「医療区分⑱:酸素療法(密度の高い治療)」をわかりやすく解説|【処置等に係る医療区分:医療区分3】

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療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。

そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。

この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。

※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。

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参考図書


目次

医療区分の概要(医科点数表の解釈)

医療区分「酸素療法(密度の高い治療を要する状態に限る。)」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


18. 酸素療法(密度の高い治療を要する状態に限る。)

項目の定義
酸素療法を実施している場合であって、次のいずれかに該当するもの

・常時流量3L/分以上を必要とする場合
肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合
NYHA重症度分類のⅢ度又はⅣ度の心不全の状態である場合
評価の単位
1日毎
留意点
酸素非投与下において、安静時、睡眠時、運動負荷いずれかで動脈血酸素飽和度が90%以下となる状態であって、以下の(1)又は(2)の状態。

(1) 安静時に3L/分未満の酸素投与下で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できないが、3L/分以上で維持できる状態。

(2) 安静時に3L/分未満の酸素投与下で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できる状態であって、肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合又はNYHA重症度分類のⅢ度若しくはⅣ度の心不全の状態である場合。なお、肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合については、点滴を実施した日から30日間まで、本項目に該当するものとする。

なお、毎月末において当該酸素療法を必要とする状態に該当しているか確認を行い、その結果を診療録等に記載すること。

語句の説明

「酸素療法」とは?

酸素療法とは、空気中の酸素濃度(約21%)よりも高い濃度の酸素を吸入することで、血液中の酸素不足を改善する治療法です。

低酸素症の患者さんの呼吸困難を和らげ、臓器への酸素供給を促し、心臓や肺への負担を軽減することを目的とします。

主に、鼻カニューラやマスクなどの器具を使用し、病状に応じて低流量システムや高流量システムが使い分けられます。

酸素療法の目的
低酸素状態の改善肺などの機能障害により、体内の酸素濃度が低下した状態(低酸素症)を改善します。
肺や心臓の負担軽減低酸素血症による心拍数増加などを抑制し、肺や心臓への負担を軽減します。
酸素マスク・酸素マスクは、口と鼻を覆うように設置します。
・5L/分未満だとマスク内に呼気が滞留し、二酸化炭素を再呼吸する危険があるため、酸素流量が5L/分以上での使用が望ましいです。
鼻カニューラ・鼻カニューレは、鼻に管を差し込むように設置します。
・酸素流量が6L/分以上では、頭痛や鼻粘膜の乾燥を引き起こす可能性があるため推奨されません。

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「肺炎等急性増悪」とは?

肺炎等急性増悪とは、肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患が、急激に悪化する状態を指します。

呼吸器疾患で肺の機能が低下すると、体に必要な酸素を取り込めなくなるため、酸素状態が悪くなります。

酸素状態が悪くなる原因
肺の病気肺胞の破壊(COPD)、炎症や痰による換気不良(肺炎)、肺組織の線維化(間質性肺炎)などによって、酸素の取り込みが不十分になります。
心臓の病気心不全によって全身に酸素を運ぶ血液が十分に行きわたらないため、酸素不足になります。
その他の病気肺の血管が詰まる肺塞栓症や、睡眠中に呼吸が一時的に止まる睡眠時無呼吸症候群なども原因となります。

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「NYHA重症度分類」とは?

NYHA重症度分類は、心不全患者の自覚症状に基づき心臓の機能をI度からIV度までに分類するものです。

NYHA分類は、ニハ分類やナイハ分類と呼ばれ、ニューヨーク心臓協会が定めた心不全の症状の程度の分類になります。

「NYHA」は、New York Heart Associationの略です。

NYHA重症度分類
I度(無症候性)・心疾患はあるが、身体活動の制限はない。
・日常的な身体活動で、疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛などを起こさない。
II度(軽症)・軽度から中等度の身体活動で症状が出る。
・安静時には症状はない。
・階段や坂道を上るといった比較的強い労作で、疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛などが生じる。
・身体活動に軽度制限がある「IIs度」と中等度制限がある「IIm度」に分けることもある。
III度(中等度~重症)・高度の身体活動制限が必要。
・安静時には症状はないが、平地を歩くといった軽い労作でも症状が出る。
IV度(難治性)・心疾患によるいかなる身体活動も制限される。
・安静時にも心不全症状や狭心痛が存在する。
・わずかな身体活動でも症状が悪化する。

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「動脈血酸素飽和度」とは?

動脈血酸素飽和度とは、動脈血中のヘモグロビン(酸素を運ぶタンパク質)のうち、どれくらいの割合が酸素と結合しているかを示す数値(%)です。

これは、体内に十分な酸素が供給されているかどうかの重要な指標であり、一般的に健康な人の正常値は96~99%です。

パルスオキシメーターという機器で皮膚を通して非侵襲的に測定されることが多く、その場合は「SpO2」と表記されます。

SpO2値(%)状態対応
96 ~ 99正常問題なし
91 ~ 95軽度の低下(要注意)安静にして深呼吸し、再測定する
90以下低い(危険な可能性)医師の指示に従い、医療機関に連絡または受診する

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評価の要点

【処置等に係る医療区分⑱】酸素療法(密度の高い治療を要する状態に限る。)

分類医療区分算定期間評価の単位
処置等医療区分3期間に限りなし1日毎

酸素非投与下の「安静時・睡眠時・運動負荷」のいずれかで、動脈血酸素飽和度が90%以下となる状態を確認します。

その上で、(1)または(2)の状態に限ります。

(1)安静時に3L/分未満の酸素投与下で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できないが、3L/分以上で維持できる。

(2)安静時に3L/分未満の酸素投与下で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できる状態で、以下のいずれかの状態。

  • 肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合
  • NYHA重症度分類のⅢ度、若しくはⅣ度の心不全の状態である場合

※肺炎等急性増悪により点滴治療をした場合は、点滴の実施日から30日間は本項目に該当します。

毎月末に当該酸素療法を必要とする状態の確認を行い、その結果を診療録等に記載します。

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

該当要件のチェックポイント
酸素療法をしていない状態で、安静時、睡眠時、運動負荷時のいずれかで、動脈血酸素飽和度90%以下になり、そのことを診療録に記載している。
動脈血酸素飽和度90%以下の測定結果が伴わない場合でも、検査の結果、臨床症状によって医師が直ちに酸素療法の必要性を認め、酸素投与を開始した場合は、以下によって該当を検討する。
・患者の状態に合わせて適切な指示が出されている
・動脈血酸素飽和度を最低1日1回測定して酸素量の調整ができている
以下のいずれかに該当する。
・常時流量3L/分以上を必要とする
・肺炎等急性増悪により点滴治療を実施している
・NYHA重症度分類のⅢ度またはⅣ度の心不全の状態である
毎月末において酸素療法を必要とする状態に該当するかを確認し、診療録等に記載している。
動脈血酸素飽和度の測定が毎日実施できており、フローシートに測定値の入力がされている。
医師が診療録に診断根拠、治療方針の記載をしている。
算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。                                     

「医療区分⑱・医療区分㊶」の振り分け

「医療区分⑱・医療区分㊶」の振り分けについてまとめます。

① 酸素投与が必要な状態であることを確認

「医療区分⑱・医療区分㊶」のどちらにおいても、安静時・睡眠時・運動負荷時のいずれかで動脈血酸素飽和度が90%以下になる状態であることを確認します。

「安静時 + 酸素療法なし」   ⇨  動脈血酸素飽和度が90%以下になる
「睡眠時 + 酸素療法なし」   ⇨  動脈血酸素飽和度が90%以下になる
「運動負荷時 + 酸素法なし」  ⇨  動脈血酸素飽和度が90%以下になる

毎月末には酸素療法を必要とする状態に該当しているかの確認を行い、診療録等に記載します。

② 「医療区分⑱:酸素療法(高密度を要する)」に当てはまるかを確認

酸素投与が必要な状態である場合には、「医療区分⑱:酸素療法(密度の高い治療を要する)」に当てはまるかを確認し、医療区分⑱と医療区分㊶の振り分けを行います。

「医療区分⑱:酸素療法(密度の高い治療を要する)」に当てはまらない場合には、「医療区分㊶:酸素療法(密度の高い治療を要する状態を除く)」に該当することになります。

酸素投与が必要な状態を確認
(安静時・睡眠時・運動負荷時のいずれかで動脈血酸素飽和度90%以下)

⇩⇩⇩⇩⇩⇩

「医療区分⑱:酸素療法(高密度を要する)」に該当するかを確認 ⇨ 該当:医療区分⑱

⇩⇩⇩ 非該当 ⇩⇩⇩

医療区分⑱に該当しない場合には「医療区分㊶:酸素療法(密度の高い治療を要する状態を除く)」に該当

「医療区分⑱:酸素療法(高密度を要する)」の該当要件

「医療区分⑱:酸素療法(高密度を要する)」の該当要件は、以下の①または②の状態です。

  • 安静時に、3L/分以上で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できる。
  • 安静時に、3L/分未満で動脈血酸素飽和度90%以上を維持できるが…以下のいずれかの場合
    • 肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合
    • NYHA重症度分類のⅢ度若しくはⅣ度の心不全の状態である場合

※「②」において、肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合には、点滴を実施した日から30日間まで本項目に該当する。

酸素投与が必要な状態だが、上記「医療区分⑱」に該当しない場合には、「医療区分㊶:酸素療法(密度の高い治療を要する状態を除く)」に該当します。

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