アルドラーゼは、糖を分解してエネルギーを作り出す細胞内の酵素で、特に筋肉や肝臓、脳などに多く含まれています。
組織が損傷すると血中に漏れ出すため、血液検査でアルドラーゼの活性を測定することで、心筋梗塞や筋肉の病気(筋ジストロフィーなど)、肝臓病、悪性腫瘍などの診断や重症度を判断するのに役立ちます。
筋型(A型)、肝型(B型)、脳型(C型)の3種類のアイソザイム(機能が似たタンパク質)が存在し、それぞれ含まれる臓器が異なります。
アルドラーゼ(ALD)基準値
1.7~5.7(IU/L)
目次
アルドラーゼ(ALD)の概要
略称
アルドラーゼ
ALD:aldolase
アルドラーゼの役割
アルドラーゼは嫌気性解糖系酵素のひとつで、通常では次の2つの反応を同時に触媒する作用をもつことが知られています。
果糖 1,6-二リン酸-アルドラーゼ(ALD)
→ ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)+D-グリセロアルデヒド-3-リン酸
果糖 1-リン酸ーアルドラーゼ(ALD)
→ ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)+D-グリセロアルデヒド
主なアイソザイムと分布
骨格筋、心筋、肝臓、脳、赤血球などに多く存在し、全身に広く分布しています。
| アイソザイム | 分布 |
|---|---|
| A型(筋型)(FDP-ALD) | 骨格筋、心筋、脳、胎児組織、癌細胞に多く含まれる |
| B型(肝型)(FIP-ALD) | 肝臓、腎臓、小腸上皮に多く含まれる |
| C型(脳型) | 神経系に多く含まれる |
アルドラーゼ(ALD)の生理的変動
アルドラーゼ活性は、性別、年齢によって影響を受けます。
- 男性は女性より高い。
- 新生児は成人の2~3倍高い。
- 過激な運動・薬剤の使用(交感神経刺激薬、エストロゲン、プロゲステロン、ACTHなど)・アルコール摂取などの影響を受ける。
臨床的な意義
組織損傷の指標
骨格筋、心筋、肝臓、脳などの組織が損傷すると、アルドラーゼが血中に流出して活性が上昇します。
診断への応用
筋肉疾患(Duchenne型筋ジストロフィー、多発性筋炎など)、心筋梗塞、肝硬変、悪性腫瘍などの疾患で血清アルドラーゼ値が上昇することが知られています。
アルドラーゼ(ALD)の異常とその原因
| 高値の場合 | 低値の場合 |
|---|---|
| 筋組織異常 ・多発性筋炎 ・筋ジストロフィー症 ・重症火傷 ・心筋梗塞(初期) 血液疾患 ・白血病 ・溶血性貧血 ・悪性貧血 肝疾患 ・ウイルス性肝炎 ・劇症肝炎 悪性腫瘍 ・肝臓癌 ・転移性肝臓癌 ・脳腫瘍 その他 ・脳血管障害 ・急性精神病 ・急性腎炎 ・甲状腺機能低下症 | ・テイ・サックス(Tay-Sachs)病 ・果糖不耐症 |






