「医療区分④:尿路感染症に対する治療」をわかりやすく解説|【処置等に係る医療区分:医療区分2】

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療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。

そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。

この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。

※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。

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参考図書


目次

医療区分の概要(医科点数表の解釈)

医療区分「尿路感染症に対する治療」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


4. 尿路感染症に対する治療

項目の定義
尿沈渣細菌尿が確認された場合、もしくは白血球尿>10/HPF)であって、尿路感染症に対する治療を実施している状態
評価の単位
1日毎
留意点
連続する14日間を限度とし、15日目以降は該当しない。ただし、一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には、本項目に該当する。

語句の説明

「尿沈渣」とは?

尿沈渣(にょうちんさ)とは、尿を遠心分離して得られた沈殿物(固形成分)を顕微鏡で観察する検査です。

遠心分離とは、高速回転によって生じる遠心力を利用して、比重(密度)の異なる物質を分離する技術です。

この検査では、赤血球、白血球、細胞、結晶、細菌などの種類と数を調べることで、腎臓や尿路の病気(腎炎、膀胱炎、結石など)の状態を把握するのに役立ちます。

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「細菌尿」とは?

尿沈渣検査で細菌が検出された状態が細菌尿です。

細菌尿は、尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)が主な原因になります。

症状がある場合と、症状がない「無症候性細菌尿」の場合があり、診断は尿検査(特に尿の定量培養)によって行われます。

採尿時の細菌混入や採尿後の保存状態によっても起こりうるため、結果を正確に判断するには注意が必要です。

細菌尿の主な原因と特徴
尿路感染症膀胱、尿道、前立腺、腎臓などの尿路で細菌が感染・増殖することで起こります。大腸菌が最も一般的な原因菌です。肛門周辺の細菌が尿道から侵入するのが主な感染経路になります。
無症候性細菌尿症状がないにもかかわらず、尿中に細菌が検出される状態です。膀胱カテーテル留置者や高齢者、糖尿病患者などに多く見られます。

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「白血球尿」とは?

尿中の白血球(膿尿)は、尿中に白血球が混じっている状態です。

腎臓から尿路(膀胱、尿管、尿道など)や前立腺に炎症や感染症がある可能性を示唆します。

多くの場合、細菌感染による尿路感染症が原因ですが、白血球のみが検出される「無菌性膿尿」というケースもあります。

主な原因
尿路感染症膀胱炎や腎盂腎炎など、細菌が原因で起こる炎症です。
炎症性疾患腎臓、尿路、前立腺などに起こる炎症全般が考えられます。
結石や腫瘍尿路の結石や腫瘍が原因となることもあります。
アレルギーや薬アレルギー反応や特定の薬剤が原因で白血球が増加することもあります。
尿検査での意味
「5個/HPF」以上尿沈渣検査で、1つの視野に5個以上の白血球が検出されると、尿路の炎症や感染症が強く疑われます。
「尿中白血球エステラーゼ」試験紙法尿検査試験紙には白血球が持つ酵素(エステラーゼ)を検出するものもあり、尿路感染症のスクリーニング検査として用いられます。

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「10/HPF」とは?

「10/HPF」は、尿検査の結果などで使われる単位で、1視野あたりの白血球の数(HPF:高倍率視野)が10個以上であることを示しています。

これは、尿中の白血球が多い状態を示しており、膀胱炎や腎炎など、尿路感染症の可能性を示唆する所見です。

尿沈渣検査では、白血球が1~4/HPF程度であれば正常範囲とされ、5/HPF以上で「膿尿(のうにょう)」と判断されることがあります。

そのため、10/HPFは正常値よりも大幅に多い状態です。

「10/HPF」の意味
HPFHigh Power Field(高倍率視野)の略で、顕微鏡で400倍の倍率で見たときの視野のことです。
10/HPF顕微鏡で高倍率視野(HPF)を1視野観察したときに、白血球が10個以上見つかったことを意味します。
尿沈渣検査の白血球
1~4/HPF正常範囲
5/HPF以上膿尿(のうにょう)
10/HPF正常値よりも大幅に多い

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「尿路感染症」とは?

尿路感染症とは、腎臓、膀胱、尿道、前立腺など、尿の通り道に細菌などの病原体が感染して炎症を起こす病気の総称です。

原因菌は主に大腸菌で、感染部位によって膀胱炎や腎盂腎炎などに分類されます。

排尿時の痛み(排尿痛)や頻尿、残尿感、下腹部痛などが主な症状です。

主な特徴
原因尿道口から細菌が侵入し、膀胱に達して起こることが最も一般的です。
感染部位による分類・下部尿路感染症は、膀胱炎、尿道炎など、膀胱や尿道に炎症が起こるものです。
・上部尿路感染症は、腎盂腎炎など、尿管から腎臓に感染が広がったものです。
原因菌大腸菌が最も多く、複雑性尿路感染症では肺炎桿菌やブドウ球菌なども原因となります。
症状・頻尿、尿意切迫感、排尿痛、残尿感
・下腹部痛
・尿の濁り、血尿
・発熱、腰痛など(上部尿路感染症の場合)

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評価の要点

【処置等に係る医療区分④】尿路感染症に対する治療

分類医療区分算定期間評価の単位
処置等医療区分2期間に限りあり連続14日を限度

尿路感染症の治療をしている状態を確認します。

本項目における尿路感染症は、以下の2つのいずれかで判断します。

  • 尿沈渣で細菌尿(≧1+)が確認された場合
  • 白血球尿(>10/HPF)であった場合

評価票の記入は、連続14日間までになり15日目以降は記入できません。

一旦非該当になった後に、再び病状が悪化して該当要件を満たしていれば、評価票への記入が可能になります。

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

該当要件のチェックポイント
細菌尿(≧1+)もしくは白血球尿(>10/HPF)を認める。
治療に関する指示、経過記録が診療録に適切に記載できている。
治療を実施している。
[抗生剤投与、水分補充(引水促進・輸液)など]
治癒については検査で判断し、診療録に記載している。
一旦治癒しなければ、新たに本項目に該当しないことを徹底している。
(治癒の確認をしていない、または未治癒のまま再度該当の判定をしていないかを確認)           
算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。
連続する14日間を超えて尿路感染症の治療を行っていても、15日目以降は該当しない。                                      
一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には該当になる。                        

評価の考え方・記入例

評価票の考え方と記入例です。

尿路感染症の治療が20日間継続中

尿沈渣で尿路感染症を確認し、治療を開始。

その後、20日間、治療が継続中。

日付症状・治療評価票
11/1尿路感染症を確認、治療を開始該当(1日目)
11/2尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(2日目)
11/3尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(3日目)
11/4尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(4日目)
11/5尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(5日目)
11/6尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(6日目)
11/7尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(7日目)
11/8尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(8日目)
11/9尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(9日目)
11/10尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(10日目)
11/11尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(11日目)
11/12尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(12日目)
11/13尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(13日目)
11/14尿路感染症は治癒せず、治療継続該当(14日目)
11/15尿路感染症は治癒せず、治療継続非該当(15日目)
11/16尿路感染症は治癒せず、治療継続非該当(16日目)
11/17尿路感染症は治癒せず、治療継続非該当(17日目)
11/18尿路感染症は治癒せず、治療継続非該当(18日目)
11/19尿路感染症は治癒せず、治療継続非該当(19日目)
11/20尿路感染症は治癒せず、治療継続非該当(20日目)

連続した14日間を超えて尿路感染症の治療を行っていても、15日目以降は「非該当」になります。

note掲載:販売中

医療区分の評価や分析を簡単にするために、Excelシートを販売しています。

業務でご活用ください。

  • 患者単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
  • 病棟単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
  • 病棟単位の医療区分の内訳(割合)
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