「医療区分㉑:多発性硬化症」をわかりやすく解説|【疾患・状態に係る医療区分:医療区分2】

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療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。

そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。

この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。

※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。

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参考図書


目次

医療区分の概要(医科点数表の解釈)

医療区分「多発性硬化症」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


21. 多発性硬化症

項目の定義
多発性硬化症難病の患者に対する医療等に関する法律第5条に規定する指定難病同法第7条第4項に規定する医療受給者証を交付されている患者(同条第1項各号に規定する特定医療費の支給認定に係る基準を満たすものとして診断を受けたものを含む。)に係るものに限る。)として定めるものを対象とする。)に罹患している状態
評価の単位
留意点
多発性硬化症に罹患している患者であって、医療受給者証を交付されているもの、又は、特定医療費の支給認定に係る基準を満たす状態にあることを医療機関において確実に診断されるものに限る。

語句の説明

「多発性硬化症」とは?

多発性硬化症(MS:multiple sclerosis)は、脳や脊髄、視神経などの中枢神経に炎症が起こり、神経の絶縁体である髄鞘(ずいしょう)が壊れる「脱髄」が多発する難病です。

自己免疫疾患の一種で、自己の免疫システムが誤って自分自身の中枢神経を攻撃することで発症します。

症状は再発と寛解を繰り返すことが特徴で、視力障害、運動・感覚障害、疲労感、排尿障害など、病変部位によって様々です。

主な特徴とメカニズム
自己免疫疾患免疫系が誤って中枢神経を攻撃します。
脱髄髄鞘が壊れることで、神経信号がうまく伝わらなくなります。
多発性中枢神経の様々な場所に病変が多発します。
再発寛解症状の出現(再発)と消退(寛解)を繰り返すことが多いです。
症状
視力障害視力低下や視野の異常など。
運動・感覚障害手足のしびれ、麻痺、筋力低下、歩行障害など。
疲労強い疲労感を感じることがあります。
排尿・排便障害排尿のコントロールが難しくなることがあります。
認知機能障害記憶障害や物忘れ。
ウートフ現象体温が上がると一時的に症状が悪化することがあります。

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「難病の患者に対する医療等に関する法律第5条に規定する指定難病」とは?

「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)第5条に規定する指定難病とは、厚生労働大臣が定める一定の要件を満たす難病の疾患群です。

この法律に基づき、指定難病の患者は医療費助成の対象となります。

難病法では、以下の4つの要件をすべて満たすものを「難病」と定義しています。

  1. 発病の機構が明らかでないこと
  2. 治療方法が確立していないこと
  3. 希少な疾病であること
  4. 長期にわたり療養を必要とすること

「難病」の定義を満たすもののうち、厚生労働大臣が定める基準(患者数が本邦において一定の人数に満たないこと等)を満たすものを「指定難病」として定めています。

指定難病の数は定期的に見直されており、2025年4月1日時点では348疾病が対象となっています。

指定難病と診断され、一定の要件(重症度等)を満たす患者は、申請により「特定医療費受給者証」が交付され、医療費の自己負担分が軽減されます。

指定難病の一覧は、厚生労働省のHPで確認することができます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000084783.html

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「同法第7条第4項」とは?

同法第7条第4項について、「同法」は前文にある「難病の患者に対する医療等に関する法律」のことなので、「難病法 第7条第4項」のことになります。

難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)第7条第4項は、都道府県が特定医療費の支給認定を行った際の手続きについて定めています。

難病法 第7条第4項

都道府県は、支給認定をしたときは、支給認定を受けた指定難病の患者又はその保護者(以下「支給認定患者等」という。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、支給認定の有効期間その他の厚生労働省令で定める事項を記載した医療受給者証を交付しなければならない。

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「医療受給者証」とは?

難病の「医療受給者証」は、「特定医療費(指定難病)受給者証」のことで、指定難病にかかった医療費の一部助成を受けるための証明書です。

申請は居住地の保健所などに提出し、審査を経て交付されます。

この受給者証は、記載された「指定医療機関」でのみ使用でき、医療費の自己負担額が自己負担上限額まで軽減されます。

医療受給者証について
目的指定難病患者の高額な医療費負担を軽減するための制度です。
対象厚生労働省が定める「指定難病」に該当する方。
内容医療費の自己負担額の上限が定められ、それを超える医療費は助成されます。
申請から交付までの流れ
申請住所地の保健所や、県難病・相談支援センターに申請書を提出します。
審査都道府県や指定都市が審査を行い、承認・不承認が決定されます。
交付承認された場合、「特定医療費(指定難病)受給者証」と「自己負担上限額管理表」が送付されます。
注意点審査結果が出るまで数ヶ月かかることがあります。交付されるまでに指定医療機関で支払った医療費は、後日払い戻しの請求が可能です。
医療受給者証の使い方
受診時医療機関に受給者証を提示し、自己負担上限額までを支払います。
対象医療機関受給者証に記載された「指定医療機関」での治療が対象です。
記載内容助成対象となる病名や、受診する医療機関(基幹病院やかかりつけ医)が記載されています。
変更時かかりつけ医などを変更する際は、都道府県に届け出が必要です。

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「同条第1項」とは?

同条第1項について、「同条」は前文にある「同法第7条第4項(難病法 第7条第4項)」のことなので、「難病法 第7条第1項」のことになります。

難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)第7条第1項は、指定難病患者の支給認定について定めています。

難病法 第7条第1項

都道府県は、前条第1項の申請に係る指定難病の患者が、次の各号のいずれかに該当する場合であって特定医療を受ける必要があるときは、支給認定を行うものとする。

 一 その病状の程度が厚生労働大臣が厚生科学審議会の意見を聴いて定める程度であるとき。

 ニ その治療状況その他の事情を勘案して政令で定める基準に該当するとき。

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「罹患」とは?

罹患(りかん)とは、病気にかかることを意味しています。

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評価の要点

【疾患・状態に係る医療区分㉑】多発性硬化症

分類医療区分算定期間評価の単位
疾患・状態医療区分2期間に限りなし

多発性硬化症に罹患していて、以下のいずれかに当てはまるものに限ります。

  • 医療受給者証を交付されている
  • 特定医療費の支給認定に係る基準を満たす状態にあることを医療機関において確実に診断されている

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

受給者証の交付を受けていない場合の対象基準

受給者証の交付を受けていない患者については、留意点に「特定医療費の支給認定に係る基準を満たす状態にあることを医療機関において確実に診断されるもの」という記載があります。

この医療機関における診断の基準については、医科点数表の解釈に事務連絡の記載がされています。

療養病棟入院基本料に関する事務連絡(医科点数表の解釈:令和6年6月版 p94)

 指定難病については、A101療養病棟入院基本料の「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」19~23(編注:20~24)においては、「同法(難病の患者に対する医療等に関する法律)第7条第4項に規定する医療受給者証を交付されている患者(同条第1項各号に規定する特定医療費の支給認定に係る基準を満たすものとして診断を受けたものを含む。)に係るものに限る」と規定されています。
 これについて、病名及び重症度が「特定医療費の支給認定に係る基準」を満たすことを患者が受診する保険医療機関の医師が診断したが、受給者証の交付を受けていない場合も、対象に含まれるか?

 医師が、病名及び重症度が基準を満たすことを客観的な根拠とともに医学的に明確に診断できる場合には含まれる。(平28.6.14 その4・問4)

 指定難病については、A101療養病棟入院基本料の「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」19~23(編注:20~24)においては、「同法(難病の患者に対する医療等に関する法律)第7条第4項に規定する医療受給者証を交付されている患者(同条第1項各号に規定する特定医療費の支給認定に係る基準を満たすものとして診断を受けたものを含む。)に係るものに限る」と規定されています。
 これについて、
病名及び重症度が「特定医療費の支給認定に係る基準」を満たすことを患者が受診する保険医療機関の医師が診断したが、受給者証の交付を受けていない場合も、対象に含まれるか?

 医師が、病名及び重症度が基準を満たすことを客観的な根拠とともに医学的に明確に診断できる場合には含まれる。(平28.6.14 その4・問4)

「評価の手引き:医療区分⑳~㉔」について

「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」19~23(編注:20~24)は以下の5つです。

  • 医療区分⑳:筋ジストロフィー
  • 医療区分㉑:多発性硬化症
  • 医療区分㉒:筋萎縮性側索硬化症
  • 医療区分㉓:パーキンソン病関連疾患
  • 医療区分㉔:その他の指定難病等

受給者証の交付を受けていない場合の対象基準

受給者証の交付を受けていない場合も、「評価の手引き」の留意点に「医師が、病名及び重症度が基準を満たすことを客観的な根拠とともに医学的に明確に診断できる場合には含まれる。」と記載があります。

それについて、療養病棟入院基本料に関する事務連絡で、「医師が、病名及び重症度が基準を満たすことを客観的な根拠とともに医学的に明確に診断できる場合には含まれる。」とあるので、医師によって医学的根拠を示した上で判断することで医療区分に該当することになります。

受給者証の交付を受けていない場合であっても、患者が受診する保険医療機関の医師が、病名及び重症度が「特定医療費の支給認定に係る基準」を満たすことを診断する必要があります。また、その医学的な根拠を診療録等に記載することが必要です。

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  • 患者単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
  • 病棟単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
  • 病棟単位の医療区分の内訳(割合)
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