療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。
そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。
この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。
※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。
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「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を理解する
療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入します。その評価は「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっているため、評価を行うスタッフは、評価の手引きをしっかり理解しておく必要があります。
参考図書
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目次
医療区分の概要(医科点数表の解釈)
医療区分「人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜潅流又は血漿交換療法」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。
33. 人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜潅流又は血漿交換療法
語句の説明
- 「人工腎臓」とは?
-
人工腎臓とは、腎臓の機能が低下した腎不全の患者さんに対して、血液をろ過して老廃物や余分な水分を取り除く「人工透析」という治療に用いられる医療機器の総称です。
具体的には、血液透析で使われる「ダイアライザー」のことを指し、体外に取り出した血液を装置に通して浄化し、体内に戻す役割を担います。
腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物が蓄積し、命に関わる合併症を引き起こす可能性があるため、週3回(1回4〜5時間程度)治療を行います。
| 人工腎臓を用いた治療(血液透析) |
|---|
| 血液の出し入れ | 通常、腕の動脈と静脈をつなぐ「シャント」から血液を取り出し、人工腎臓で浄化して、再び静脈に戻します。 |
| 治療頻度と時間 | 一般的に1回の透析に4~5時間かかり、週に3回行われます。 |
| 治療中の管理 | 血液ポンプや透析液の供給、水分除去などを制御する「コンソール」と呼ばれる機械が使用されます。 |
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- 「持続緩徐式血液濾過」とは?
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持続緩徐式血液濾過(CRRT: Continuous Renal Replacement Therapy)は、急性腎不全などの重症患者に対し、24時間以上かけてゆっくりと体液調整を行うことで、体への負担を少なくして血液中の老廃物を除去する治療法です。
この治療法は、心臓や血管への負担が少なく、循環動態が不安定な患者にも適用可能です。
| 特徴 |
|---|
| 治療の目的 | 急速な腎機能の低下や、重症急性膵炎、劇症肝炎、肝不全などの患者を対象に、体液調整を行い病態を改善します。 |
| 治療方法 | 大腿静脈などからカテーテルを挿入し、小型の濾過器を用いて持続的に体外で血液を浄化します。 |
| CRRT | 「持続緩徐式血液濾過」はこの治療法の一般的な名称であり、連続して行う血液浄化療法のことです。 |
| 利点 | 循環動態が安定:通常の血液透析と比較して、血圧や血漿浸透圧の急激な変化が少ないため、循環動態が不安定な患者にも適しています。 |
| 中分子物質の除去:血液濾過器(ヘモフィルター)を用いることで、通常の血液透析では除去しにくい中分子の老廃物も効果的に除去できます。 |
| 主な適用疾患 |
|---|
・急性腎不全 ・重症急性膵炎 ・劇症肝炎 ・術後肝不全 ・敗血症、多臓器不全など、循環動態が不安定な重症患者 |
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- 「腹膜潅流」とは?
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腹膜灌流(腹膜透析)とは、腎臓の機能が低下した患者さんの血液を浄化する治療法です。
お腹の中(腹腔)に特別なカテーテルを留置し、腹膜をフィルターとして透析液を注入します。
一定時間お腹にためた後、腹膜を介して血液中の老廃物や余分な水分が透析液に移動し、汚れた液を体外に排出することで血液を浄化します。
| 腹膜灌流(腹膜透析)の仕組み |
|---|
| カテーテルを埋め込む | 特殊なカテーテルをお腹に埋め込み、腹腔と外部をつなぎます。 |
| 透析液を注入 | カテーテルから透析液を腹腔内に注入します。 |
| 老廃物を除去 | 腹膜の毛細血管を流れる血液と透析液の間で、老廃物や余分な水分が腹膜を介して移動します。 |
| 透析液を入れ替える | 老廃物を含んだ透析液を体外に排出し、新しい透析液に交換することで、血液をきれいにします。 |
| 腹膜灌流の主な種類 |
|---|
| CAPD(持続携行式腹膜透析) | ・1日に数回(通常4回)、患者さん自身が透析液バッグを交換します。 ・バッグ交換には30分程度かかりますが、生活のスケジュールに合わせて治療できます。 |
| APD(自動腹膜透析) | ・夜間、寝ている間に自動腹膜灌流装置(サイクラー)が透析液の交換を自動で行います。 ・日中の透析液交換が不要なため、仕事や学業など日中の活動がしやすくなります。 |
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- 「血漿交換療法」とは?
-
血漿交換療法は、血液を体外に取り出して血球と血漿に分け、病気の原因となる物質を含む血漿を廃棄し、新しい血漿やアルブミン製剤を補充して体内に戻す治療法です。
この治療は、自己抗体などの有害物質を直接除去したり、不足している凝固因子を補充したりすることで、自己免疫疾患や肝不全などの病気を改善することを目的としています。
| 具体的な流れ |
|---|
| 脱血 | 首や太ももの太い血管から血液を体外に取り出します。 |
| 分離 | 血漿分離器で、血液を細胞成分(血球)と液体の血漿成分に分けます。 |
| 廃棄・補充 | 病気の原因物質を含む血漿は廃棄し、代わりに新しい新鮮凍結血漿やアルブミン製剤を補充します。 |
| 返血 | 血球成分と補充した血漿を合わせて体内に戻します。 |
| 特徴 |
|---|
| 目的 | 病気の原因となる有害物質(自己抗体など)を除去する。 |
| 補充 | 凝固因子など、必要な物質を補充する。 |
| 治療回数 | 1回で全血漿を交換するわけではないため、病気や個人の状態に合わせて複数回行われることが多いです。 |
| 合併症のリスク | 補充する血漿製剤によるアレルギー反応や感染症のリスクがあります。 |
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評価の要点
【処置等に係る医療区分㉝】人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜潅流又は血漿交換療法
| 分類 | 医療区分 | 算定期間 | 評価の単位 |
|---|
| 処置等 | 医療区分2 | 期間に限りなし | 月1回 |
人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜潅流、血漿交換療法のいずれかを行っていることを確認します。
人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜潅流、血漿交換療法は、継続的に行われていれば、毎日行われている必要はありません。
月に1回は、実施についての評価を行います。
医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。
評価のチェックポイント
評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。
| 該当要件のチェックポイント |
|---|
| ☐ | 人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜潅流、血漿交換療法を実施している状態である。 |
| ☐ | 診療計画を作成し、適切な治療・処置をしている。 |
| ☐ | 診療計画や実施内容を診療録に記載している。 |
| ☐ | QOLに十分配慮している。 |
| ☐ | 透析機関との連携がとれている。 |
| 算定期間のチェックポイント |
|---|
| ☐ | 1日毎に評価を行っている。その際、人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜潅流又は血漿交換療法について、継続的に適切に行われていれば毎日行われている必要はない。 |
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- 患者単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
- 病棟単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
- 病棟単位の医療区分の内訳(割合)