「医療区分㉞:肺炎に対する治療」をわかりやすく解説|【処置等に係る医療区分:医療区分2】

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療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。

そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。

この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。

※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。

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参考図書


目次

医療区分の概要(医科点数表の解釈)

医療区分「肺炎に対する治療」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


34. 肺炎に対する治療

項目の定義
肺炎に対し画像診断及び血液検査を行い、肺野に明らかな浸潤影を認め、血液検査上炎症所見を伴い、治療が必要な場合
評価の単位
1日毎
留意点

語句の説明

「肺炎」とは?

肺炎とは、細菌やウイルスなどの病原体が肺に感染して炎症を起こした状態です。

主な症状には、発熱、痰の絡む咳、息苦しさなどがあります。

風邪をこじらせて発症することも多く、特に高齢者や体力が低下している人は重症化しやすいため注意が必要です。

また、療養病棟の入院患者では、誤嚥性肺炎にも注意が必要です。

誤嚥性肺炎とは、本来口から食道へ入るべき唾液や食べ物、胃液などが誤って気管に入ってしまい(誤嚥)、そこに含まれる細菌が肺に感染して炎症を起こす肺炎のことです。

嚥下機能の低下した高齢者や神経疾患のある人、口腔内の衛生状態が悪い場合に発症しやすく、特徴的な症状は食事中のむせ込みや咳、発熱、痰の増加です。

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「画像診断」とは?

画像診断とは、X線、CT、MRI、超音波、PETなどの画像検査によって得られた画像から病変の有無や状態を判断する医療技術です。

これらは、体内の状態を視覚的に把握し、がんの早期発見や治療方針の決定、治療効果の判定などに不可欠な役割を果たします。

主な画像診断の種類と特徴
X線検査(レントゲン)X線を照射して体内の影を撮影します。骨折や内臓の損傷、腫瘍の有無などを確認できます。
CT検査X線を利用し、体の輪切り断面を撮影します。単純なX線検査よりも詳細な断面像が得られます。
MRI検査強力な磁気と電波を利用して、X線被曝なく体内の断面像を撮影します。CTでは正常組織との区別がつきにくい臓器のがん診断に有用です。
超音波検査(エコー検査)超音波を体に当て、その反響を画像化します。リアルタイムで体の内部を観察でき、X線被曝がないため、繰り返し検査が可能です。
PET検査微量の放射性物質を注射し、体内で集まる場所を画像化します。がん細胞は活発に活動するため、PETで検出できることがあります。
画像診断の役割
診断補助医師が診断を行うための「目」となり、病変の有無や位置、広がりを確認します。
早期発見健康診断などで行われ、症状が出る前の病気の早期発見に貢献します。
治療方針の決定病変の正確な位置や広がりを把握し、適切な治療方針を立てるための重要な情報を提供します。
治療効果の判定と再発のチェック治療が効果を上げているか、治療後に再発がないかなどを確認します。

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「肺野に明らかな浸潤影」とは?

「肺野に明らかな浸潤影」は、肺に液体や細胞成分が貯留して、レントゲンやCT検査でぼんやりとした白い影として映る所見を指します。

これは、肺炎や気管支炎などの感染症、肺結核、あるいは肺がんの可能性など、様々な病気が原因で起こりえます。

考えられる原因
肺炎、気管支炎など細菌やウイルス、マイコプラズマなどが原因の感染症。
肺がん・肺腫瘍がん細胞が周囲に炎症を引き起こしている場合や、浸潤影が肺がんの兆候である場合がある。
肺結核、非結核性抗酸菌症結核菌や抗酸菌による感染。
サルコイドーシス原因不明の肉芽腫(炎症の塊)ができる病気。
心不全、心臓弁膜症心臓の機能低下により肺に水が溜まる場合がある。

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「血液検査上炎症所見」とは?

血液検査における主な炎症所見は、CRP(C反応性タンパク質)と赤沈(ESR)です。

これらは体内で炎症が起きると増加し、感染症や炎症性疾患の存在を示唆する指標となります。

CRPは炎症が起きてから数時間で上昇し、比較的早く変動する一方、赤沈は慢性的な炎症の評価に適しています。

これらの検査値はあくまで指標であり、炎症の場所を特定することはできません。

正確な診断のためには、自覚症状や他の検査結果と合わせて総合的に判断する必要があります。

CRP(C反応性タンパク質)
役割炎症や組織の破壊が起こると、肝臓で作られて血液中に増加するタンパク質です。
基準値通常は0.3mg/dL未満です。
高値の場合風邪などの軽い炎症でも上昇しますが、3.0mg/dL以上になると細菌感染症や強い炎症を伴う疾患(膠原病、がん、心筋梗塞など)が疑われます。
特徴炎症の程度や治療効果を把握する上で重要な指標です。
赤沈(ESR:赤血球沈降速度)
役割血液中の赤血球が血漿中を沈降する速度を測定します。フィブリノゲンなどの増加を反映し、炎症の強さや病気の活動性を示します。
高値の場合炎症が強い場合に高くなります。関節リウマチなどの慢性炎症の活動性を評価する際に用いられます。
特徴CRPに比べてゆっくりと上昇・下降し、慢性炎症の評価に適しています。

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評価の要点

【処置等に係る医療区分㉞】肺炎に対する治療

分類医療区分算定期間評価の単位
処置等医療区分2期間に限りなし1日毎

肺炎であることを画像診断と血液検査で確認します。

  • 画像診断 ⇨ 肺野に明らかな湿潤影
  • 血液検査 ⇨ 炎症所見

肺炎に対して必要な治療を実施していることを確認します。

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

該当要件のチェックポイント
肺炎の治療を実施している状態である。
画像診断(胸部XP・CT)により、肺野に明らかな浸潤影があることを確認している。           
血液検査上炎症所見を確認し、記録している。
炎症及び改善についての医師の判定記録を確認している。
肺炎に対する治療を実施し、経過を記録している。
抗生物質の使用マニュアルが作成されている。
医師が治癒を確認している。
算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。                                     

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  • 病棟単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
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