梅毒血清反応(STS)はカルジオリピンなどの脂質抗原を用いた検査で、感染初期に早く陽性化し治療効果を反映しやすいですが、偽陽性が出やすい特性があります。
一方、TPHA(トレポネーマ抗体検査)は梅毒トレポネーマ由来の抗原(TP抗原)を用い、特異性が高いですが、治療しても陽性が持続するため、過去の感染と現在の感染を区別するにはSTSとの併用が推奨されます。
STS: 陰性
TPHA: 陰性(80倍未満)
梅毒血清反応(STS、TPHA)の概要
梅毒は、スピロヘータのトレポネーマ・パリダム(TP)を病原体とする性感染症(STD)です。
梅毒の血清反応による検査は、トレポネーマ・パリダムの抗体を検出して梅毒感染を証明する検査であり、感染によって産生される由来の異なる2つの抗体を検査する方法があります。
略称
梅毒血清反応
STS:serologic test for syphilis
TPHA:treponema pallidum Latex Agglutination
STS( 梅毒血清反応)
梅毒の脂質抗原(カルジオリピン、レシチンなど)に反応する抗体を測定します。
梅毒に感染すると約2週間後に陽性化し始め、12週までにほぼ全例が陽性になると言われています。
適切な治療を行うと陰性化し、治療効果の判定に役立ちます。
ウイルスや細菌感染、妊娠、膠原病など梅毒以外の原因でも陽性になる「生物学的偽陽性(BFP)」があるため、特異性に問題があります。
TPHA( 梅毒トレポネーマ感作赤血球凝集試験)
梅毒病原体である梅毒トレポネーマ(TP)が持つ抗原(TP抗原)に対する特異的な抗体を検出します。
梅毒に感染している場合にのみ陽性となる特異性の高い検査です。
STSに比べて初期感染での陽性化が遅い傾向があります。
治療後も陽性が持続するため、過去の感染と現在の感染の区別はできません。
生物学的偽陽性(BFP)がありません。
STSとTPHAの使い分け
① スクリーニング検査
感染初期の早い段階で陽性になるSTSは、感染機会の有無や感染初期の検出に有効です。
② 確定診断・治療効果判定
特異性の高いTPHAと、治療効果を反映するSTSを組み合わせて検査することで、より正確な診断と治療効果の評価が可能になります。
梅毒血清反応(STS、TPHA)が陽性の場合
梅毒血清反応(STS、TPHA)が陽性の場合には、以下のことが考えられます。
| STS | TPHA | 判定 |
|---|---|---|
| + | + | 梅毒、先天梅毒 |
| + | - | ・梅毒感染の初期 ・BFP(生物学的偽陽性):膠原病(SLEなど)、ウイルス感染、細菌感染、妊娠など |
| - | + | 梅毒の治癒後 |
| STS | TPHA | 判定 |
|---|---|---|
| - | - (80倍未満) | ・梅毒に感染していない ・梅毒感染直後(抗体の産生には、1~数週間がかかる) |






