「医療区分㊲:うつ症状に対する治療」をわかりやすく解説|【処置等に係る医療区分:医療区分2】

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療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。

そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。

この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。

※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。

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参考図書


目次

医療区分の概要(医科点数表の解釈)

医療区分「うつ症状に対する治療」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


37. うつ症状に対する治療

項目の定義
うつ症状に対する治療(精神保健指定医の処方によりうつ症状に対する薬を投与している場合、入院精神療法精神科作業療法及び心身医学療法など、「診療報酬の算定方法」別表第一第2章第8部の精神科専門療法のいずれかを算定している場合に限る。)
評価の単位
1日毎
留意点
「うつ症状」は、以下の7項目のそれぞれについて、うつ症状が初めてみられた日以降において、3日間のうち毎日観察された場合を2点、1日又は2日観察された場合を1点として評価を行う。

a.否定的な言葉を言った
b.自分や他者に対する継続した怒り
c.現実には起こりそうもないことに対する恐れを表現した
d.健康上の不満を繰返した
e.たびたび不安、心配事を訴えた
f.悲しみ、苦悩、心配した表情
g.何回も泣いたり涙もろい


本評価によって、3日間における7項目の合計が4点以上であり、かつ、うつ症状に対する治療が行われている場合に限る。

なお、医師を含めた当該病棟(床)の医療従事者により、原因や治療方針等について検討を行い、治療方針に基づき実施したケアの内容について診療録等に記載すること。

語句の説明

「うつ症状」とは?

うつの症状とは、気分の落ち込みや意欲の低下といった精神的なものと、不眠、食欲不振、疲労感などの身体的なものの両面で現れるものです。

具体的には、悲しさやゆううつ感、何事にも興味がわかない、疲れやすい、集中力や判断力の低下、自分を責める気持ちなどが挙げられます。

これらの症状が2週間以上続き、日常生活に支障をきたす場合はうつ病の可能性があり、専門家への相談が必要です。

精神的な症状
気分の落ち込み悲しい、ゆううつ、気分が晴れない
意欲の低下何もする気が起きない、楽しめない
不安・焦燥感理由もなく強い不安を感じたり、イライラしたりする
思考力・集中力の低下集中力がなくなり、判断力が鈍る
自己評価の低下根拠なく自分を責める、自分には価値がないと感じる
死への思い死にたいと考えるようになる
身体的な症状
疲労感・倦怠感疲れやすさ、元気がない、体がだるい
睡眠の問題眠れない(特に朝早く目が覚める)
食欲の問題食欲がない、体重の減少、または過食になることもある
その他の身体的不調頭痛、めまい、胃の不快感、動悸、便秘・下痢など

「うつ症状に対する治療」の医療区分の項目では、以下の7項目について評価をするように留意点にあります。

a.否定的な言葉を言った
b.自分や他者に対する継続した怒り
c.現実には起こりそうもないことに対する恐れを表現した
d.健康上の不満を繰返した
e.たびたび不安、心配事を訴えた
f.悲しみ、苦悩、心配した表情
g.何回も泣いたり涙もろい

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「精神保健指定医」とは?

精神保健指定医とは、精神科医療において、患者本人の意思によらない入院や行動制限(隔離・身体拘束)などの重要な判断を行う権限を持つ、厚生労働大臣が指定する公的な資格(国家資格)を持つ医師です。

そのため、精神保健指定医の資格は学会が認定する「専門医」資格とは異なり、取得するには以下の要件を満たす必要があります。

  1. 5年以上の診断または治療に従事した経験(うち3年以上は精神障害の診断または治療に従事)
  2. 厚生生労働大臣が定める一定の精神障害に関する診断・治療経験
  3. 厚生労働大臣の登録を受けた者が行う研修の修了
  4. ケースレポートの提出と審査(書面審査および口頭試問) 

精神保健指定医の制度や関連情報については、厚生労働省のウェブサイトで詳細を確認できます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/seishinhokenshiteii.html

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「うつ症状に対する薬」とは?

うつ症状に対する薬とは、脳内の神経伝達物質のバランスを整え、気分の落ち込みや意欲の低下といったうつ症状を改善する「抗うつ薬」が中心です。

症状に応じて、不安感を和らげる「抗不安薬」や眠りを助ける「睡眠薬」なども使われます。

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「入院精神療法」とは?

入院精神療法とは、入院中の精神疾患患者に対して、精神科医が一定の計画に基づき心理的な働きかけを行い、不安や葛藤を取り除き、精神的な改善を図る治療法です。

具体的には、医師による話の傾聴や助言、カウンセリング、集団での対人関係訓練など、様々な心理的アプローチを組み合わせて行われます。

目的は、病状の改善、自己洞察の深化、そして社会生活への復帰を促すことです。

入院精神療法の主な内容
対話と傾聴医師や看護師、精神保健福祉士、公認心理師などが患者の話を丁寧に聞き、悩みや心配事について助言を行います。
集団精神療法同じ悩みを持つ患者同士が、集団での対人関係のやり取りを通じて、対人場面での不安や葛藤を減らし、関係性を改善していくことを目指します。
生活指導規則正しい生活リズムを整えるために、食事、睡眠、衛生管理などについて指導します。
作業療法精神科作業療法士が、手工芸、絵画、園芸、スポーツ、音楽などの活動プログラムを個別に作成し、自己管理能力の向上や社会生活機能の回復を支援します。
環境調整退院後の生活を見据え、必要なサービスや療養環境の調整などを行います。

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「精神科作業療法」とは?

精神作業療法は、精神疾患などによって生活に困難を抱えている方に対し、作業活動(創作活動、レクリエーション、調理、運動など)を通して「自分らしい生活」を取り戻せるように支援する、リハビリテーション医療の一つです。

精神症状の安定、生活スキルの向上、社会復帰などを目的とし、作業療法士が個々の患者の希望やペースに合わせてプログラムを組みます。

主な目的
精神症状の安定妄想や幻覚、気分の落ち込みなどの症状を和らげます。
日常生活能力の向上食事や買い物、掃除、金銭管理など、自立した生活を送るためのスキルを養います。
社会適応能力の回復他者との交流や協調性を育み、社会生活への準備をします。
生きがいや楽しみの発見趣味や活動を通して、人生を豊かにする時間を持つことを目指します。
具体的な活動例
創作活動編み物、絵画、木工、園芸など。
運動・レクリエーション体操、ゲーム、音楽、散歩、スポーツなど。
日常生活関連活動料理、買い物、公共交通機関の利用、家事など。
集団活動グループでの料理や掃除、演劇、話し合いなど。

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「心身医学療法」とは?

心身医学療法とは、身体の症状と心理的・社会的要因との関連を明らかにし、心と体の両面から治療することで、症状の改善や回復を目指すアプローチです。

具体的には、認知行動療法、自律訓練法、交流分析などの心理療法と、必要に応じて薬物療法を組み合わせ、患者を全人的に診ていきます。

全人的とは、人や物事を体や精神といった一部ではなく、人格や社会的立場など、あらゆる側面を総合的に捉えるさまを意味します。

心身医学療法の特徴
心身相関を重視する心理的なストレスが身体の病気に影響を与える、あるいは身体の不調が心の状態に影響を与えるといった、心と体の相互作用を重視します。
心身症の治療に用いられる主に、発症や経過に心理社会的な要因が深く関与する「心身症」の患者に対して行われます。
全人的な視点身体面だけでなく、心理面、行動面、さらには社会的な側面を含めて患者を統合的に診察し、治療します。
複数の治療法を組み合わせる認知行動療法や自律訓練法などの心理療法に加え、薬物療法を併用することもあります。

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「「診療報酬の算定方法」別表第一第2章第8部の精神科専門療法」とは?

「診療報酬の算定方法」別表第一第2章第8部「精神科専門療法」は、精神科医療における様々な専門的治療の費用を定める区分です。この区分は主に第1節「精神科専門療法料」と第2節「薬剤料」で構成されています。

概要
通則精神科専門療法では、薬剤を使用しない場合は第1節の所定点数のみを算定し、薬剤を使用した場合は第1節と第2節の点数を合算して算定します。
対象特に規定する場合を除き、精神科を標榜する保険医療機関において算定されます。

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評価の要点

【処置等に係る医療区分㊲】うつ症状に対する治療

分類医療区分算定期間評価の単位
処置等医療区分2期間に限りなし1日毎

うつ症状の治療をしていることを確認します。

うつ症状に対しての治療は、下記のいずれかに限ります。

  • 精神保健指定医の処方によりうつ症状に対する薬の投与している場合
  • 入院精神療法、精神科作業療法及び心身医学療法などのいずれかを算定している場合

うつ症状の治療に加えて、定められた7項目について評価を行います。

a.否定的な言葉を言った
b.自分や他者に対する継続した怒り
c.現実には起こりそうもないことに対する恐れを表現した
d.健康上の不満を繰返した
e.たびたび不安、心配事を訴えた
f.悲しみ、苦悩、心配した表情
g.何回も泣いたり涙もろい

評価は3日間について行い、毎日観察された場合を2点、1日・2日観察された場合を1点として評価します。

そして、3日間における7項目の合計が4点以上であることを確認し、その上で、うつ症状に対しての治療が行われている場合に限り、本項目に該当します。

うつ症状に対しては、医師を含めた医療従事者によって、原因や治療方針等について検討を行います。

検討内容と実施したケアの内容を診療録等に記載します。

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

該当要件のチェックポイント
うつ症状に対する治療を実施している状態である。           
うつ症状の診断が精神保健指定医により適切に行われている。
うつ症状と診断された根拠と治療の経過について記録している。
7項目の評価の3日間の合計が4点以上であり、うつ症状に対する治療が行われている。         
算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。                                     

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