糞便の細菌検査とは、便から病原菌や食中毒菌などの特定の細菌を特定し、感染症の原因や健康保菌者(無症状の病原菌保有者)を発見するための検査です。
主な目的は、食中毒の防止や感染性胃腸炎の原因究明、そして適切な薬剤治療の選択であり、食品業界での衛生管理や従業員の健康管理にも利用されます。
糞便の細菌検査の基準値
陰性
※1回の検査で陰性になっても、2~3回続けて検査を行うことで精度が高くなります。原則、抗菌薬投与前に検査を行います。
目次
糞便の細菌検査の概要
腸管内には多種類の常在菌が存在していますが、腸管内感染症を起こす菌にも多くの種類があります。
糞便の細菌検査は、以下にあげる腸管内感染症の起因菌の検出を目的とします。
- 赤痢菌、コレラ菌、腸チフス菌
- カンピロバクター、サルモネラ、ブドウ球菌
- 腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌
- クロストリジウム・ディフィシル(偽膜性腸炎)
下痢便の場合には、急性期の排出便を検体とすることが重要です。便の長時間放置後には常在菌の繁殖や起炎菌の死滅をまねくことがあるので、充分量の便を乾燥させないように保存する必要があります。
検査の目的
感染性胃腸炎の診断
下痢や腹痛の原因が細菌感染によるものかを確認し、感染症の早期発見と治療に繋げます。
食中毒の防止
サルモネラ菌や腸管出血性大腸菌などの病原菌を保有している「健康保菌者」を早期に発見し、食中毒の発生を未然に防ぎます。
薬剤耐性菌の検出
院内感染の予防や、原因菌に効果的な抗生物質を特定するために行われます。
検査の方法と流れ
検体の採取
採便用のディスポーザブル便器などを使用し、便を容器に採取します。水洗便所での採取は避ける必要があります。
培養
採取した便を特定の選択培地に乗せ、細菌を培養します。
同定・確認
培養後、疑わしい細菌のコロニー(菌の集落)を特定し、必要に応じて確認培地で再度培養や同定検査、血清型別試験などを行います。
結果の判定
最終的な細菌の種類を特定し、原因菌の特定や薬剤感受性試験の結果を評価します。






