PIVKA-Ⅱ(ピブカツー)は、ビタミンKの作用不足によって肝臓で生合成される「異常プロトロンビン」というタンパク質で、主に肝細胞がんの診断に使用される腫瘍マーカーです。
ビタミンKが不足している状態や、肝細胞のがんがある場合に血中で高値を示し、肝がんの早期発見や治療効果の判定、再発の診断補助に役立ちます。
PIVKA-IIの基準値
PIVKA-II: 40 mAU/mL以下
目次
PIVKA-Ⅱの概要
PIVKA-IIは「ピブカツー」と読み、「Protein Induced by Vitamin K Absence or Antagonist-II」の略になります。
ビタミンK欠乏、又は拮抗剤(ワルファリンなど)によって誘導される異常プロトロンビンのことを指し、とくに、肝細胞癌(HCC)の腫瘍マーカーとして使用されます。
肝細胞癌(HCC)の早期発見や治療のモニタリングに役立つため、とくに肝硬変や慢性肝炎の患者では定期的な測定が推奨されています。
PIVKA-IIの生成メカニズム
正常な肝臓では、ビタミンKを利用してプロトロンビンが正常に合成されます。
しかし、以下の条件下では異常なプロトロンビン(PIVKA-II)が生成されます。
- ビタミンK欠乏(栄養障害、吸収不良症候群など)
- ビタミンK拮抗剤の使用(ワルファリンなど)
- 肝細胞癌(HCC)
肝細胞癌では、がん細胞の異常な代謝によって、ビタミンK依存的なプロトロンビンの合成が阻害され、PIVKA-IIが血中に増加します。
PIVKA-IIの臨床的意義
① 肝細胞癌(HCC)の診断マーカー
PIVKA-IIは、肝細胞癌(HCC)の特異的な腫瘍マーカーとして使用されます。
- α-フェトプロテイン(AFP)と並ぶHCCの診断指標
- α-フェトプロテイン(AFP)では検出できない肝細胞癌でも、PIVKA-IIが陽性になることがある
- 肝硬変や慢性肝炎の進行リスク評価にも有用
② 肝細胞癌の予後予測
- PIVKA-IIが高値の肝細胞癌患者は、血管侵襲(門脈浸潤など)を伴うリスクが高い
- 術後の再発リスクが高い
- 高値の場合、肝移植後の生存率低下が指摘されている
③ 治療効果のモニタリング
- 肝細胞癌の治療(手術、ラジオ波焼灼、経カテーテル動脈塞栓術など)の後、PIVKA-IIの数値が低下すれば治療効果が良好
- 再上昇すれば再発の可能性を示唆する
PIVKA-IIの基準値と異常値
| 正常値 | 40 mAU/mL以下 |
| 異常高値(HCCの疑い) | 40 mAU/mL以上 |
| HCCリスク増大 | 100 mAU/mL以上 |
※PIVKA-IIは、ビタミンK欠乏やワルファリン服用時も上昇するため、肝細胞癌(HCC)の診断にはα-フェトプロテイン(AFP)や画像診断(CT、MRI)と併用することが重要です。
PIVKA-Ⅱが高値の場合
PIVKA-Ⅱが高値の場合には、以下のことが考えられます。
- 肝細胞癌
- 閉塞性黄疸
- 転移性肝臓癌
- 肝硬変
- 急性肝炎
- 慢性肝炎
- その他
:乳児ビタミンK欠乏性出血症
(ほぼ全例で陽性:ワルファリンカリウム投与時)
PIVKA-IIとα-フェトプロテイン(AFP)の比較
| 指標 | PIVKA-II | AFP |
|---|---|---|
| 特異性 | 高い (HCCに特異的) | 低め (肝炎・肝硬変でも上昇) |
| 感度 | 低~中 (AFP陰性HCCの補助) | 中~高 |
| 診断補助 | 進行癌や血管浸潤を示唆 | 早期HCCで有用な場合も |
| 再発予測 | 高値で再発リスク高 | ある程度予測可能 |
その他の腫瘍マーカー
| 各種臓器の癌 | 腫瘍マーカー | |
|---|---|---|
| 肺癌 | 腺癌 | ・SLX ・CEA(癌胎児性抗原) |
| 扁平上皮癌 | ・SCC ・CYFRA(シフラ) | |
| 小細胞癌 | ・NSE ・ProGRP | |
| 食道癌 | ・SCC ・CYFRA(シフラ) | |
| 肝臓癌 | ・AFP ・PIVKA-Ⅱ | |
| 乳癌 | ・CA15-3 ・CEA(癌胎児性抗原) | |
| 胆嚢・膵臓癌 | ・CEA(癌胎児性抗原) ・CA19-9 ・CA-50 ・DUPAN-2 ・Span-1 | |
| 胃・大腸癌 | ・CEA(癌胎児性抗原) ・STN(シアリルTn抗原) | |
| 前立腺癌 | ・PSA(前立腺特異抗原) | |
| 卵巣癌 | ・CA125 ・CA130 ・CA72-4 | |
| 絨毛癌 | ・HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン) | |






