療養病棟に入院する患者の医療区分やADL区分は、療養病棟入院基本料の算定に直結する重要な評価です。
そのため、入院患者ごとに毎日これらの区分を確認し、「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に正確に記録することになっています。
また、その評価を行う際には、「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を基準として用いることになっています。
この記事では、この手引きに基づき、「医療区分⑳:酸素療法(密度の高い治療)」の項目を分かりやすく解説し、現場での評価のポイントを整理します。
医療区分「酸素療法(密度の高い治療)」の算定要件と評価・判断基準
医療区分「酸素療法(密度の高い治療)」の算定要件と評価・判断基準について解説します。
算定期限(なし)・医療区分3に該当
【処置等に係る医療区分⑳】酸素療法(密度の高い治療を要する状態に限る。)
| 分類 | 医療区分 | 算定期間 | 評価の単位 |
|---|---|---|---|
| 処置等 | 医療区分3 | 期間に限りなし | 1日毎 |
医療区分の定義(医科点数表の解釈での記載事項)
医療区分「酸素療法(密度の高い治療を要する状態に限る。)」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。
20. 酸素療法(密度の高い治療を要する状態に限る。)
| 項目の定義 |
| 酸素療法を実施している場合であって、次のいずれかに該当するもの ・常時流量3L/分以上を必要とする場合 ・肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合 ・New York Heart Associationの心機能分類のⅢ度又はⅣ度の心不全の状態である場合 |
| 評価の単位 |
| 1日毎 |
| 留意点 |
| 酸素非投与下において、安静時、睡眠時、運動負荷いずれかで動脈血酸素飽和度が90%以下となる状態であって、以下の(1)又は(2)の状態。 (1) 安静時に3L/分未満の酸素投与下で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できないが、3L/分以上で維持できる状態。 (2) 安静時に3L/分未満の酸素投与下で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できる状態であって、肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合又はNYHA重症度分類のⅢ度若しくはⅣ度の心不全の状態である場合。なお、肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合については、点滴を実施した日から30日間まで、本項目に該当するものとする。 なお、毎月末において当該酸素療法を必要とする状態に該当しているか確認を行い、その結果を診療録等に記載すること。 |
医療区分の算定要件・確認事項
医療区分の評価に間違いがないように、以下の点に注意しましょう。
① 動脈血酸素飽和度の確認
酸素非投与下の「安静時・睡眠時・運動負荷」のいずれかで、動脈血酸素飽和度が90%以下となる状態を確認します。
② 医学的必要性の確認
動脈血酸素飽和度が90%以下となる状態に加えて、(1)または(2)の状態に限ります。
(1)安静時に3L/分未満の酸素投与下で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できないが、3L/分以上で維持できる。
(2)安静時に3L/分未満の酸素投与下で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できる状態で、以下のいずれかの状態。
- 肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合
- New York Heart Associationの心機能分類のⅢ度、若しくはⅣ度の心不全の状態である場合
※肺炎等急性増悪により点滴治療をした場合は、点滴の実施日から30日間は本項目に該当します。
③ 状態の確認・診療録等への記載
毎月末に当該酸素療法を必要とする状態の確認を行います。
状態の確認の結果を診療録等に記載します。
判断・評価のチェックポイント
評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。
① 該当要件のチェックポイント
| 該当要件のチェックポイント | |
|---|---|
| ☐ | 酸素療法をしていない状態で、安静時、睡眠時、運動負荷時のいずれかで、動脈血酸素飽和度90%以下になり、そのことを診療録に記載している。 |
| ☐ | 動脈血酸素飽和度90%以下の測定結果が伴わない場合でも、検査の結果、臨床症状によって医師が直ちに酸素療法の必要性を認め、酸素投与を開始した場合は、以下によって該当を検討する。 ・患者の状態に合わせて適切な指示が出されている ・動脈血酸素飽和度を最低1日1回測定して酸素量の調整ができている |
| ☐ | 以下のいずれかに該当する。 ・常時流量3L/分以上を必要とする ・肺炎等急性増悪により点滴治療を実施している ・New York Heart Associationの心機能分類のⅢ度またはⅣ度の心不全の状態である |
| ☐ | 毎月末において酸素療法を必要とする状態に該当するかを確認し、診療録等に記載している。 |
| ☐ | 動脈血酸素飽和度の測定が毎日実施できており、フローシートに測定値の入力がされている。 |
| ☐ | 医師が診療録に診断根拠、治療方針の記載をしている。 |
② 算定期間のチェックポイント
| 算定期間のチェックポイント | |
|---|---|
| ☐ | 1日毎に評価を行っている。 |
※クリックすると開きます。
≪評価の手引き≫
≪処置等に係る医療区分≫
【算定期間に限りのある医療区分】
[医療区分3(別表第五のニ)]
[医療区分2(別表第五の三)]
【算定期間に限りのない医療区分】
[医療区分3(別表第五のニ)]
[医療区分2(別表第五の三)]
- ㊲ 中心静脈栄養(対象疾患以外、30日を超える)
- ㊳ 人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜灌流・血漿交換療法
- ㊴ 肺炎
- ㊵ 褥瘡
- ㊶ 末梢循環障害による下肢末端の開放創
- ㊷ うつ症状
- ㊸ 喀痰吸引(1日8回以上)
- ㊹ 気管切開・気管内挿管(発熱なし)
- ㊺ 創傷、皮膚潰瘍、下腿・足部の蜂巣炎、膿等の感染症
- ㊻ 酸素療法(高密度除く)
≪疾患・状態に係る医療区分≫
【算定期間に限りのある医療区分】
[医療区分2(別表第五の三)]
【算定期間に限りのない医療区分】
[医療区分3(別表第五のニ)]
[医療区分2(別表第五の三)]
- ㉒ 筋ジストロフィー
- ㉓ 多発性硬化症
- ㉔ 筋萎縮性側索硬化症
- ㉕ パーキンソン病関連疾患
- ㉖ その他の指定難病等
- ㉗ 脊髄損傷
- ㉘ 慢性閉塞性肺疾患
- ㉙ 別紙8の2の注2を参照 (※まだまとめていません。)
- ㉚ 基本診療料の施設基準等の別表第五の三の三の患者 (※まだまとめていません。)
- ㉛ 悪性腫瘍(疼痛コントロールが必要な場合に限る)
- ㉜ 末期呼吸器疾患
- ㉝ 末期心不全
- ㉞ 末期腎不全
- ㉟ 他者に対する暴行
- ㊱ A212の注2に規定する準超重症の状態(15歳未満に限る)
≪ADL区分≫
≪身体的拘束の実施≫
「医療区分⑳・医療区分㊻」の振り分け
「医療区分⑳・医療区分㊻」の振り分けについてまとめます。
① 酸素投与が必要な状態であることを確認
「医療区分⑳・医療区分㊻」のどちらにおいても、安静時・睡眠時・運動負荷時のいずれかで動脈血酸素飽和度が90%以下になる状態であることを確認します。
「安静時 + 酸素療法なし」 ⇨ 動脈血酸素飽和度が90%以下になる
「睡眠時 + 酸素療法なし」 ⇨ 動脈血酸素飽和度が90%以下になる
「運動負荷時 + 酸素法なし」 ⇨ 動脈血酸素飽和度が90%以下になる
毎月末には酸素療法を必要とする状態に該当しているかの確認を行い、診療録等に記載します。
② 「医療区分⑳:酸素療法(高密度を要する)」に当てはまるかを確認
酸素投与が必要な状態である場合には、「医療区分⑳:酸素療法(密度の高い治療を要する)」に当てはまるかを確認し、医療区分⑳と医療区分㊻の振り分けを行います。
「医療区分⑳:酸素療法(密度の高い治療を要する)」に当てはまらない場合には、「医療区分㊻:酸素療法(密度の高い治療を要する状態を除く)」に該当することになります。
酸素投与が必要な状態を確認
(安静時・睡眠時・運動負荷時のいずれかで動脈血酸素飽和度90%以下)
⇩⇩⇩⇩⇩⇩
「医療区分⑳:酸素療法(高密度を要する)」に該当するかを確認 ⇨ 該当:医療区分⑳
⇩⇩⇩ 非該当 ⇩⇩⇩
医療区分⑳に該当しない場合には「医療区分㊻:酸素療法(密度の高い治療を要する状態を除く)」に該当
「医療区分⑳:酸素療法(高密度を要する)」の該当要件
「医療区分⑳:酸素療法(高密度を要する)」の該当要件は、以下の①または②の状態です。
- 安静時に、3L/分以上で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できる。
- 安静時に、3L/分未満で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できるが…以下のいずれかの場合
- 肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合
- New York Heart Associationの心機能分類のⅢ度若しくはⅣ度の心不全の状態である場合
※「②」において、肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合には、点滴を実施した日から30日間まで本項目に該当する。
酸素投与が必要な状態だが、上記「医療区分⑳」に該当しない場合には、「医療区分㊻:酸素療法(密度の高い治療を要する状態を除く)」に該当します。
医療区分は入院基本料にどう影響するのか?
療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を行い、それをもとに入院料が決定する仕組みになっています。
入院患者の医療区分・ADL区分の評価
医療区分は「入院患者の医療必要度」を評価したもので、その評価によって「医療区分1、医療区分2、医療区分3」のいずれかに決定されます。
| 医療の必要度 | 低い | ⇔ | 高い |
| 医療区分 | 医療区分1 | 医療区分2 | 医療区分3 |
ADL区分は「入院患者の介護必要度」を評価したもので、その評価によって「ADL区分1、ADL区分2、ADL区分3」のいずれかに決定されます。
| 介護の必要度 | 低い | ⇔ | 高い |
| ADL区分 | ADL区分1 | ADL区分2 | ADL区分3 |
医療区分・ADL区分による入院料の決定
療養病棟入院基本料は30分類に分かれていて、医療区分とADL区分の組み合わせによって、入院料1~入院料30までのいずれかになる仕組みになっています。
医療区分とADL区分の組み合わせは、
- 疾患・状態に係る医療区分1・2・3
- 処置等に係る医療区分1・2・3
- ADL区分1・2・3
上記の3つを組み合わせた27分類に、「スモンに関する3分類」を加えた計30分類の入院料になっています。
( 疾患・状態の医療区分1~3 × 処置等の医療区分1~3 × ADL区分1~3 )
+
スモン3分類
⇩⇩⇩⇩⇩⇩
( 3 × 3 × 3 ) + 3 = 27 + 3 = 30分類の入院料
[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介
[令和8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合について、Excelシートをnoteにて公開中です。
「医療区分2・3の割合|Excelシート」では、以下の4シートをひと月分として、入力を行っていきます。
① 割合シート
「割合シート」では、医療区分2・3の割合を求めます。
≪主な入力項目≫
- 患者氏名
- 日々の入院料
- 前月、前々月の医療区分2・3の総数
- 前月、前々月の延べ患者数
上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。
- その月の最大入院数、最小入院数、延べ患者数、重症度割合
- 直近3ヵ月の重症度割合
- 入院料1~30の総数
![[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介](https://kuwahopi.com/wp-content/uploads/2026/04/01割合シート-1024x627.png)
② 分類シート
「分類シート」では、入院患者の医療区分を分類します。
≪主な入力項目≫
- ADL区分(その月の主な区分)
- 算定した医療区分(疾患・状態)(処置等)の内容
上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。
- 医療区分(疾患・状態)の分類(%表示)
- 医療区分(処置等)の分類(%表示)
- 医療区分(疾患・状態)と医療区分(処置等)を合わせた分類(%表示)
![[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介](https://kuwahopi.com/wp-content/uploads/2026/04/02分類シート.png)
③ 拘束シート
「拘束シート」では、身体的拘束の実施割合を計算します。
≪主な入力項目≫
- 身体的拘束を実施した日
- 前月、前々月の身体的拘束を実施した日数
- 前月、前々月の入院料算定日数
上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。
- その月の身体的拘束の実施日数、入院料算定日数、身体的拘束の実施割合
- 直近3ヵ月の身体的拘束の実施割合
![[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介](https://kuwahopi.com/wp-content/uploads/2026/04/03拘束シート.png)
④ 点数シート
「点数シート」では、入院料の件数に対しての診療報酬を計算します。
≪主な入力項目≫
- 一般、生活療養における各入院料の数
- 入院基本料1、入院基本料2、特別入院基本料の選択
上記項目の入力によって、以下が自動計算されます。
- 入院料別の診療報酬点数
- 入院料の診療報酬の合計点数
![[R8年度診療報酬改定版]医療区分2・3の割合|Excelシートの紹介](https://kuwahopi.com/wp-content/uploads/2026/04/04点数シート-1024x353.png)

