α2プラスミンインヒビター(α2PI)、プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)|基準値

  • URLをコピーしました!

α2プラスミンインヒビター(α2PI)は、血液中で活性化したプラスミンの働きを強力に阻害するタンパク質であり、肝臓で産生されます。

プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)は、このα2PIがプラスミンと結合してできたもので、プラスミンの過剰な作用を抑制し、線溶系が早く働きすぎないようにバランスを取る役割を担います。

α2PI、PICの基準値

α2プラスミンインヒビター(α2PI): 80~130(%)

プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体(PIC): 0.4~0.8(μg/mL)


参考図書


目次

α2プラスミンインヒビター(α2PI)、プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)の概要

略称

α2プラスミンインヒビター
(α2PI:α2 plasmin inhibitor)

プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体
(PIC:plasmin α2 plasmin inhibitor complex)

α2PI、PICの機序

α2プラスミンインヒビター(α2PI)は肝臓で産生されるタンパク質で、血液中で活性化したプラスミンの働きを強力に阻害する働きがあります。

プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)は、このα2PIがプラスミンと結合してできたものです。

プラスミンの過剰な作用を抑制し、線溶系が早く働きすぎないようにバランスを取る役割を担います。


プラスミン*1
+

α2プラスミンインヒビター(α2PI)

⇩⇩⇩⇩⇩

プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)

DIC(播種性血管内凝固症候群)*2などで線溶系の活性が高いときには、プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)が高値になります。α2プラスミンインヒビター(α2PI)が低下すると、線溶が凝固反応の活性を上回り、出血傾向になります。

(*1)プラスミンとは?

プラスミンは、体内で血栓(フィブリンの網目)を分解して溶かす役割を持つタンパク質分解酵素です。

普段は「プラスミノーゲン」という不活性な前駆体で血中に存在し、プラスミノーゲンアクチベータなどの働きで活性化されると、血栓を溶解します。

この働きにより、脳梗塞や心筋梗塞などの病気を防ぐ役割を担っています。

(*2)DIC(播種性血管内凝固症候群)とは?

DIC(播種性血管内凝固症候群)は、がんや重度の感染症など基礎疾患が原因で、全身の細い血管に微小血栓が多発し、さらに血小板や凝固因子が過剰消費されることで、出血と血栓症を両方併発する重篤な疾患です。

症状として、あざや鼻血、血尿などの出血症状や、臓器障害による息切れ、意識障害などが現れます。

治療は原因疾患の治療と並行して、出血を抑えるための血小板や凝固因子の補充、血栓を抑える薬(ヘパリンなど)の投与が行われ、早期診断・早期治療が重要です。

α2プラスミンインヒビター(α2PI)の役割

① 線溶の阻止

プラスミンは血栓を溶解する役割を持ちますが、線溶が亢進しすぎると止血が不十分になる可能性があります。

α2PIはプラスミンに結合し、その作用を阻止することで、線溶の過剰な活動を抑えます。

② 生理的線溶阻止因子

生体内で線溶系が活性化する際に、同時に線溶阻止因子の一つとして働き、線溶系が早く働きすぎることを防ぎます。

③ 合成と構造

肝臓で産生される糖タンパク質であり、電気泳動上ではα2グロブリン分画に属します。

α2PI、PICの異常とその原因

α2PIPIC原因
高値高値・妊娠末期
低値高値・線溶の亢進
・播種性血管内凝固症候群(DIC)
・血栓塞栓
低値・先天性α2PI欠乏症・異常症
・重症肝機能障害(肝臓癌、肝硬変)
・血栓溶解薬(ウロキナーゼ)の使用

参考図書

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次