「医療区分②:中心静脈栄養(対象疾患以外、30日以内)」をわかりやすく解説|【処置等に係る医療区分:医療区分3】

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療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。

そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。

この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。

※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。

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参考図書


目次

医療区分の概要(医科点数表の解釈)

医療区分「中心静脈栄養(対象疾患以外、30日以内)」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


2. 中心静脈栄養(療養病棟入院基本料を算定する場合にあっては、広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻若しくは急性膵炎を有する患者以外を対象として、中心静脈栄養を開始した日から30日以内の場合に実施するものに限る。)

項目の定義
中心静脈栄養(療養病棟入院基本料を算定する場合にあっては、広汎性腹膜炎腸閉塞難治性嘔吐難治性下痢活動性の消化管出血炎症性腸疾患短腸症候群消化管瘻若しくは急性膵炎を有する患者以外を対象として、中心静脈栄養を開始した日から30日以内の場合に実施するものに限る。)
評価の単位
1日毎
留意点
本項目でいう中心静脈栄養とは、消化管の異常悪性腫瘍等のため消化管からの栄養摂取が困難な場合に行うものに限るものとし、単に末梢血管確保が困難であるために行うものはこれに含まない。ただし、経管栄養のみでカロリー不足の場合については、離脱についての計画を作成し実施している場合に限り、経管栄養との一部併用の場合も該当するものとする。中心静脈栄養の終了後も7日間に限り、引き続き処置等に係る医療区分3として取り扱うことができる。

また、療養病棟入院基本料を算定する場合にあっては、広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻若しくは急性膵炎を有する患者以外を対象として、中心静脈栄養を開始した日から30日以内の場合に実施するものに限るものである。

なお、有床診療所療養病床入院基本料を算定する場合にあっては、本項目は適用しない。

なお、毎月末において、当該中心静脈栄養を必要とする状態に該当しているか確認を行い、その結果を診療録等に記載すること。

語句の説明

「中心静脈栄養」とは?

中心静脈栄養(高カロリー輸液療法)とは、口から食事を摂ることが困難な場合に、鎖骨下静脈などの血管が太い中心静脈(上大静脈、下大静脈)にカテーテルを留置し、糖質、アミノ酸、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を豊富に含んだ輸液を直接投与する治療法です。

この方法は、消化管を使わずに栄養を補給できるため、生命維持に必要なエネルギーを十分に供給できます。

中心静脈栄養(高カロリー輸液療法)は、高カロリー輸液療法(IVH:Intravenous Hyperalimentation)や完全静脈栄養法(TPN:Total Parenteral Nutrition)とも呼ばれます。

特徴
高濃度の栄養輸液高濃度の栄養剤を投与できるため、通常は末梢血管では注入できない栄養素を補給できます。
栄養素の完全補給糖質、アミノ酸、脂質、電解質、ビタミン、微量元素といった生命維持に必要な5大栄養素を、体の必要量に応じて投与できます。
適応
・消化管からの栄養補給が不可能または不十分な場合
・長期間(通常1週間以上)経口摂取ができない場合
・消化器疾患などで、消化管の機能が低下している場合

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「広汎性腹膜炎」とは?

広汎性腹膜炎とは、腹膜炎のうち、炎症が腹腔全体にまで広がった状態を指します。

主な原因は、胃や腸などの消化管に穴が開いて内容物が腹腔内に漏れ出す「消化管穿孔」で、急激な激痛や腹部の板状硬(板のように硬くなること)、敗血症などを引き起こします。

重症化すると命にかかわります。

原因
消化管穿孔胃潰瘍、虫垂炎、大腸がん、憩室炎、消化管手術後の合併症などにより、消化管の壁に穴が開くことです。
細菌感染胆のうや膀胱の細菌感染が腹膜に広がることです。
特発性細菌性腹膜炎明確な消化管穿孔がないにもかかわらず、腹水などがある肝硬変の患者で、細菌が腹腔内に侵入して発症することです。
主な症状
激しい腹痛腹部全体に、持続的で強い痛みが広がる。
腹部の板状硬腹部が全体的に硬くなり、押して離すと痛みが増強する。                        
その他の症状発熱、嘔吐、頻脈、血圧低下など

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「腸閉塞」とは?

腸閉塞とは、食べ物、消化液、ガスなどの腸管内容物が、何らかの原因で腸内を通過できなくなった状態です。

この状態が続くと、腸が詰まった部分よりも上流(口側)に消化物が溜まり、腹痛、嘔吐、腹部膨満、便やガスの消失といった症状を引き起こします。

「腸閉塞」と「イレウス」は、かつては同義語として使われていましたが、近年は区別して使われることがあります。

「腸閉塞」は物理的な閉塞(腫瘍、癒着など)を指し、「イレウス」は腸管の麻痺など機能的な問題を指します。

特徴腸閉塞(腸閉塞症)イレウス(麻痺性イレウス)
原因物理的・機械的な閉塞(癒着、腫瘍、ヘルニア、腸重積など)機能的な異常による麻痺(開腹手術後、炎症、膵炎など)
状態物理的な閉塞によって、内容物が詰まる腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下し、内容物が流れなくなる
使用場面物理的な閉塞を伴う状態全般を指す場合がある機能的な麻痺を指す場合

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「難治性嘔吐」とは?

難治性嘔吐とは、通常の治療法では改善が見られない、長引く、あるいは重度の嘔吐です。

特定の病気(脳の病気、消化器系の病気、薬剤の副作用など)が原因で起こるものと、ストレスなどの精神的な要因が関係しているものがあります。

診断が難しく、原因に応じて制吐剤による対症療法や精神的なアプローチがとられます。

主な原因
器質的・全身性の病気脳出血・脳腫瘍、胃潰瘍、腎臓病などの内臓疾患
薬剤抗がん剤や麻薬など、特定の薬剤の副作用として起こるもの
精神的ストレスストレスや不安、プレッシャーなどが原因で起こるもの、心因性嘔吐とも呼ばれます
周期性嘔吐症候群 (CVS)明らかな構造的異常がないにもかかわらず、重度の嘔吐発作を繰り返す疾患
カンナビノイド悪阻症候群大麻の長期使用によって生じることがあります

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「難治性下痢」とは?

難治性下痢とは、通常2~3週間以上続く、感染症が原因ではない下痢を指します。

原因不明の「特発性難治性下痢症」や、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、大腸がんなどの病気が背景にある場合などがあり、専門的な検査が必要です。

特に乳幼児では成長障害につながる可能性があるため、注意が必要です。

原因
感染症以外体質や他の病気、ストレスなどが原因となることがあります
特定の疾患過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、大腸がんといった病気が背景にある場合
小児の場合腸閉塞や先天的な構造異常、ヒルシュスプルング病など、様々な疾患が原因となることがあります
原因が特定できない場合「特発性難治性下痢症」と診断されることもあります

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「活動性の消化管出血」とは?

「活動性の消化管出血」とは、胃や腸などの消化管から出血が続いており、ただちに止血が必要な状態のことです。

具体的には、鮮血を吐いたり、コーヒーかすのような茶色の吐物や、血便、黒色便が出たりする症状で現れます。

この状態は、出血部位や量、進行速度が様々な原因によって異なるため、原因の特定と迅速な治療が必要です。

活動性の消化管出血の症状
吐血胃の内容物に血液が混じり、ピンク色に見えたり、血液が胃酸と反応して「コーヒーかすのような」茶色の物質として吐き出されたりします
下血便に血が混じったり、便が黒くタール状になったりします
その他の症状出血量が多い場合、筋力低下、立ち上がったときの血圧低下、発汗、のどの渇き、失神などを引き起こすことがあります

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「炎症性腸疾患」とは?

炎症性腸疾患(IBD)とは、潰瘍性大腸炎とクローン病に代表される、消化管に慢性の炎症や潰瘍を起こす病気の総称です。

主な症状は、下痢、腹痛、血便、発熱などで、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返します。

原因は不明ですが免疫の異常が関与していると考えられており、国の指定難病に定められています。

主な特徴
「再燃期」と「寛解期」の繰り返し病気の活動期(再燃期)と、症状が落ち着いている時期(寛解期)を繰り返すのが特徴です
原因不明の慢性疾患特定の感染症や薬剤が原因ではなく、自己免疫のメカニズムが関係していると考えられています
全身への影響腸の症状だけでなく、関節痛、皮膚障害、眼の病変など、体全体に影響を及ぼすことがあります
難治性疾患根本的な根治は難しく、生涯にわたる治療が必要ですが、近年は治療法が進歩しています
国の指定難病治療費の公費補助制度が利用できます
代表的な疾患
潰瘍性大腸炎(UC)大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができる疾患です
クローン病(CD)口から肛門までの消化管のどの部分にも炎症や潰瘍が起こる可能性があります

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「短腸症候群」とは?

短腸症候群とは、小腸の大部分を切除したことや生まれつき腸が短いことなどが原因で、栄養素や水分を十分に吸収できなくなる状態です。

主な症状は、下痢、体重減少、栄養障害で、重症の場合は成長障害を引き起こすこともあります。

主な原因
小腸の広範な切除クローン病、腸間膜梗塞、がん、先天異常などの病気で、小腸の大部分(一般的に全長の3分の2以上)を切除したことによって発症します
先天的な状態生まれつき腸が短いことも原因となります
主な症状
下痢水様性の下痢が繰り返し起こり、脱水や電解質の喪失につながります
栄養吸収障害水分や栄養(タンパク質、脂質、炭水化物など)だけでなく、ビタミンやミネラルも十分に吸収できません
体重減少と栄養失調下痢と栄養吸収不良により、体重が減少し、栄養失調に陥ります
その他の症状腹部膨満感、腹痛、胸焼けなどが現れることもあります
小児の場合は成長障害成長期に発症すると、成長障害を引き起こす可能性があります

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「消化管瘻」とは?

消化管瘻とは、口から食事をすることが困難な患者に対して、手術で消化管(胃や腸)に孔(あな)を開け、そこからチューブを通して直接栄養や水分、薬剤を補給する方法です。

胃に孔を開けるものを胃瘻(いろう)、腸に開けるものを腸瘻(ちょうろう)と呼び、特に胃瘻は内視鏡を使って行うPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)が一般的です。

胃瘻と腸瘻の違い
胃瘻まず胃瘻が作られ、栄養補給が行われます
腸瘻胃がんなどで胃瘻が作れない場合や、胃瘻でも逆流や嘔吐が頻繁に起こる場合に、胃を迂回して腸に直接カテーテルを留置する腸瘻が選択されます

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「急性膵炎」とは?

急性膵炎は、膵臓が作る消化酵素によって膵臓自体が炎症を起こし、自己消化される病気です。

主な原因は、アルコールや胆石で、上腹部の激しい腹痛、嘔吐、発熱などの症状が現れます。

重症化すると命に関わることもあるため、症状がある場合は速やかに医師の診察を受ける必要があります。

主な特徴
原因主な原因は、飲酒(アルコール性)と胆石(胆石性)。
その他に、薬剤、高脂血症、ウイルス感染なども原因となることがあります。
症状・上腹部の激しい痛み
・背中への痛みの放散
・嘔吐、食欲不振、発熱
・重症化すると、血圧低下やショック状態
診断① 上腹部の急性腹痛
② 血中または尿中の膵酵素の上昇
③ 画像検査(超音波・CT・MRI)で膵臓に異常所見がある
この3つのうち2つ以上を満たすことで診断されます。
治療・絶飲食と輸液による膵臓を休ませる治療が中心です。
・痛みを和らげるための鎮痛剤や、酵素の活性を抑える薬が使用されます。
・重症の場合は、集中治療が必要となり、臓器不全対策などが行われます。
予後・軽症の場合は1~2週間で回復することが多いです。
・重症の場合は、死亡するリスクも伴います。重症度を判定し、適切な治療が可能な医療機関へ速やかに転送することが推奨されます。

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「消化管の異常」とは?

消化管の異常には、機能的な問題と器質的な問題があります。

機能的な問題には、器質的異常がないのに胃もたれや腹痛、便秘や下痢が続く「機能性消化管障害」があり、代表的なものに機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群があります。

器質的な問題には、胃・十二指腸潰瘍、胃癌、大腸癌、消化管出血などがあり、内視鏡検査などで異常が確認されます。

機能的な異常(器質的異常がないもの)
機能性消化管障害(FGID)内視鏡検査などで器質的な異常がないにもかかわらず、腹痛、胃もたれ、便秘、下痢などの症状が長く続く状態です。
・機能性ディスペプシア:胃の痛みやもたれが主な症状です。
・過敏性腸症候群(IBS):腹痛や便通異常(便秘、下痢、または両方)が特徴です。ストレスが症状を悪化させることが多いです。
症状腹痛、胸やけ、呑酸、げっぷ、のどのつかえ、胃もたれ、膨満感、食欲不振、吐き気、便秘、下痢などがあります。
器質的な異常(構造的な問題)
潰瘍胃や十二指腸などの消化管壁が傷つく状態です。出血を伴うと吐血や黒色便(タール便)が出ることがあります。
胃癌や大腸癌などの悪性腫瘍です。
消化管出血内視鏡検査でも出血源が特定できない場合があります(原因不明の消化管出血(OGIB))。主な出血源は小腸であることが多いです。
その他消化管異物、消化管粘膜下腫瘍、消化管先天異常、大腸ポリープ、炎症性腸疾患、血管性病変などがあります。

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「悪性腫瘍」とは?

悪性腫瘍とは、体の細胞が異常に増殖して周囲の組織に広がり(浸潤)、他の臓器に転移する可能性がある、生命を脅かす可能性のある腫瘍です。

一般的に「がん」とも呼ばれ、上皮細胞から発生する「癌(がん)」と、骨や筋肉などの細胞から発生する「肉腫」に大きく分けられます。

悪性腫瘍の特徴
異常な増殖正常な細胞と異なり、自律的な制御を失って無制限に増殖します。
浸潤周囲の健康な組織や臓器に侵入します。
転移血管やリンパの流れに乗って、体の離れた場所にある臓器にも広がり、新たな腫瘍を形成します。

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「消化管からの栄養摂取が困難な場合」とは?

「消化管からの栄養摂取が困難な場合」とは、口からの食事や、胃・腸へ直接栄養剤を投与する経腸栄養が、病気や体の状態によって不可能、不十分、または危険を伴う状況を指します。

主な状態
嚥下(えんげ)機能の障害食べ物や飲み物を安全に飲み込むことができない状態です。
消化管の機能不全・通過障害消化管(食道、胃、腸など)自体に問題があり、消化・吸収ができない、または食物の通過が妨げられている状態です。
全身状態の悪化全身の状態が非常に悪く、消化管に負担をかけることができない場合です。

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「末梢血管確保が困難」とは?

「末梢血管確保が困難」とは、点滴や採血などのために、腕などの末梢(体のはし)にある血管に針やチューブを刺し通すことが難しい状態を指します。

これは、血管が細い、見えにくい、または脱水などの理由で、血管が十分に怒張していない(太くなっていない)場合に起こります。

困難になる理由
血管が細い、または見えにくい静脈が細かったり、皮膚の下で沈んでいたりすると、針を刺し通すのが難しくなります。
脱水体内の水分が不足すると、血管がしぼんで細くなります。
その他静脈が走行している場所が解剖学的に複雑だったり、患者が動揺している場合なども難しくなります。

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「経管栄養」とは?

経管栄養とは、口からの摂取が困難な場合に、チューブやカテーテルを使って直接消化管(胃や腸)に栄養剤を送り、栄養を補給する方法です。

嚥下障害、意識障害、誤嚥のリスクが高い場合などに用いられ、消化機能が保たれていることが前提となります。

目的は、栄養不足を解消し、体力維持や回復を図ることです。

主な種類と特徴
経鼻経管栄養鼻からチューブを挿入する方法で、比較的簡単に実施できるため、一時的な栄養補給に適しています。
胃ろう(PEG)お腹から胃に直接チューブを挿入する方法で、比較的長期的な栄養補給に適しています。
腸ろう(PEG-J)お腹から小腸に直接チューブを挿入する方法で、胃の機能が低下している場合などに用いられます。

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「離脱」とは?

「離脱(りだつ)」とは、患者が依存している、あるいは一時的に使用している医療処置や機器から、元の状態(経口摂取など)に戻すこと、またはそれらを使用しなくなることを指します。

中心静脈栄養の離脱とは、患者が経口摂取や経腸栄養で十分な栄養を摂取できるようになり、中心静脈栄養を終了・中止することです。

中心静脈栄養の離脱は、急に行うと危険な合併症を引き起こす可能性があるため段階的に進められます。

段階的な離脱方法
経口摂取への移行患者の栄養状態が改善し、摂食・嚥下機能が回復してきた際に、口から食事を摂るリハビリテーションなどを行い、中心静脈栄養による栄養補給を段階的に終了させていくことです。
他の栄養方法への変更中心静脈栄養から経腸栄養(胃ろうや経鼻胃管など消化管を使った栄養補給)へ移行することを目指す場合もあります。
中心静脈栄養の終了(抜去)最終的に中心静脈栄養が必要なくなり、カテーテルを抜去することを含みます。

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評価の要点

【処置等に係る医療区分②】中心静脈栄養(対象疾患以外、30日以内)

療養病棟入院基本料を算定する場合にあっては、広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻若しくは急性膵炎を有する患者以外を対象として、中心静脈栄養を開始した日から30日以内の場合に実施するものに限る。

分類医療区分算定期間評価の単位
処置等医療区分3期間に限りあり1日毎

実施する中心静脈栄養は、消化管の異常、悪性腫瘍等のため消化管からの栄養摂取が困難な場合に行うものに限ります。

末梢血管確保が困難な場合の中心静脈栄養の実施は該当しません。

ただし、経管栄養のみによるカロリー不足に対して離脱の計画を作成・実施する場合は、経管栄養との一部併用も該当します。

中心静脈栄養の終了後は7日間に限り、引き続き医療区分3として取り扱うことができます。

中心静脈栄養を実施している状態に加えて、「対象疾患に当てはまらないこと」「開始日から30日以内であること」を確認します。

中心静脈栄養の医療区分は本項目も加えて3つあるので、どの医療区分に該当するかの確認が必要です。

  • 処置等に係る医療区分②:中心静脈栄養(対象疾患以外、30日以内)
  • 処置等に係る医療区分⑭:中心静脈栄養(対象疾患を有する場合)
  • 処置等に係る医療区分㉜:中心静脈栄養(対象疾患以外、30日を超える)

有床診療所療養病床入院基本料を算定する場合には、本項目には適用しません。

毎月末に中心静脈栄養を必要な状態に該当しているかを確認し、その結果を診療録等に記載します。

本項目における対象疾患
  • 広汎性腹膜炎
  • 腸閉塞
  • 難治性嘔吐
  • 難治性下痢
  • 活動性の消化管出血
  • 炎症性腸疾患
  • 短腸症候群
  • 消化管瘻
  • 急性膵炎

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

該当要件のチェックポイント
消化管からの栄養摂取が困難なために行う旨を診療録に記載している。
経管栄養のみではカロリー不足の場合、離脱についての計画を作成し実施している。
中心静脈栄養を漫然と実施せず、経管栄養への移行や経口摂取への復帰が検討されている。
定期的に血液検査等、必要な検査を実施している。
広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻若しくは急性膵炎を有する患者以外である。
有床診療所療養病床入院基本料を算定する場合にあっては、本項目は適用しない。
算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。
中心静脈栄養を開始した日から30日以内である。
中心静脈栄養の終了後も7日間に限り、引き続き処置等に係る医療区分3として取り扱うことができる。

「医療区分②・医療区分⑭・医療区分㉜」の振り分け

「医療区分②・医療区分⑭・医療区分㉜」の振り分けについてまとめます。

有床診療所療養病床入院基本料を算定している場合

有床診療所療養病床入院基本料を算定している場合には、対象疾患の有無や中心静脈栄養の実施期間に関わらず、「処置等に係る医療区分⑭:中心静脈栄養(対象疾患を有する場合)」に該当することになります。


有床診療所療養病床入院基本料を算定している場合

⇩⇩⇩⇩⇩⇩

「対象疾患の有無・中心静脈栄養の実施期間」に関わらない

⇩⇩⇩⇩⇩⇩

「処置等に係る医療区分⑭:中心静脈栄養(対象疾患を有する場合)」に該当

療養病床入院基本料を算定している場合

療養病床入院基本料を算定している場合には、「対象疾患の有無」や「中心静脈栄養の実施期間」を確認した上で、下記の3つの医療区分に振り分けます。

  • 処置等に係る医療区分②:中心静脈栄養(対象疾患以外、30日以内)
  • 処置等に係る医療区分⑭:中心静脈栄養(対象疾患を有する場合)
  • 処置等に係る医療区分㉜:中心静脈栄養(対象疾患以外、30日を超える)

振り分けのながれ

中心静脈栄養を実施した状態で、以下の項目を確認します。

対象疾患実施期間医療区分
あり算定期間限りなし 医療区分⑭:中心静脈栄養(対象疾患を有する場合)
なし30日以内 医療区分②:中心静脈栄養(対象疾患以外、30日以内)
なし30日を超える 医療区分㉜:中心静脈栄養(対象疾患以外、30日を超える)
対象疾患
  • 広汎性腹膜炎
  • 腸閉塞
  • 難治性嘔吐
  • 難治性下痢
  • 活動性の消化管出血
  • 炎症性腸疾患
  • 短腸症候群
  • 消化管瘻
  • 急性膵炎

厚生労働省における疑義解釈資料

厚生労働省における疑義解釈資料についてまとめました。

疑義解釈(その3)[令和6年4月26日]問6:中心静脈栄養

医療区分における中心静脈栄養の評価について、中心静脈栄養の終了後も7日間に限り、引き続き処置等に係る医療区分3又は2として評価を行うこととされたが、当該病棟に入院中に、中心静脈栄養を一度終了し、再開した場合はどのように評価するのか。

当該病棟に入院中に、中心静脈栄養を一度終了し、再開した場合であっても 中心静脈栄養を最初に終了した日から7日間に限り、引き続き処置等に係る医療区分3又は2として評価を行う。

疑義解釈(その3)[令和6年4月26日]問7:中心静脈栄養

医療区分における中心静脈栄養の評価について、広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻又は急性膵炎を有する患者以外を対象とする場合、中心静脈栄養を開始した日から30日を超えた場合は処置等に係る医療区分2として評価を行うこととされたが、中心静脈栄養を開始した日から30日が経過した後に、転棟又は退院後に、再度療養病棟に入棟又は入院して、中心静脈栄養を実施した場合であって入院期間が通算される場合はどのように評価するのか。

処置等に係る医療区分2として評価を行う。

疑義解釈(その2)[令和6年4月12日]問14:中心静脈栄養

医療区分における中心静脈栄養の評価について、広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻又は急性膵炎を有する患者以外を対象として、中心静脈栄養を開始した日から30日を超えて実施する場合は、処置等に係る医療区分2として評価を行うこととされたが、当該病棟に入院中に、中心静脈栄養を中止し、再開した場合はどのように評価するのか。

当該病棟に入院中に、中心静脈栄養を最初に実施した日から30日を超えて中心静脈栄養を実施した場合については、処置等に係る医療区分2として評価を行う。

疑義解釈(その1)[令和6年3月28日]問26:中心静脈栄養

医療区分における中心静脈栄養の評価について、広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻若しくは急性膵炎を有する患者以外を対象とする場合、中心静脈栄養を開始した日から30日を超えた場合は処置等に係る医療区分2として評価を行うこととされたが、令和6年6月1日以前より当該病棟において中心静脈栄養を開始した場合の取扱い如何。

令和6年6月1日以前の中心静脈栄養を開始した日から起算して30日を超えている場合、令和6年6月1日以降は、処置等に係る医療区分2として評価する。

ただし、令和6年3月31日時点において、療養病棟入院基本料に係る届出を行っている病棟に入院している患者であって、中心静脈栄養を実施している患者については、当面の間、処置等に係る医療区分3として取り扱う。

疑義解釈(その1)[令和6年3月28日]問27:中心静脈栄養

問26のただし書について、令和6年4月1日以降に、中心静脈栄養を中止した後に再開した患者であっても経過措置の対象となるのか。

経過措置の対象とならない。

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  • 患者単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
  • 病棟単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
  • 病棟単位の医療区分の内訳(割合)
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