療養病棟入院基本料への「医療区分・ADL区分」の導入経緯とその変化について理解する

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医療区分・ADL区分は平成18年7月から療養病棟入院基本料に導入されました。

それによって、それまで包括評価であった療養病棟入院基本料の算定に大きな変化をもたらし、病院の収益にも大きな影響を及ぼしました。

この医療区分・ADL区分による評価は、平成18年に5段階の区分として始まったものが、平成22年に9段階に拡充され、令和6年に9段階から30分類の評価に改定されています。

今回は、療養病棟入院基本料への「医療区分・ADL区分」の導入経緯とその変化についてまとめていきます。

目次

療養病棟入院基本料に係る主な診療報酬改定の経緯

診療報酬改定による療養病棟入院基本料に係る主な診療報酬改定の経緯を、平成12年から令和6年まで段階別にまとめます。

平成12年平成14年平成16年平成18年
平成20年平成22年平成24年平成26年
平成28年平成30年令和2年令和4年
令和6年

平成12年 「包括評価のみの算定方法」に改定

平成12年の診療報酬改定では、従前まで「出来高算定か、包括算定かのいずれかを選択する算定方法」であった入院料が「包括評価のみの算定方法」に療養病棟入院基本料は改定されました。

「出来高算定」or「包括算定」を選択
⇩⇩⇩⇩⇩⇩
包括算定のみ

療養病棟入院基本料(平成12年~)の概要

基本料施設基準診療報酬点数
療養病棟入院基本料1~3看護配置 25:1
看護補助配置 20~30:1
1,231点 ~ 1,121点
療養病棟入院基本料4~7看護配置 30:1
看護補助配置 15~30:1
1,229点 ~ 1,066点

看護配置、看護補助配置によって、療養病棟入院基本料1~7の7段階の基本料に分類されました。ただし、診療報酬点数は 1,231点から1,066点であり、最大でも165点の差しかないため、それほど差がないことを確認できます。

[基本料による診療報酬の差]
療養病棟入院基本料1:1,231点   療養病棟入院基本料7:1,066点
1,231 - 1,066 = 165点 ⇨ それほど差がない

平成14年 「初期加算、長期減算の廃止」「診療報酬の引き下げ」

平成14年の診療報酬改定では、「初期加算、長期減算」が廃止されて入院期間を通して同じ評価となりました。

平成12年の診療報酬点数と比べて診療報酬は引き下げられました。

「初期加算、長期減算」が廃止
診療報酬の引き下げ

療養病棟入院基本料(平成14年~)の概要

基本料施設基準診療報酬点数
療養病棟入院基本料1~3看護配置 25:1
看護補助配置 20~30:1
1,209点 ~ 1,098点
療養病棟入院基本料4~7看護配置 30:1
看護補助配置 15~30:1
1,204点 ~ 1,041点

平成12年の改定時と比較して、診療報酬点数は引き下げられました。
・療養病棟入院基本料1~3: 1,231点 ~ 1,121点 ⇨ 1,209点 ~ 1,098点(表内赤文字)
・療養病棟入院基本料4~7: 1,229点 ~ 1,066点 ⇨ 1,204点 ~ 1,041点(表内赤文字)

療養病棟入院基本料3(看護配置 25:1、看護補助配置 30:1)と療養病棟入院基本料4~7(看護配置 30:1、看護補助配置 15~30:1)については、平成15年3月31日で廃止されました。

[平成15年4月1日~]
・療養病棟入院基本料1
・療養病棟入院基本料2
・療養病棟入院基本料3
・療養病棟入院基本料4~7

平成16年 「変更なし」

平成16年の診療報酬改定では大きな変更はありませんでした。

平成18年 「医療区分・ADL区分に応じた5段階の評価を導入」

平成18年7月から、医療区分・ADL区分に応じた5段階の評価が導入されました。

医療区分・ADL区分に応じた5段階の入院基本料を導入

療養病棟入院基本料(平成18年7月~)の概要

基本料施設基準診療報酬点数
療養病棟入院基本料A~E看護配置 25:1
看護補助配置 25:1
1,740点 ~ 764点

医療区分・ADL区分の導入によって療養病棟入院基本料A~E(1,740点 ~ 764点)の5段階の評価になりました。療養病棟入院基本料Aと療養病棟入院基本料Eの診療報酬点数には、約1,000点の差があるため、患者の状態によって大きな収益差が生じるようになりました。

[基本料Aと基本料Eの差]
療養病棟入院基本料A:1,740点   療養病棟入院基本料E:764点
1,740 - 764 = 976点 ⇨ 約1,000点の差がある

平成20年 「診療報酬の引き下げ」

平成20年の診療報酬改定では、医療経済実態調査の結果等を踏まえて評価の引き下げが実施されました。

「脱水」及び「嘔吐」については、発熱を伴うものとするなど医療区分の評価項目が見直されました。

評価の引き下げ
医療区分の評価項目の見直し

療養病棟入院基本料(平成20年~)の概要

基本料施設基準診療報酬点数
療養病棟入院基本料A~E看護配置 25:1
看護補助配置 25:1
1,709点 ~ 750点

ただし、医療区分1かつADL区分3の場合については、885点で据え置かれました。

平成18年の改定時と比較して、診療報酬点数は引き下げられました。
・平成18年 診療報酬改定: 1,740点 ~ 764点
・平成20年 診療報酬改定: 1,709点 ~ 750点(表内赤文字)

平成22年 「医療区分・ADL区分に応じた評価を5段階から9段階へ拡充」

平成22年の診療報酬改定では、医療区分・ADL区分に応じた評価が「5段階から9段階」へ拡充されました。

また、これまで入院基本料は一つだけでしたが、看護配置及び医療区分2・3の患者割合で「療養病棟入院基本料1」と「療養病棟入院基本料2」の二つに分けられました。

医療区分・ADL区分に応じた評価が「5段階から9段階」へ拡充
看護配置と医療区分2・3の割合で「療養病棟入院基本料1」「療養病棟入院基本料2」に分類

療養病棟入院基本料(平成22年~)の概要

基本料施設基準診療報酬点数
療養病棟入院基本料1看護配置 20:1
看護補助配置 20:1
医療区分2・3の患者 8割以上
基本料 A~I
1,758点 ~ 785点
療養病棟入院基本料2看護配置 25:1
看護補助配置 25:1
基本料 A~I
1,695点 ~ 722点

入院基本料が9段階に拡充されたことで入院患者の評価がさらに細分化されました。

平成24年 「診療報酬の引き上げ」

平成24年の診療報酬改定では、栄養管理実施加算、褥瘡患者管理加算を包括化に伴い評価が引き上げられました。

栄養管理実施加算、褥瘡患者管理加算を包括化
評価の引き上げ

療養病棟入院基本料(平成24年~)の概要

基本料施設基準診療報酬点数
療養病棟入院基本料1看護配置 20:1
看護補助配置 20:1
医療区分2・3の患者 8割以上
基本料 A~I
1,769点 ~ 796点
療養病棟入院基本料2看護配置 25:1
看護補助配置 25:1
基本料 A~I
1,706点 ~ 733点

入院時にすでに発生している褥瘡に限って、治療・軽快したあと1ヵ月間は医療区分2を継続して算定可能としました。

平成26年 「診療報酬の引き上げ」

平成26年の診療報酬改定では、消費税の増税に伴い評価が見直されました。

評価の引き上げ

療養病棟入院基本料(平成26年~)の概要

基本料施設基準診療報酬点数
療養病棟入院基本料1看護配置 20:1
看護補助配置 20:1
医療区分2・3の患者 8割以上
基本料 A~I
1,810点 ~ 814点
療養病棟入院基本料2看護配置 25:1
看護補助配置 25:1
基本料 A~I
1,745点 ~ 750点

平成28年 「療養病棟入院基本料2に医療区分の要件を追加」

平成28年の診療報酬改定では、療養病棟入院基本料2の施設基準に、医療区分に関する要件(医療区分2・3の患者 5割以上)が追加されました。

療養病棟入院基本料2の施設基準に
医療区分に関する要件(医療区分2・3の患者 5割以上)を追加

療養病棟入院基本料(平成28年~)の概要

基本料施設基準診療報酬点数
療養病棟入院基本料1看護配置 20:1
看護補助配置 20:1
医療区分2・3の患者 8割以上
基本料 A~I
1,810点 ~ 814点
療養病棟入院基本料2看護配置 25:1
看護補助配置 25:1
医療区分2・3の患者 5割以上
基本料 A~I
1,745点 ~ 750点

医療区分のうち、「酸素療法・うつ状態・頻回な血糖検査」の項目について、きめ細やかな状況を考慮するよう見直されました。

療養病棟入院基本料2の施設基準に、医療区分に関する要件(医療区分2・3の患者 5割以上)が追加されたことによって、入院患者の詳細な状況把握が必要になりました。

平成30年 「療養病棟入院基本料2の人員配置の見直し」

平成30年の診療報酬改定では、看護職員配置 20対1以上を要件とした療養病棟入院基本料に一本化されました。

療養病棟入院基本料2の看護職員配置 25対1以上を廃止
看護職員配置 20対1以上の要件に一本化

療養病棟入院基本料(平成30年~)の概要

基本料施設基準診療報酬点数
療養病棟入院基本料1看護配置 20:1
看護補助配置 20:1
医療区分2・3の患者 8割以上
基本料 A~I
1,810点 ~ 800点
療養病棟入院基本料2看護配置 20:1
看護補助配置 20:1

医療区分2・3の患者 5割以上
基本料 A~I
1,745点 ~ 735点

療養病棟入院基本料2の看護配置、看護補助配置が 20:1になったことで、看護師、看護補助者の補充が必要になり、人員が不足している医療療養病棟は「経過措置」での対応をすることになりました。

その他の改定項目

データ提出

療養病棟入院基本料(200床未満を除く。)について、データ提出が入院料の算定要件に加えられました。

施設基準を満たせない場合に対しての経過措置

経過措置算定要件診療報酬点数
注11に規定する経過措置「看護職員配置 25:1 で 20:1 を満たさない場合」又は「医療区分2・3の患者割合 5割以上を満たさない場合」療養病棟入院基本料2の 90/100
注12に規定する経過措置「看護職員配置 20:1 で 25:1 を満たさない場合」療養病棟入院基本料2の 80/100

令和2年 「注11、注12 経過措置の延長」

令和2年の診療報酬改定では、注11に規定する経過措置評価を見直した上で、経過措置期間が2年間延長されました。

注11に規定する経過措置評価の見直し
経過措置期間を2年間延長

療養病棟入院基本料(令和2年~)の概要

経過措置算定要件診療報酬点数
注11に規定する経過措置「看護職員配置 25:1 で 20:1 を満たさない場合」又は「医療区分2・3の患者割合 5割以上を満たさない場合」療養病棟入院基本料2の 85/100
注12に規定する経過措置「看護職員配置 20:1 で 25:1 を満たさない場合」療養病棟入院基本料2の 80/100

注12に規定する経過措置は、令和2年3月31日限りで終了になりました。

その他の改定項目

適切な意思決定支援

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、適切な意思決定支援に関する指針を定めていることが要件化されました。

データ提出加算

データ提出加算が要件となる入院料が、療養病棟入院基本料を算定する病棟を有する医療機関に拡大されました。

令和4年 「注11 経過措置の延長」

令和4年の診療報酬改定では、注11に規定する経過措置評価を見直した上で、経過措置期間が2年間延長されました。

注11に規定する経過措置評価の見直し
経過措置期間を2年間延長

療養病棟入院基本料(令和4年~)の概要

経過措置算定要件診療報酬点数
注11に規定する経過措置「看護職員配置 25:1 で 20:1 を満たさない場合」又は「医療区分2・3の患者割合 5割以上を満たさない場合」療養病棟入院基本料2の 75/100

その他の改定項目

中心静脈栄養

中心静脈栄養を実施している状態にある患者について、患者の摂食機能または嚥下機能の回復に必要な体制を有していない場合の評価が見直されました。

令和6年 「医療区分・ADL区分による評価を9段階から30分類に拡充」「注11 経過措置の廃止」

医療区分・ADL区分による評価に応じた9段階の療養病棟入院基本料が、疾患・状態に係る3つの医療区分、処置等に係る3つの医療区分、3つのADL区分に基づく27分類、及びスモンに関する3分類の合計30分類の評価に見直されました。

療養病棟入院基本料を合計30分類の評価に見直し

療養病棟入院基本料(令和6年~)の概要

基本料施設基準診療報酬点数
療養病棟入院基本料1看護配置 20:1
看護補助配置 20:1
医療区分2・3の患者 8割以上
入院料 1~30
1,964点 ~ 830点
療養病棟入院基本料2看護配置 20:1
看護補助配置 20:1
医療区分2・3の患者 5割以上
入院料 1~30
1,899点 ~ 766点

その他の改定項目

中心静脈栄養

中心静脈栄養について、患者の疾患及び状態並びに実施した期間に応じた医療区分に見直されました。中心静脈栄養の終了後 7日間に限り、終了前の医療区分で算定可能になりました。

疾患別リハビリテーション料の包括範囲

医療区分、ADL区分ともに「1」である入院料27(従前の入院料I)について、1日につき2単位を超える疾患別リハビリテーション料を包括範囲に含めるようになりました。

注11に規定する経過措置の廃止

医療法に基づく医療療養病床の人員配置標準に係る経過措置の終了を踏まえ、療養病棟入院基本料の注11に規定する経過措置を廃止した上で、廃止される経過措置のうち、入院患者のうち医療区分3の患者と医療区分2の患者との合計が5割以上の要件については、令和6年9月30日までの経過措置になりました。

静脈経腸栄養ガイドライン

療養病棟に入院中の患者に対し、「静脈経腸栄養ガイドライン」等を踏まえた栄養管理に係る説明を実施した上で、新たに経腸栄養を開始した場合に一定期間算定可能な経腸栄養管理加算が新設されました。

診療報酬改定により医療療養病棟に起きた変化の概要

平成12年から令和6年の診療報酬改定によって、療養病棟入院基本料は「出来高算定 or 包括算定」から「包括算定のみ」となり、その後「医療区分・ADL区分での評価による分類」へと変化してきました。

これらの改定で医療療養病棟に起きた変化について、その概要をまとめます。

① 「出来高算定」から「包括算定」に(平成12年~)

平成12年まで療養病棟は「出来高算定」か「包括算定」を選択する算定方法でしたが、平成12年の診療報酬改定によって「包括評価のみの算定方法」に改定されました。

「出来高算定」か「包括算定」のいずれかを選択する算定方式

⇩⇩⇩⇩⇩

包括評価のみの算定方式

「出来高算定」と「包括算定」の違いとは?

出来高算定は、行われた診療行為の診療報酬を加算していく算定方法であり、医療行為の数が増えるほど医療費も増えるため仕組みになっています。

包括算定は、行われた複数の診療行為やサービスを一定の診療報酬として包括的に評価する算定方法であり、包括された診療行為の場合には、定額で算定されるので医療費は増えにくい仕組みになっています。

出来高算定

出来高算定は、医療費の計算において「実際に行われた個々の診療行為(診察、検査、投薬、処置など)に定められた点数をそれぞれ加算していく算定方法」です。

出来高算定では医療行為の数が増えるほど医療費も増加するため、医療機関にとっては診療内容を細かく請求できる一方、患者の自己負担額も膨らんでしまう特徴があります。

包括算定

包括算定は、医療費の計算において「診療行為やサービス内容をまとめて包括的に評価して定額で請求する算定方法」で、医療費における「DPC(診断群分類包括評価)」が代表的です。

DPCでは、診断された病名や治療内容に応じて1日あたりの点数が定められており、それを基に入院医療費を算定する仕組みになっています。

療養病棟は「社会的入院の温床」という問題

療養病棟入院基本料の算定方法が出来高算定から包括算定になったことで、療養病棟の医療費はある程度一定化されることになりました。

ただし、療養病棟入院基本料を算定する医療機関の中には、社会的入院患者(入院する必要のない患者)を入院させて診療報酬を得る病院も多く出現しました。

このことは医療費の増加に繋がることになり、世間からは「療養病棟は社会的入院の温床である」という悪いイメージを持たれることに繋がりました。

医療費を抑制しようと考える厚生労働省にとって、療養病棟の医療費の増加は大きな課題であり、医療費抑制のネックとなっていた「社会的入院をいかに減らすか」を考えるようになりました。

厚生労働省は、医療費抑制のネックとなっていた「社会的入院をいかに減らすか」を取り組みの柱とし、診療報酬改定において、医療区分・ADL区分による評価を用いた入院基本料の導入に踏み切りました。

② 「医療区分・ADL区分」の導入・5段階の入院基本料(平成18年7月~)

療養病棟入院基本料は平成12年から包括評価のみで算定が行われてきましたが、平成18年7月に算定方法が見直され、「医療区分・ADL区分の評価に応じた5段階の入院料」が導入されました。

包括評価のみの算定

⇩⇩⇩⇩⇩

平成18年7月
医療区分・ADL区分に応じた5段階の評価

療養病棟入院基本料A~E

医療区分とADL区分の評価について

医療区分は「入院患者の医療必要度」を評価したものです。

患者の医療必要度によって医療区分1~3で評価され、医療必要度が高いほど医療区分3になるように設定されています。

医療の必要度低い高い
医療区分医療区分1医療区分2医療区分3

ADL区分は「入院患者の介護必要度」を評価したものです。

患者の介護必要度によってADL区分1~3で評価され、介護必要度が高いほどADL区分3になるように設定されています。

介護の必要度低い高い
ADL区分ADL区分1ADL区分2ADL区分3

医療区分1・ADL区分1の評価に近い患者ほど入院の必要性は低く、逆に、医療区分3・ADL区分3の評価に近い患者ほど入院の必要性は高くなります。

「医療区分・ADL区分」による5段階の入院基本料A~E

医療区分1
医療区分2
医療区分3
ADL区分3 ⇨入院基本料D
885点
入院基本料B
1,344点
入院基本料A
1,740点
ADL区分2 ⇨入院基本料E
764点
ADL区分1 ⇨入院基本料C
1,220点

平成18年7月から導入された医療区分・ADL区分による5段階の入院基本料は上記のようなものでした。

新しい点数分類を見て分かるように、最も診療報酬の高い入院基本料A(1,740点)と、最も診療報酬の低い入院基本料E(764点)で、976点もの差があります。

この点数の格差は2倍以上にもなり、社会的入院患者のような医療区分1・ADL区分1の患者を多く入院させている医療機関ほど、収益が下がるように設定されています。

厚生労働省の目的(社会的入院の是正)

厚生労働省は、療養病棟入院基本料に「医療区分・ADL区分による評価」を導入することで、医療区分1に該当する社会的入院患者の診療報酬点数を大幅に引き下げました。

この診療報酬の大幅な引き下げには、多くの療養病棟で行われてきた社会的入院を是正する目的がありました。

この改定によって、「社会的入院患者を減らさない療養病棟」や「医療区分の高い患者を受入れない療養病棟」は、大幅に収入が減ることよって経営が悪化することになりました。

療養病棟入院基本料へ医療区分・ADL区分を導入することは、療養病棟をふるいにかけることによって、診療報酬改定に対応できない医療機関を介護施設(老健施設やケアハウスなど)へ転換させる目的もあり、そのことで医療費を抑制する意図もありました。

【厚生労働省の目的】

医療区分・ADL区分に導入で療養病棟をふるいにかける

⇩⇩⇩⇩⇩

対応できない療養病棟は収入減少

⇩⇩⇩⇩⇩

介護施設(老健施設やケアハウスなど)へ転換

⇩⇩⇩⇩⇩

医療費の抑制

③ 入院基本料を9段階に拡充・2種類の療養病棟入院基本料(平成22年~)

平成18年7月から医療区分・ADL区分の評価に応じた5段階の入院料が療養病棟入院基本料に導入されましたが、その5段階の評価制度は、平成22年に9段階の評価制度に拡充されました。

平成18年7月
医療区分・ADL区分に応じた5段階の評価

療養病棟入院基本料A~E

⇩⇩⇩⇩⇩

平成22年
医療区分・ADL区分に応じた9段階の評価

療養病棟入院基本料A~I

また、看護配置、医療区分2・3患者の割合によって、入院基本料は「療養病棟入院基本料1、療養病棟入院基本料2」の2種類に分割されました。

平成18年7月~
療養病棟入院基本料
25:1配置(医療区分2・3が8割以上の場合は20:1)


⇩⇩⇩⇩⇩

平成22年~
療養病棟入院基本料1 ⇨ 「20:1」「医療区分2・3が8割以上」
療養病棟入院基本料2 ⇨ 「25:1」

「医療区分・ADL区分」による9段階の入院基本料A~I

医療区分1
医療区分2
医療区分3
ADL区分3 ⇨入院基本料G
医療区分1
ADL区分3
入院基本料D
医療区分2
ADL区分3
入院基本料A
医療区分3
ADL区分3
ADL区分2 ⇨入院基本料H
医療区分1
ADL区分2
入院基本料E
医療区分2
ADL区分2
入院基本料B
医療区分3
ADL区分2
ADL区分1 ⇨入院基本料I
医療区分1
ADL区分1
入院基本料F
医療区分2
ADL区分1
入院基本料C
医療区分3
ADL区分1

平成18年7月から導入された医療区分・ADL区分による5段階の入院基本料は、平成22年から上記のように9段階の入院基本料になりました。

入院基本料はA~Iまでの9段階になっていて、入院基本料I(医療区分1・ADL区分1)から入院基本料A(医療区分3・ADL区分3)になるほど診療報酬(入院費用)は高くなるように設定されていました。

入院基本料が低い
(診療報酬が低い)
入院基本料が高い
(診療報酬が高い)
入院基本料I
(医療区分1・ADL区分1)
入院基本料A
(医療区分3・ADL区分3)

入院基本料を「療養病棟入院基本料1、療養病棟入院基本料2」の2種類に分割

平成22年に導入された入院基本料は、看護配置と医療区分2・3の割合によって「療養病棟入院基本料1」と「療養病棟入院基本料2」に分類するものでした。

看護配置が充実し、医療必要度が高い患者を多く入院させている療養病棟であれば、療養病棟入院基本料1の施設基準を満たすことができるようになっていました。

≪療養病棟入院基本料1≫(平成22年)

看護配置 20:1、医療区分2・3が8割以上

医療区分1
医療区分2
医療区分3
ADL区分3 ⇨入院基本料G
934
入院基本料D
1,369
入院基本料A
1,758
ADL区分2 ⇨入院基本料H
887
入院基本料E
1,342
入院基本料B
1,705
ADL区分1 ⇨入院基本料I
785
入院基本料F
1,191
入院基本料C
1,424
≪療養病棟入院基本料2≫(平成22年)

看護配置 25:1

医療区分1
医療区分2
医療区分3
ADL区分3 ⇨入院基本料G
871
入院基本料D
1,306
入院基本料A
1,695
ADL区分2 ⇨入院基本料H
824
入院基本料E
1,279
入院基本料B
1,642
ADL区分1 ⇨入院基本料I
722
入院基本料F
1,128
入院基本料C
1,361

医療療養病棟の変化

平成22年の診療報酬改定によって入院基本料が5段階から9段階に拡充され、看護配置と医療区分2・3の割合によって入院基本料が分割されることになりました。

その結果、必要な看護職員を配置し、医療必要度・介護必要度の高い入院患者を受け入れている療養病棟の収益は増加し、それとは逆に、社会的入院のような医療必要度・介護必要度の低い患者を多く入院させている療養病棟の収益は減少することになりました。


医療必要度・介護必要度の高い患者が多く入院する療養病棟
看護師が多く手厚い看護ができる療養病棟


⇩⇩⇩⇩⇩

療養病棟入院基本料1の基準が取れる
入院基本料Aに近い入院患者が多い状況

⇩⇩⇩⇩⇩

療養病棟の収益は増加する


医療必要度・介護必要度の低い患者が多く入院する療養病棟
社会的入院患者が多い療養病棟
看護配置を満たせない療養病棟


⇩⇩⇩⇩⇩

療養病棟入院基本料2の基準になる
入院基本料Iに近い入院患者が多い状況

⇩⇩⇩⇩⇩

療養病棟の収益は減少する

診療報酬改定に対応するために、多くの医療療養病棟では看護職員の配置を充実させ、医療必要度・介護必要度の高い患者を入院させるように変化していきました。そして、そのような療養病棟の変化は、そこで働く医療従事者のスキルアップにも繋がりました。その結果、多くの医療療養病棟の「医療の質」は大きく高められました。

④ 入院基本料を9段階から30分類に拡充(令和6年6月~)

令和6年6月の診療報酬改定では、それまでの評価体系である「医療区分・ADL区分に基づく9分類の評価」が、「医療区分・ADL区分に基づく30分類の評価」に精緻化されました。

この改定では、これまでの使用されていた医療区分を「疾患・状態」「処置等」の視点で2つに分類したものであり、中心静脈栄養などの項目の改定はありましたが、全体の内容は大きく変化していません。

ただし、入院基本料が9分類から30分類に変わったことで、療養病棟の収益が以前とどのように変化したのかを確認し対応することが必要になりました。


平成18年7月
医療区分・ADL区分に応じた5段階の評価

療養病棟入院基本料A~E

⇩⇩⇩⇩⇩

平成22年
医療区分・ADL区分に応じた9段階の評価

療養病棟入院基本料A~I

⇩⇩⇩⇩⇩

令和6年6月
医療区分・ADL区分に応じた30分類の評価
入院料1~30

平成22年から約15年間使用されてきた9段階の評価が、令和6年の診療報酬改定で30分類の評価に変更になりました。

令和6年の改定で「疾患・状態」「処置等」の視点で2つに分類された医療区分

≪令和6年5月31日までの医療区分≫(医療区分:3分類)
医療区分3疾患・状態 | 処置等
医療区分2疾患・状態 | 処置等
医療区分1医療区分2・3以外

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≪令和6年6月からの医療区分≫(医療区分:9分類)
疾患・状態に係る医療区分×処置等に係る医療区分
医療区分3スモン、常時監視 等医療区分324時間点滴、人工呼吸 等
医療区分2筋ジストロフィー 等医療区分2創傷処置、喀痰吸引 等
医療区分1医療区分2・3以外医療区分1医療区分2・3以外
疾患・処置等 × 処置等医療区分
医療区分3 × 医療区分3医療区分3
医療区分3 × 医療区分2医療区分3
医療区分3 × 医療区分1医療区分3
医療区分2 × 医療区分3医療区分3
医療区分2 × 医療区分2医療区分2
医療区分2 × 医療区分1医療区分2
医療区分1 × 医療区分3医療区分3
医療区分1 × 医療区分2医療区分2
医療区分1 × 医療区分1医療区分1

「 疾患・状態に係る医療区分」と「 処置等に係る医療区分」のいずれか高い方の医療区分になります。

医療区分・ADL区分に応じた30分類の療養病棟入院基本料


医療区分・ADL区分に応じた9段階の評価

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「疾患・状態の医療区分(1~3)」×「処置等の医療区分(1~3)」×「3つのADL区分」に基づく計27分類に、スモンに関する3分類を合わせた計30分類の評価

スクロールできます
処置等
医療区分3
処置等
医療区分2
処置等
医療区分1
疾患・状態
医療区分3
ADL区分3
入院料1
ADL区分2
入院料2
ADL区分1
入院料3
ADL区分3
入院料4
ADL区分2
入院料5
ADL区分1
入院料6
ADL区分3
入院料7
ADL区分2
入院料8
ADL区分1
入院料9
疾患・状態
医療区分2
ADL区分3
入院料10
ADL区分2
入院料11
ADL区分1
入院料12
ADL区分3
入院料13
ADL区分2
入院料14
ADL区分1
入院料15
ADL区分3
入院料16
ADL区分2
入院料17
ADL区分1
入院料18
疾患・状態
医療区分1
ADL区分3
入院料19
ADL区分2
入院料20
ADL区分1
入院料21
ADL区分3
入院料22
ADL区分2
入院料23
ADL区分1
入院料24
ADL区分3
入院料25
ADL区分2
入院料26
ADL区分1
入院料27
スモン ⇨ADL区分3
入院料28
ADL区分2
入院料29
ADL区分1
入院料30

上記の表は、医療区分1を青背景、医療区分2を緑背景、医療区分3を黄色背景で色分けしてあります。

まとめ

療養病棟入院基本料は、平成12年から現在に至るまでの間に「出来高算定or包括算定」⇨「包括算定」⇨「医療区分・ADL区分に応じた5段階の算定」⇨「医療区分・ADL区分に応じた9段階の算定」⇨「医療区分・ADL区分に応じた30分類の算定」と変化しました。

この変化の中で最も大きな事柄は、医療区分・ADL区分が導入されたことでした。

療養病棟入院基本料への医療区分・ADL区分の導入は、社会的入院の温床であった過去の状態を、本当に入院が必要な患者を受け入れる病棟へと大きく改善させることになりました。

そして、そのような療養病棟の変化は、そこで働く医療従事者のスキルアップにも繋がり、その結果、多くの医療療養病棟において「医療の質」が高められることになりました。

これまでの診療報酬改定の経緯を確認できるように、「医療区分・ADL区分の導入」のような大きな改定はないにしても、何かしらの改定が少しずつ行われています。

改定に対して、算定漏れや間違った算定がないようにきちんと対応できるように確認しておきましょう。

改定年度改定内容起こった変化
~平成12年「出来高算定」or「包括算定」
平成12年~包括評価のみの算定‣社会的入院の増加
‣医療費の増加
平成18年7月~医療区分・ADL区分に応じた5段階の評価
‣療養病棟入院基本料A~E
‣社会的入院の是正
‣療養病棟の「医療の質」の向上
平成22年~医療区分・ADL区分に応じた9段階の評価
‣療養病棟入院基本料A~I
‣5段階よりも詳細な分類に変更
療養病棟入院基本料1
‣看護配置 20:1
‣看護補助配置 20:1
‣医療区分2・3の患者 8割以上
‣看護職員数、患者重症度によって診療報酬up
療養病棟入院基本料2
‣看護配置 25:1
‣看護補助配置 25:1
平成28年~療養病棟入院基本料2
‣看護配置 25:1
‣看護補助配置 25:1
‣医療区分2・3の患者 5割以上
‣療養病棟入院基本料2に医療区分の要件追加
平成30年~療養病棟入院基本料2
‣看護配置 20:1
‣看護補助配置 20:1
‣医療区分2・3の患者 5割以上
‣療養病棟入院基本料2の配置条件が変更
令和6年~医療区分・ADL区分に応じた30分類の評価
‣入院料1~30
‣9段階よりも詳細な分類に変更
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