細菌培養とは、病気の原因となっている菌の種類を特定したり、どのような薬が有効かを調べたりするために、患者から採取した検体(痰、尿、便など)に含まれる細菌を、栄養のある培地上で増殖させる検査です。
培養によって肉眼で見える大きさになるまで細菌を増やし、そのコロニーの形や性状を観察することで菌の種類を特定し、適切な治療法を決定します。
細菌培養の概要
細菌培養の目的
- 感染症の診断: 病気の原因となっている細菌を特定します。
- 治療方針の決定: 特定した細菌に効果のある薬剤(抗生物質)を見つけます。
- 菌の特定: 細菌の種類を同定し、その菌の詳しい性状を調べます。
細菌培養に影響する物理的条件
細菌培養を行う条件において、影響を与える物理的条件は以下の3つになります。
| 遊離酵素 | ・細菌の種類によって遊離酵素の要求性が異なります。 |
| 温度 | ・細菌の種類によって発育に適する温度が異なります(指摘温度)。 ・指摘温度により、低温菌、中温菌、高温菌に分類します。 |
| その他の条件 | ・水素イオン濃度(pH) ・浸透圧 |
細菌培養の流れ
感染が疑われる部位(痰、尿、血液、咽頭の分泌物など)から検体を採取します。
採取した検体を、細菌が育つための栄養素が含まれた培地(寒天培地や液体培地)に接種します。
細菌が増殖するのに適した温度や湿度、酸素濃度などを管理した環境で培養します。
培養によって増殖した菌の塊(コロニー)を観察し、その形や色、においなどから菌の種類を推定します。
必要に応じて、培養で分離した菌に効果のある薬剤(抗生物質)を調べる検査を行います。
細菌培養における培地の種類
細菌の発育に必要な栄養分や、その他の要素を含んだ液体や固形化したものを「培地」と呼びます。
培地の種類には以下のものがあります。
① 保存・輸送培地
検体をある程度の期間保存したり、輸送に時間のかかる場合に、検体中の細菌が死滅しないように保存可能とする培地です。
② 増菌培地
細菌の増殖を目的とした培地です。
非選択増菌培地(ある程度多くの菌の増殖に適する培地)と、選択培地(特定の菌の増殖を目的とする培地)に分けます。
③ 分離培地
細菌の集まった状態を集落(コロニー)と呼びますが、培地上に形成された2種類以上の集落から菌を採取し、培地表面に独立した集落を形成することを分離培養と言います。
目的とする菌以外の発育を抑制する状態にある選択的分離培地と、多くの菌を発育させる条件にある非選択分離培地があります。
④ 鑑別培地
分離培養された菌の同定(菌名を確定させること)を目的として用いる培地です。






