
上記の3つを組み合わせた27分類に、「スモンに関する3分類」を加えた計30分類の入院料になっています。
( 疾患・状態の医療区分1~3 × 処置等の医療区分1~3 × ADL区分1~3 )
+
スモン3分類
⇩⇩⇩⇩⇩⇩
( 3 × 3 × 3 ) + 3 = 27 + 3 = 30分類の入院料
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介
[令和8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合について、Excelシートをnoteにて公開中です。
「医療区分2・3の割合|Excelシート」では、以下の4シートをひと月分として、入力を行っていきます。
① 割合シート
「割合シート」では、医療区分2・3の割合を求めます。
≪主な入力項目≫
- 患者氏名
- 日々の入院料
- 前月、前々月の医療区分2・3の総数
- 前月、前々月の延べ患者数
上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。
- その月の最大入院数、最小入院数、延べ患者数、重症度割合
- 直近3ヵ月の重症度割合
- 入院料1~30の総数
![[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介](https://kuwahopi.com/wp-content/uploads/2026/04/01割合シート-1024x627.png)
② 分類シート
「分類シート」では、入院患者の医療区分を分類します。
≪主な入力項目≫
- ADL区分(その月の主な区分)
- 算定した医療区分(疾患・状態)(処置等)の内容
上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。
- 医療区分(疾患・状態)の分類(%表示)
- 医療区分(処置等)の分類(%表示)
- 医療区分(疾患・状態)と医療区分(処置等)を合わせた分類(%表示)
![[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介](https://kuwahopi.com/wp-content/uploads/2026/04/02分類シート.png)
③ 拘束シート
「拘束シート」では、身体的拘束の実施割合を計算します。
≪主な入力項目≫
- 身体的拘束を実施した日
- 前月、前々月の身体的拘束を実施した日数
- 前月、前々月の入院料算定日数
上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。
- その月の身体的拘束の実施日数、入院料算定日数、身体的拘束の実施割合
- 直近3ヵ月の身体的拘束の実施割合
![[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介](https://kuwahopi.com/wp-content/uploads/2026/04/03拘束シート.png)
④ 点数シート
「点数シート」では、入院料の件数に対しての診療報酬を計算します。
≪主な入力項目≫
- 一般、生活療養における各入院料の数
- 入院基本料1、入院基本料2、特別入院基本料の選択
上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。
- 入院料別の診療報酬点数
- 入院料の診療報酬の合計点数
![[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介](https://kuwahopi.com/wp-content/uploads/2026/04/04点数シート-1024x353.png)

