療養病棟では、入院患者の状態を「医療区分」と「ADL区分」に基づいて継続的に評価し、その組み合わせによって療養病棟入院基本料を算定します。
つまり、医療区分とADL区分の評価結果が、療養病棟入院基本料の算定区分を決める重要な要素となっています。
令和6年度診療報酬改定では、従来の9段階の入院料から30分類の入院料へと見直されました。
この記事では、「医療区分・ADL区分の組み合わせ」によって療養病棟入院基本料がどのように決定されるのか、令和6年6月以降の30分類を中心に、令和6年5月までの9段階との違いも含めて解説します。
療養病棟入院基本料は「医療区分・ADL区分の組み合わせ」で決まる
療養病棟入院基本料は、入院患者の状態を評価する「医療区分」と「ADL区分」の組み合わせによって算定する入院料が決定されます。
医療区分は「患者の医療的な必要性や処置の状況などを評価する指標」であり、ADL区分は「日常生活動作(ADL)の自立度を評価する指標」です。
療養病棟では、この2つの評価結果を組み合わせることで、患者ごとの状態に応じた入院料を算定する仕組みとなっています。
医療区分・ADL区分とは
「医療区分」と「ADL区分」は、療養病棟に入院する患者の状態を評価するための指標です。
医療区分では、疾患や医療処置の必要性など、患者がどの程度の医療的管理を必要としているかを評価します。
一方、ADL区分では、寝返り・起き上がり・座位保持・移乗などの日常生活動作(ADL)について、患者の自立度を評価します。
療養病棟入院基本料は、この医療区分とADL区分をそれぞれ評価し、その組み合わせによって算定する入院料が決まります。
医療区分・ADL区分の評価項目や具体的な評価方法については、『医療区分・ADL区分』評価項目と評価の大まかな要点で詳しく解説しています。
療養病棟入院基本料が決まる仕組み
療養病棟入院基本料は、以下の流れで決定されます。
① 入院患者の状態を評価する
↓
② 医療区分とADL区分を判定する
↓
③ 医療区分・ADL区分の評価結果を組み合わせる
↓
④ 該当する療養病棟入院基本料を算定する
現在の評価制度では、医療区分(疾患・状態、処置等)とADL区分の評価結果を組み合わせて、療養病棟入院基本料が決定されます。
例えば、「疾患・状態の医療区分3」「処置等の医療区分3」「ADL区分3」の患者は、30分類のうち「入院料1」に該当します。
一方、「疾患・状態の医療区分2」「処置等の医療区分2」「ADL区分2」の患者は、「入院料14」を算定します。
このように、療養病棟入院基本料は医療区分またはADL区分のいずれか一方だけで決まるのではなく、それぞれの評価結果を組み合わせて決定されます。
医療区分・ADL区分の評価方法(概要)
療養病棟入院基本料を算定するためには、入院患者の状態を医療区分とADL区分の2つの視点から評価します。
医療区分では患者に必要な医療の程度を、ADL区分では日常生活動作(ADL)の自立度を評価し、これらの評価結果を組み合わせることで療養病棟入院基本料を決定します。
ここでは、それぞれの評価方法の概要について説明します。
医療区分の評価
医療区分は、患者の疾患・状態や医療処置の内容などから、医療の必要性を評価する指標です。
評価結果は「医療区分1・2・3」の3段階に区分され、療養病棟入院基本料を決定する重要な要素となります。
| 医療の必要度 | 低い | ⇔ | 高い |
| 医療区分 | 医療区分1 | 医療区分2 | 医療区分3 |
医療区分・ADL区分の評価項目や具体的な評価方法については、『医療区分・ADL区分』評価項目と評価の大まかな要点で詳しく解説しています。
ADL区分の評価
ADL区分は、患者の日常生活動作(ADL)の自立度を評価する指標です。
評価結果は「ADL区分1・2・3」の3段階に区分され、医療区分と同様に、ADL区分も療養病棟入院基本料を決定する重要な要素の一つです。
| 介護の必要度 | 低い | ⇔ | 高い |
| ADL区分 | ADL区分1 | ADL区分2 | ADL区分3 |
医療区分・ADL区分の評価項目や具体的な評価方法については、『医療区分・ADL区分』評価項目と評価の大まかな要点で詳しく解説しています。
令和6年5月まで使用された「9段階の入院料」
令和6年5月までの療養病棟入院基本料では、医療区分とADL区分の組み合わせによって9段階の入院料(A~I)に分類される仕組みが採用されていました。
医療区分は「医療区分1・2・3」、ADL区分は「ADL区分1・2・3」の3段階で評価され、それぞれの組み合わせによって算定する入院料が決定される仕組みです。
療養病棟入院基本料を算定する療養病棟に入院する患者の医療区分・ADL区分は、毎日評価を行い決定するようになっており、評価の結果を組み合わせることで9つの入院料に分類されていました。
医療区分・ADL区分による「9段階」の組み合わせ
令和6年5月までは、「疾患・状態|処置等に係る医療区分1・2・3」と「ADL区分1・2・3」を組み合わせた9段階の入院料になっていました。
「疾患・状態|処置等の医療区分1・2・3」×「ADL区分1・2・3」= 9段階の入院料
⇩⇩⇩⇩⇩⇩
3 × 3 = 9
この9段階の組み合わせを表にすると下のようになります。
| 医療区分1 ⇩ | 医療区分2 ⇩ | 医療区分3 ⇩ | |
| ADL区分3 ⇨ | 医療区分1 ADL区分3 | 医療区分2 ADL区分3 | 医療区分3 ADL区分3 |
| ADL区分2 ⇨ | 医療区分1 ADL区分2 | 医療区分2 ADL区分2 | 医療区分3 ADL区分2 |
| ADL区分1 ⇨ | 医療区分1 ADL区分1 | 医療区分2 ADL区分1 | 医療区分3 ADL区分1 |
「医療区分1・医療区分2・医療区分3」と「ADL区分1・ADL区分2・ADL区分3」の組み合わせは全部で9つになるので、9段階の入院料になります。
9段階の組み合わせと入院料(A~I)
先ほどの「医療区分・ADL区分の組み合わせ」に9段階の入院料(A~I)を当てはめると、下の表のようになります。
| 医療区分1 ⇩ | 医療区分2 ⇩ | 医療区分3 ⇩ | |
| ADL区分3 ⇨ | 入院基本料G 医療区分1 ADL区分3 | 入院基本料D 医療区分2 ADL区分3 | 入院基本料A 医療区分3 ADL区分3 |
| ADL区分2 ⇨ | 入院基本料H 医療区分1 ADL区分2 | 入院基本料E 医療区分2 ADL区分2 | 入院基本料B 医療区分3 ADL区分2 |
| ADL区分1 ⇨ | 入院基本料I 医療区分1 ADL区分1 | 入院基本料F 医療区分2 ADL区分1 | 入院基本料C 医療区分3 ADL区分1 |
| 診療報酬 | 療養病棟入院基本料 | 疾患・状態|処置等に係る医療区分 × ADL区分 |
|---|---|---|
| 高 ⇧ ⇩ 低 | 入院基本料A | 医療区分3 × ADL区分3 |
| 入院基本料B | 医療区分3 × ADL区分2 | |
| 入院基本料C | 医療区分3 × ADL区分1 | |
| 入院基本料D | 医療区分2 × ADL区分3 | |
| 入院基本料E | 医療区分2 × ADL区分2 | |
| 入院基本料F | 医療区分2 × ADL区分1 | |
| 入院基本料G | 医療区分1 × ADL区分3 | |
| 入院基本料H | 医療区分1 × ADL区分2 | |
| 入院基本料I | 医療区分1 × ADL区分1 |
医療区分1・ADL区分1になるほど診療報酬は低くなり、医療区分3・ADL区分3になるほど診療報酬は高くなります。
令和6年6月以降は「30分類の入院料」へ移行
令和6年6月の診療報酬改定によって、入院基本料が分類が9段階(療養病棟入院基本料A~療養病棟入院基本料I)から30分類(入院料1~入院料30)へと大幅に増えることになりました。
9段階の入院料と30分類の入院料の比較
入院料が9段階から30分類に増えた理由は、令和6年5月までの医療区分の評価項目「疾患・状態|処置等に係るもの」が、令和6年6月から「疾患・状態に係るもの」と「処置等に係るもの」の2つに分けられたからです。
| 9段階の入院料 (令和6年5月まで) | ⇨ 令和6年度 診療報酬改定 ⇨ | 30分類の入院料 (令和6年6月以降) |
| 療養病棟入院基本料A 療養病棟入院基本料B 療養病棟入院基本料C 療養病棟入院基本料D 療養病棟入院基本料E 療養病棟入院基本料F 療養病棟入院基本料G 療養病棟入院基本料H 療養病棟入院基本料I | 入院料 1 入院料 2 入院料 3 ・ ・ ・ 入院料 28 入院料 29 入院料 30 |
入院料の分類は大幅に増加していますが、入院料が細分化されただけで基本的な考え方はまったく変わっていません。
医療区分・ADL区分による「30分類」の組み合わせ
令和6年6月以降は、「疾患・状態に係る医療区分1・2・3」「処置等に係る医療区分1・2・3」「ADL区分1・2・3」を組み合わせた27分類に、スモンに関する3分類を加えた計30分類の入院料になっています。
( 「疾患・状態の医療区分1・2・3」×「処置等の医療区分1・2・3」×「ADL区分1・2・3」 )+ スモン3分類
⇩⇩⇩⇩⇩⇩
( 3 × 3 × 3 ) + 3 = 27 + 3 = 30
30分類の組み合わせと入院料(1~30)
30分類の入院料と医療区分・ADL区分の組み合わせを表にまとめると下のようになります。
| 入院料 | 医療区分 | ADL区分 | |
|---|---|---|---|
| 疾患・状態 | 処置等 | ||
| 入院料 1 | 医療区分3 (スモン除く) | 医療区分3 | ADL区分3 |
| 入院料 2 | 医療区分3 (スモン除く) | 医療区分3 | ADL区分2 |
| 入院料 3 | 医療区分3 (スモン除く) | 医療区分3 | ADL区分1 |
| 入院料 4 | 医療区分3 (スモン除く) | 医療区分2 | ADL区分3 |
| 入院料 5 | 医療区分3 (スモン除く) | 医療区分2 | ADL区分2 |
| 入院料 6 | 医療区分3 (スモン除く) | 医療区分2 | ADL区分1 |
| 入院料 7 | 医療区分3 (スモン除く) | 医療区分1 | ADL区分3 |
| 入院料 8 | 医療区分3 (スモン除く) | 医療区分1 | ADL区分2 |
| 入院料 9 | 医療区分3 (スモン除く) | 医療区分1 | ADL区分1 |
| 入院料 10 | 医療区分2 | 医療区分3 | ADL区分3 |
| 入院料 11 | 医療区分2 | 医療区分3 | ADL区分2 |
| 入院料 12 | 医療区分2 | 医療区分3 | ADL区分1 |
| 入院料 13 | 医療区分2 | 医療区分2 | ADL区分3 |
| 入院料 14 | 医療区分2 | 医療区分2 | ADL区分2 |
| 入院料 15 | 医療区分2 | 医療区分2 | ADL区分1 |
| 入院料 16 | 医療区分2 | 医療区分1 | ADL区分3 |
| 入院料 17 | 医療区分2 | 医療区分1 | ADL区分2 |
| 入院料 18 | 医療区分2 | 医療区分1 | ADL区分1 |
| 入院料 19 | 医療区分1 | 医療区分3 | ADL区分3 |
| 入院料 20 | 医療区分1 | 医療区分3 | ADL区分2 |
| 入院料 21 | 医療区分1 | 医療区分3 | ADL区分1 |
| 入院料 22 | 医療区分1 | 医療区分2 | ADL区分3 |
| 入院料 23 | 医療区分1 | 医療区分2 | ADL区分2 |
| 入院料 24 | 医療区分1 | 医療区分2 | ADL区分1 |
| 入院料 25 | 医療区分1 | 医療区分1 | ADL区分3 |
| 入院料 26 | 医療区分1 | 医療区分1 | ADL区分2 |
| 入院料 27 | 医療区分1 | 医療区分1 | ADL区分1 |
| 入院料 28 | 医療区分3 (スモンに限る) | ー | ADL区分3 |
| 入院料 29 | 医療区分3 (スモンに限る) | ー | ADL区分2 |
| 入院料 30 | 医療区分3 (スモンに限る) | ー | ADL区分1 |
| 処置等 医療区分3 ⇩ | 処置等 医療区分2 ⇩ | 処置等 医療区分1 ⇩ | |||||||
| 疾患・状態 医療区分3 ⇨ | ADL区分3 入院料1 | ADL区分2 入院料2 | ADL区分1 入院料3 | ADL区分3 入院料4 | ADL区分2 入院料5 | ADL区分1 入院料6 | ADL区分3 入院料7 | ADL区分2 入院料8 | ADL区分1 入院料9 |
| 疾患・状態 医療区分2 ⇨ | ADL区分3 入院料10 | ADL区分2 入院料11 | ADL区分1 入院料12 | ADL区分3 入院料13 | ADL区分2 入院料14 | ADL区分1 入院料15 | ADL区分3 入院料16 | ADL区分2 入院料17 | ADL区分1 入院料18 |
| 疾患・状態 医療区分1 ⇨ | ADL区分3 入院料19 | ADL区分2 入院料20 | ADL区分1 入院料21 | ADL区分3 入院料22 | ADL区分2 入院料23 | ADL区分1 入院料24 | ADL区分3 入院料25 | ADL区分2 入院料26 | ADL区分1 入院料27 |
| 疾患・状態(スモン) 医療区分3 ⇨ | ADL区分3 入院料28 | ADL区分2 入院料29 | ADL区分1 入院料30 |
医療区分とADL区分の組み合わせで入院料が決まる仕組みを理解できれば、30分類の入院料もどのような組み合わせになっているかが理解できると思います。
まとめ
令和6年度診療報酬改定により、療養病棟入院基本料は、医療区分・ADL区分の組み合わせによる評価体系が見直され、令和6年6月以降は従来の9段階から30分類の入院料へ変更されました。
療養病棟入院基本料は、医療区分だけ、またはADL区分だけで決まるものではなく、医療区分とADL区分の評価結果を組み合わせて算定する仕組みです。
今回解説したように、まずは「医療区分とADL区分を評価し、その組み合わせによって該当する入院料が決定される」という基本的な考え方を理解することが重要です。
