血清蛋白分画(PF)は、血液中のタンパク質をアルブミン、α1グロブリン、α2グロブリン、βグロブリン、γグロブリンなどの成分に分離し、それぞれの量を測定することで様々な病態を診断する検査です。
電気泳動という手法を用いてタンパク質の電気的な移動度を分析し、肝臓病や腎臓病、炎症性疾患、多発性骨髄腫などの診断や病態把握に役立てられます。
血清蛋白分画(PF)の基準値:セルロースアセテート膜がセパラックスSPの場合
| 分画 | % |
|---|---|
| アルブミン | 60.6 ~ 72.0 |
| α1 グロブリン | 1.7 ~ 3.3 |
| α2 グロブリン | 5.8 ~ 10.2 |
| β グロブリン | 5.8 ~ 10.2 |
| γ グロブリン | 14.6 ~ 15.6 |
目次
血清蛋白分画(PF)の概要
血清をセルロースアセテート膜の上に塗布して、pH8.6のベロナール緩衝液で通電すると、蛋白は(ー)に荷電し、陽極に向かって動きだします。
- 血清をセルロースアセテート膜上に塗布
- pH8.6のベロナール緩衝液で通電
- 蛋白は(-)に荷電し、陽極に向かい動き出す。
正常の場合には、「アルブミン、α1グロブリン、α2グロブリン、βグロブリン、γグロブリン」の5つのグループに分画され、各分画が占める割合はほぼ一定に保たれます。
ただ、この割合はいろいろな疾患によって変化します。
| アルブミン分画 | アルブミンほか |
| α1 分画 | α1-アンチトリプシン、α1-リポ蛋白ほか |
| α2 分画 | ハプトグロビン、α2-マクログロビン、セルロプラスミンほか |
| β 分画 | トランスフェリン、ヘモペキシン、β-リポ蛋白ほか |
| γ 分画 | IgG、IgA、IgM、CRPほか |
略称
血清蛋白分画
PF:protein fraction
検査の目的
血清蛋白分画(PF)は、アルブミン値の低下による肝臓病やネフローゼ症候群、γグロブリンの増加による炎症性疾患や多発性骨髄腫など、様々な病気の診断に役立ちます。
また、疾患の鑑別診断に利用され、例えば、多発性骨髄腫では、γ-グロブリンのピークがM蛋白(単クローン性免疫グロブリン)として現れることがあります。
検査の原理
① 電気泳動
血清中に含まれるタンパク質は、それぞれ異なる電荷を持っています。
これに電気を流すことで、タンパク質が異なる速さで移動します。
② 分画
移動度によってタンパク質が異なる領域に分かれるため、アルブミン、αグロブリン、βグロブリン、γグロブリンといった成分に分けることができます。
血清蛋白分画(PF)の異常とその原因
※「↑↑:著増 ・ ↑:増 ・ ↓↓:著減 ・ ↓減」
| Alb | α1 | α2 | β | γ | 疾患 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 蛋白不足型 | ⇩⇩ | ⇩ | 栄養不足、腸の吸収不良、腎不全(末期) | |||
| ネフローゼ型 | ⇩⇩ | ⇧⇧ | ネフローゼ症候群 | |||
| 汎発性肝障害型 | ⇩⇩ | ⇩ | ⇩ | ⇧ | 肝硬変、慢性肝炎などの肝疾患 | |
| 急性炎症ストレス型 | ⇩ | ⇧ | ⇧ | 感染症、外傷、心筋梗塞など | ||
| 慢性炎症 | ⇩ | ⇧ | ⇧ | ⇧ | 慢性感染症、自己免疫病、悪性腫瘍 | |
| 妊娠分画型 | ⇩ | ⇧ | 妊娠 |






