髄液検査は、脳や脊髄の周囲を循環する脳脊髄液を採取して分析する検査です。
頭痛やしびれ、意識障害などの原因を調べるのに用いられ、髄膜炎、脳炎、がんの転移などの診断に役立ちます。
検査は通常、腰椎(腰の骨)から針を刺して行う腰椎穿刺で行われ、採取した髄液から細胞数や蛋白・糖濃度などを測定し、中枢神経系の状態を把握します。
| 検査 | 基準値 |
|---|---|
| 髄液圧 | 60~150(mmH2O) |
| 性状 | 無色透明、水様 |
| 細胞数/細胞分画 | 0~5(/μL)(リンパ球) |
| 総蛋白量 | 10~40(mg/dL) |
| グロブリン反応 | 陰性 |
| 糖 | 50~90(mg/dL) |
| クロール | 118~130(mEq/L) |
髄液検査の概要
髄液(脳脊髄液)は、脳室あるいは脳・脊髄のクモ膜下腔を流れる無色透明の液体で、脳・脊髄を外圧から保護する役割があります。
髄液検査では、脳・脊髄の感染症、腫瘍および脳・クモ膜下の出血などの診断を行います。
髄液検査の項目
① 髄液圧検査
健常者の液圧は、側臥位で60~150mmH2Oです。髄膜炎などで液圧は上昇します。
- 健常者の液圧: 側臥位で60~150mmH2O
- 髄膜炎などで液圧上昇
② 性状
健常者の髄液は、無色透明で水様性です。脳出血、クモ膜下出血などでは血性の髄液になり、古い出血ではキサントクロミーと呼ばれる黄色の髄液になります。また、化膿性髄膜炎では乳白色になることもあります。
- 健常者の髄液: 無色透明で水様性
- 脳出血、クモ膜下出血: 血性の髄液
- 古い出血: 黄色い髄液(キサントクロミーと呼ばれる)
- 化膿性髄膜炎: 乳白色
③ 細胞数 / 細胞分画
健常者の髄液中細胞数は5個/μL以内で、おもにリンパ球が見られます。ウイルス感染による髄膜炎、脳炎などではリンパ球が増加し、細菌感染による髄膜炎、腫瘍では好中球が増加します。
- 健常者の髄液中細胞数: 5個/μL以内(主にリンパ球が見られる)
- ウイルス感染による髄膜炎、脳炎: リンパ球増加
- 細菌感染による髄膜炎、膿瘍: 好中球増加
④ 総蛋白
健常者の髄液中総蛋白量は10~40mg/dLで、髄膜炎、脊髄腫瘍、脳腫瘍、脳炎などで増加します。
- 健常者の髄液中総蛋白量: 10~40mg/dL
- 髄膜炎、脊髄腫瘍、脳腫瘍、脳炎: 髄液中総蛋白量増加
⑤ グロブリン反応: パンディー反応、ノンネ・アペルト反応
グロブリンの増加をみる定性反応はパンディー反応とノンネ・アペルト反応が一般的に行われ、健常者は(-)で、髄膜炎、脊髄腫瘍、脳腫瘍、脳炎などで陽性になります。
- グロブリンの増加をみる定性反応
- 健常者:(-)
- 髄膜炎、脊髄腫瘍、脳腫瘍、脳炎で陽性
⑥ 糖
健常者の髄液糖量は50~90mg/dLで、血糖値の2/3を示し、血糖値に並行して増減します。髄液糖量は、髄膜炎で減少し、脳腫瘍、脳出血などで増加します。
- 健常者の髄液糖量: 50~90mg/dL
・血糖値の2/3、血糖値に平行して増減 - 髄膜炎: 髄液糖量減少
- 脳腫瘍、脳出血: 髄液糖量増加
⑦ クロール
健常者の髄液クロール量は118~130mEq/Lで、血中クロール量に並行して増減します。髄膜炎で髄液クロール量は減少します。
- 健常者の髄液クロール量: 118~130mEq/L
・血中クロール量に平行して増減 - 髄膜炎: 髄液クロール量減少
髄液検査が異常値の場合
髄液検査が異常値の場合には、以下のことが考えられます。
| 検査 | 異常値 | 原因 |
|---|---|---|
| 髄液圧 | 髄液圧上昇 | ・髄膜炎 ・クモ膜下出血 ・悪性腫瘍(癌性髄膜炎など) |
| 髄液圧下降 | ・クモ膜下腔の閉塞 | |
| 性状 | 血性 | ・脳出血 ・クモ膜下出血 |
| 黄色(キサントクロミー) | ・出血後時間の経過した状態 | |
| 膿様混濁 | ・化膿性髄膜炎 | |
| 細胞数/細胞分画 | リンパ球増加 | ・ウイルス性髄膜炎 ・結核性髄膜炎 ・真菌性髄膜炎 ・クモ膜下出血 |
| 好中球増加 | ・細菌性髄膜炎 | |
| 総蛋白量 | 総蛋白量増加 | ・髄膜炎 ・脊髄腫瘍 ・脳腫瘍 ・クモ膜下出血 |
| グロブリン反応 | 陽性 | ・髄膜炎 ・脊髄腫瘍 ・脳腫瘍 |
| 糖 | 増加 | ・腫瘍 ・脳出血 |
| 減少 | ・髄膜炎 | |
| クロール | 減少 | ・髄膜炎 |






