本記事は以下の資料をもとに作成しています。
・医科点数表の解釈(令和6年6月版)社会保険研究所
療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。
そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。
この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。
※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。
あわせて読みたい
「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を解説
医療区分・ADL区分の評価の手引きを解説。評価方法や判断基準を整理し、全体像をわかりやすくまとめています。
目次
医療区分の概要(医科点数表の解釈)
医療区分「経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。
9. 経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養(発熱又は嘔吐を伴う状態に限る。)
| 項目の定義 |
| 経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養が行われており、かつ、発熱又は嘔吐を伴う状態 |
| 評価の単位 |
| 1日毎 |
| 留意点 |
発熱又は嘔吐に対する治療を行っている場合に限る。
連続する7日間を限度とし、8日目以降は該当しないものとする。ただし、一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には、本項目に該当する。 |
語句の説明
- 「経鼻胃管」とは?
-
経鼻胃管は、経鼻経管栄養法のひとつです。
経鼻経管栄養法は、腸は使えるものの口から摂取できない状態が短期間(4週間以内)であると見込まれる患者に使用される栄養補給法です。
口の代わりに消化管にアクセスするための管を用いて経腸栄養剤を投与します。
誤嚥のリスクがない場合は鼻から胃に通す管を用いる「経鼻胃管栄養法」を行います。
一方、誤嚥リスクがある場合は鼻から幽門後(十二指腸・空腸)まで通す管を用いる「経鼻十二指腸栄養法」や「経鼻空腸栄養法」を検討します。
「医療区分の概要」に戻る≫≫
- 「胃瘻」とは?
-
胃瘻は、経瘻孔法(けいろうこうほう)のひとつです。
経瘻孔法は、腸は使えるものの口から摂取できない状態が長期間(4週間以上)に及ぶと見込まれる患者に使用される栄養補給法です。
消化管と外部をつなぐ孔(瘻孔)を作り、そこから経腸栄養剤を投与します。
胃に瘻孔を作れば「胃瘻」、十二指腸なら「十二指腸瘻」、空腸なら「空腸瘻」となります。
経瘻孔法を行う場合は、手術をして瘻孔を造設する必要があります。
胃瘻を作る手段として比較的負担の少ないPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)がよく行われており、PEGが行いにくい場合は外科的胃瘻造設術、もしくは首から食道へチューブを挿入し、胃まで送り届けるPTEG(経皮経食道胃菅挿入術)が選択されます。
空腸瘻では、PEG-J(経胃瘻的空腸瘻)や外科的空腸瘻造設術が行われます。
「医療区分の概要」に戻る≫≫
- 「経腸栄養」とは?
-
栄養補給法の種類は、腸から栄養を摂取する経腸栄養(EN)と血管から栄養を摂取する静脈栄養(PN)に大きく分けられます。
そして、さらに経腸栄養(EN)は、口から飲食物を摂取する経口栄養と、経鼻経管栄養法・経瘻孔法によって栄養を摂取する経管栄養に分けられます。
| 経腸栄養(EN:enteral nutrition) |
|---|
| 経口栄養 | 経口的栄養補充(ONS) |
| 経管栄養 | <経鼻経管栄養法> ・経鼻胃管 ・経鼻十二指腸管 ・経鼻空腸管 <経瘻孔法> ・胃瘻、空腸瘻、十二指腸瘻 ・経食道胃管 |
| 経静脈栄養(PN:parenteral nutrition) |
|---|
末梢静脈栄養(PPN) 中心静脈栄養(TPN) |
本項目は「経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養」となっているので、経口栄養による経腸栄養は含まれず、経管栄養による経腸栄養のみが該当することになります。
「医療区分の概要」に戻る≫≫
- 「かつ」とは?
-
「かつ」は、その前後両方の要件を満たすべきことを表す接続詞です。
「AかつB」であれば、「AとBのどちらも」という意味になります。
本項目では、「経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養が行われており、かつ、発熱又は嘔吐を伴う状態」とあるので、以下のような意味になります。
| 状態・症状 | 該当・非該当 |
|---|
| 経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養 + 発熱(治療) | 該当 |
| 経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養 + 嘔吐(治療) | 該当 |
| 経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養 + 発熱、嘔吐なし | 非該当 |
「医療区分の概要」に戻る≫≫
- 「発熱」とは?
-
日本の感染症法において「発熱を37.5℃以上、高熱を38℃以上」と定義されています。
また、体温は早朝に低く夕方に高くなるため、1日の中で約1℃の日内変動があると言われ、学術的にハリソン内科学では「午前の体温で37.2℃以上、午後の体温で37.7℃以上を発熱と定義する」と記載されています。
加えて、平熱が低い人の場合には、感染症法やハリソン内科学で定義された体温より低くても、発熱と捉える必要があります。
「医療区分の概要」に戻る≫≫
評価の要点
【処置等に係る医療区分⑨】経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養(発熱又は嘔吐を伴う状態に限る。)
| 分類 | 医療区分 | 算定期間 | 評価の単位 |
|---|
| 処置等 | 医療区分2 | 期間に限りあり | 連続7日を限度 |
経腸栄養(経鼻胃管や胃瘻など)が行われていることを確認します。
その上で、発熱や嘔吐を伴い、その治療を行っている場合に本項目に該当します。
評価票の記入は、連続7日間までになり8日目以降は記入できません。
一旦非該当になった後に、再び病状が悪化して該当要件を満たしていれば、評価票への記入が可能になります。
医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。
評価のチェックポイント
評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。
| 該当要件のチェックポイント |
|---|
| ☐ | 経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養が行われている。 |
| ☐ | 経鼻胃管や経腸栄養に加えて、発熱または嘔吐を伴う状態である。 |
| ☐ | 現に経腸栄養を実施している旨、経過記録より判断可能である。 |
| ☐ | 発熱または嘔吐に対する治療(氷枕・水分補給も含む)を実施し、診療録に記載している。 |
| ☐ | 各種の検査を実施して、発熱・嘔吐の原因を明確にする努力をしている。 |
| ☐ | 絶食期間中は、経腸栄養が行われていないため、当項目は該当しない。(絶食の時点で一旦非該当として取り扱う) |
| 算定期間のチェックポイント |
|---|
| ☐ | 1日毎に評価を行っている。 |
| ☐ | 連続した7日間を超えて24時間持続点滴を行っていても、8日目以降は該当しない。 |
| ☐ | 一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には該当になる。 |
評価の考え方・記入例
評価票の考え方と記入例です。
経鼻胃管の患者が発熱、その後10日間、治療継続中
11/1に経鼻胃管の患者が発熱。
その後10日間、治療継続中。
| 日付 | 症状・治療 | 評価票 |
|---|
| 11/1 | 経鼻胃管の患者が発熱、治療開始 | 該当(1日目) |
| 11/2 | 発熱に対する治療 | 該当(2日目) |
| 11/3 | 発熱に対する治療 | 該当(3日目) |
| 11/4 | 発熱に対する治療 | 該当(4日目) |
| 11/5 | 発熱に対する治療 | 該当(5日目) |
| 11/6 | 発熱に対する治療 | 該当(6日目) |
| 11/7 | 発熱に対する治療 | 該当(7日目) |
| 11/8 | 発熱に対する治療 | 非該当(8日目) |
| 11/9 | 発熱に対する治療 | 非該当(9日目) |
| 11/10 | 発熱に対する治療 | 非該当(10日目) |
連続した7日間を超えた場合には、8日目以降は「非該当」になります。
出典:
・医科点数表の解釈(令和6年6月版)社会保険研究所