「医療区分㊱:末梢循環障害による下肢末端の開放創に対する治療」をわかりやすく解説|【処置等に係る医療区分:医療区分2】

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療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。

そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。

この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。

※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。

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参考図書


目次

医療区分の概要(医科点数表の解釈)

医療区分「末梢循環障害による下肢末端の開放創に対する治療」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


36. 末梢循環障害による下肢末端の開放創に対する治療

項目の定義
末梢循環障害による下肢末端開放創に対する治療(以下の分類にて第2度以上に該当する場合に限る。)

第1度:皮膚の発赤が持続している部位があり、圧迫を取り除いても消失しない(皮膚の損傷はない)
第2度:皮膚層の部分的喪失:びらん、水疱、浅いくぼみとして表れる
第3度:皮膚層がなくなり潰瘍が皮下組織にまで及ぶ。深いくぼみとして表れ、隣接組織まで及んでいることもあれば、及んでいないこともある
第4度:皮膚層と皮下組織が失われ、筋肉や骨が露出している
評価の単位
1日毎
留意点

語句の説明

「末梢循環障害」とは?

末梢循環障害は、手足の末梢血管に動脈硬化などが原因で血流が悪くなる状態です。

主な症状は、手足の冷感、しびれ、痛み、そして歩行時に足が痛くなる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」で、進行するとじっとしていても痛みが出たり(安静時痛)、皮膚の潰瘍や壊死を起こすこともあります。

糖尿病や高血圧、高脂血症、喫煙などが原因となり、心臓や脳の動脈硬化につながるリスクも高いため、早期の受診が重要です。

主な症状
冷感、しびれ、痛み手足の冷えやしびれ、ピリピリとした痛み。
間欠性跛行歩いているとふくらはぎなどが痛くなり、しばらく休むと治まるが、また歩き始めると痛む症状。
安静時痛病気が進行すると、じっとしていても足が痛む。
皮膚のただれ、潰瘍、壊死重症化すると、傷が治りにくくなり、組織が死んでしまう。
原因
動脈硬化血管が硬くなり、狭くなったり、詰まったりする。
生活習慣病糖尿病、高血圧、高脂血症などが動脈硬化を進行させる。
喫煙血管を縮め、血流を悪化させる。

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「下肢末端」とは?

「下肢末端」は、足の先や足指、足首などの、脚の最も末端の部分を指します。

この部位には、末梢神経障害や末梢動脈疾患(PAD)など、血行不良や神経の傷によって冷え、しびれ、痛みなどの症状が起こりやすい特徴があります。

下肢末端の主な疾患と症状
末梢動脈疾患(PAD)原因:動脈硬化により血管が細くなったり詰まったりして血行が悪くなる病気。
症状:歩行時のしびれや痛み、冷感、進行すると歩行困難や安静時痛などが生じることがあります。
末梢神経障害原因:糖尿病、ビタミン欠乏、ストレスなど、末梢神経が傷つくことによって起こります。
症状:しびれ、痛み、感覚異常などがあります。
末端冷え性原因:血液の循環が悪くなることで、手足の末端だけが冷たく感じる状態です。
症状:手足の冷感。体温自体は正常な場合も多いです。

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「開放創」とは?

「開放創(かいほうそう)」とは、皮膚や皮下組織が断裂し、外部に開いた状態の傷を指します。

例としては、擦り傷、切り傷、刺し傷、火傷などがあります。

閉鎖創(打撲や挫傷など)と区別され、外部からの異物や細菌が侵入しやすいため、適切な処置が必要です。

開放創の種類
切創(せっそう)ナイフなどの鋭いもので切られた傷で、傷口が直線的になります。
割創(かっそう)重い鈍器などがぶつかることで生じ、皮膚が割れたような傷です。
刺創(しそう)釘や木片などの鋭いもので刺された傷で、傷口は小さいものの、深くまで達することがあります。
裂創(れっそう)強い力で皮膚が引き裂かれた傷で、傷口の縁が不規則になります。
挫創(ざそう)鈍的な外力によって皮膚が圧迫され、組織が損傷した状態です。傷の縁は不規則で、深く損傷していることがあります。
 皮創(はくひそう)強い力で皮膚が剥がされてしまった傷です。
 擦過創(さっかそう)擦りむいた傷で、皮膚の表層が損傷します。

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評価の要点

【処置等に係る医療区分㊱】末梢循環障害による下肢末端の開放創に対する治療

分類医療区分算定期間評価の単位
処置等医療区分2期間に限りなし1日毎

末梢循環障害による下肢末端の開放創に対する治療をしていることを確認します。

末梢循環障害による下肢末端の開放創は、本項目に規定された分類で、第2度以上に該当する場合に限ります。

第1度皮膚の発赤が持続している部位があり、圧迫を取り除いても消失しない(皮膚の損傷はない)
第2度皮膚層の部分的喪失:びらん、水疱、浅いくぼみとして表れる
第3度皮膚層がなくなり潰瘍が皮下組織にまで及ぶ。深いくぼみとして表れ、隣接組織まで及んでいることもあれば、及んでいないこともある
第4度皮膚層と皮下組織が失われ、筋肉や骨が露出している

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

該当要件のチェックポイント
末梢循環障害による下肢末端の開放創に対する診断と治療が適切に行われている。            
診療計画を立てて治療を実施している。
診療計画や実施内容が診療録に適切に記載されている。
医師が治癒を確認している。
算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。                                     

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