アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)、トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体(TAT)|基準値

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アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)は、トロンビンなどの活性化された凝固因子を阻害する天然の抗凝固因子です。

トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)は、ATⅢがトロンビンと結合して生成される複合体で、血管内で凝固が活性化された際に生成され、凝固亢進状態(DICや血栓症など)の指標となります。

ATⅢ、TATの基準値

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ): 80~120(%)

トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体(TAT): 3(ng/mL)未満


参考図書


目次

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)、トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体(TAT)の概要

略称

アンチトロンビンⅢ
ATⅢ:antithrombin Ⅲ

トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体
TAT:thrombin-antithrombin Ⅲ complex

ATⅢ、TATの機序

凝固亢進により生じたトロンビンは、その阻害物質であるアンチトロンビンⅢ(ATⅢ)と複合してトロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体(TAT)を形成し不活化されます。

そのため、アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)の低下とトロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体(TAT)の増加は、凝固更新の指標として用いられます。


トロンビン(凝固第Ⅱ因子)+アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)

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トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体(TAT)

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)

血液中で凝固反応を制御する生理的抗凝固因子であり、肝臓で合成される糖タンパク質です。

トロンビン、活性化第X因子(Xa因子)など、いくつかの活性化凝固因子と結合し、それらを不活化します。

トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)

凝固系が活性化されトロンビンが生成されると、ATⅢとトロンビンが直接結合して複合体(TAT)を形成します。

主な測定目的

DIC(播種性血管内凝固症候群)*1、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症などの血栓性疾患の診断や、線溶療法(血栓を溶かす治療法)の効果判定・経過観察のために測定されます。

(*1)DIC(播種性血管内凝固症候群)

DIC(播種性血管内凝固症候群)は、がんや重度の感染症など基礎疾患が原因で、全身の細い血管に微小血栓が多発し、さらに血小板や凝固因子が過剰消費されることで、出血と血栓症を両方併発する重篤な疾患です。

症状として、あざや鼻血、血尿などの出血症状や、臓器障害による息切れ、意識障害などが現れます。

治療は原因疾患の治療と並行して、出血を抑えるための血小板や凝固因子の補充、血栓を抑える薬(ヘパリンなど)の投与が行われ、早期診断・早期治療が重要です。

ATⅢ、TATの異常とその原因

ATⅢが低値、TATが高値の場合

  • 凝固亢進: 播種性血管内凝固症候群(DIC)、血栓塞栓症 等

ATⅢが低値の場合(ATⅢのみ)

  • 先天性ATⅢ欠乏症
  • 重症肝障害(肝硬変、肝臓癌)

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