「医療区分⑧:せん妄に対する治療」をわかりやすく解説|【処置等に係る医療区分:医療区分2】

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療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。

そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。

この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。

※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。

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参考図書


目次

医療区分の概要(医科点数表の解釈)

医療区分「せん妄に対する治療」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


8. せん妄に対する治療

項目の定義
せん妄に対する治療を実施している場合(せん妄の症状に対応する治療を行っている場合に限る。)
評価の単位
1日毎
留意点
「せん妄の兆候」は、以下の6項目のうち「この7日間は通常の状態と異なる」に該当する項目が1つ以上ある場合、本項目に該当するものとする。

a.注意がそらされやすい
b.周囲の環境に関する認識が変化する
c.支離滅裂な会話が時々ある
d.落ち着きがない
e.無気力
f.認知能力が1日の中で変動する


7日間を限定とし、8日目以降は該当しないものとする。ただし、一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には、本項目に該当する。

語句の説明

「せん妄」とは?

せん妄とは、身体的な原因(脱水、感染、薬物、手術など)によって引き起こされる、一過性の意識障害と精神症状を伴う状態です。

突然発症し、集中力の低下、見当識障害(時間や場所がわからなくなること)、幻覚、妄想、興奮などの症状が見られます。

原因を取り除けば回復する可能性が高い病態であり、認知症とは区別されます。

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「せん妄の症状に対応する治療」とは?

せん妄の症状に対応する治療は、症状に対して以下のことが行われます。

  • 原因となっている身体疾患の治療
  • 症状を緩和するための環境調整
  • 薬物療法

具体的には、感染症などの原因疾患の治療、原因となっている薬の見直し、静かで安心できる環境整備、睡眠・覚醒リズムの調整、水分補給や疼痛管理などを行います。

重度の興奮がある場合は、医師の判断で抗精神病薬などの薬剤が使われることもあります。

根本的な原因の治療
原因疾患の特定と治療体の病気(感染症など)が原因であれば、その疾患を治療します。
薬の見直し原因となっている薬剤がある場合は、中止や変更を検討します。
環境調整と身体的ケア
安心できる環境整備・刺激の少ない、静かな環境をつくります。
・危険なものを片付け、安全を確保します。
・住み慣れた環境を急激に変えないように配慮します。
生活リズムの調整・昼間に日光を浴び、夜間は照明を暗くするなどして、昼夜のメリハリをつけます。
・時計やカレンダーを近くに置き、時間や曜日の感覚を保てるようにします。
身体的ケア・脱水や便秘に注意し、適切な水分補給を行います。
・痛みの管理を徹底します。痛みがあるとせん妄になりやすいためです。
精神的ケア
本人の話をよく聞く不安や恐怖を感じている本人の話を否定せずに聞き、気持ちに寄り添います。
安心させる声かけ名前を呼んだり、そばにいることを伝えたりして、安心させます。
無理に制止しない興奮を助長しないように、無理に制止せず、様子を観察します。
薬物療法
抗精神病薬興奮が強い場合、医師の判断で使われることがあります。
その他の薬剤睡眠薬の種類を見直したり、不眠時や興奮時に使用する頓服薬を検討したりすることもあります。

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評価の要点

【処置等に係る医療区分⑧】せん妄に対する治療

分類医療区分算定期間評価の単位
処置等医療区分2期間に限りあり連続7日を限度

せん妄に対する治療を実施している状態であることを確認します。

せん妄の兆候は以下の6項目の中で1つ以上の項目が、「7日間、通常の状態と異なる場合」に本項目に該当するものとします。

a.注意がそらされやすい。
b.周囲の環境に関する認識が変化する。
c.支離滅裂な会話が時々ある。
d.落ち着きがない。
e.無気力
f.認知能力が1日の中で変動する。

評価票の記入は、連続7日間までになり8日目以降は記入できません。

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

該当要件のチェックポイント
せん妄の診断が適切に行われている。
「せん妄の兆候」に該当する診断根拠、患者の訴え、診察所見、治療方針について経過記録に記載している。
せん妄に対しての治療が適切に行われている。
判定の確認は医師が行っている。
算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。
7日間を限度とし、8日目以降は該当しないものとする。
一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には該当になる。                        

せん妄と認知症の振り分け

せん妄と認知症は合併することもあり症状の区別が難しいのですが、せん妄の評価をするにあたり、認知症と混同しないように注意することが必要です。

せん妄は、主に「注意力が障害される」ことを特徴とします。

突然発生して精神機能の変動をもたらしますが、原因(身体の病気や薬剤など)を特定することで改善する可能性があります。

高齢者の場合は、急な入院による環境の変化や、高熱・転倒などのイベント後などに発生しやすくなります。

認知症は、主に「記憶力が障害される」ことを特徴とします。

症状は比較的安定していますが、緩やかに進行して根治が難しいとされています。

特徴せん妄認知症
発症突然、急激緩徐、徐々に進行
意識状態混乱、もうろうとしている清明(意識ははっきりしている)
症状の変動1日のうちで大きく変動する(特に夜間悪化しやすい)比較的安定している
主な障害注意力障害が目立つ記憶障害が目立つ
原因身体の病気、手術、薬剤など、明確な原因があることが多い脳の神経細胞の変性など、原因は多様
予後原因が取り除かれれば改善する可能性がある(可逆的)基本的に不可逆的で、進行していく(進行性)

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