療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。
そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。
この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。
※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。
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「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を理解する
療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入します。その評価は「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっているため、評価を行うスタッフは、評価の手引きをしっかり理解しておく必要があります。
参考図書
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目次
医療区分の概要(医科点数表の解釈)
医療区分「スモン」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。
11. スモン
語句の説明
- 「スモン」とは?
-
スモンとは、整腸剤のキノホルムの副作用による薬害で、神経症状を主とする全身の病気です。
英語の略称「Subacute Myelo-Optico-Neuropathy」(亜急性脊髄・視神経・末梢神経障害)をカタカナで読んだもので、1950年代から70年代にかけて日本で多発しました。
下肢の異常感覚やしびれ、歩行障害、視力障害など、全身に幅広い後遺症や合併症が残ることが特徴です。
| 原因 | 整腸剤「キノホルム」の副作用による薬害です。本来は体内に吸収されないと考えられていたキノホルムが、実際に吸収されて神経を侵したことが原因です。 |
| 症状 | 初期 | 腹痛、下痢などの腹部症状に続いて、両下肢のしびれ感(じんじん、ぴりぴり感など)や脱力感、歩行不安定などが現れます。 |
| 重症例 | 下肢の完全麻痺、視力障害(失明に至るケースもある)、脳幹障害などが発生します。 |
| 後遺症 | 現在も残る後遺症や、白内障、高血圧、様々な関節痛などの合併症が頻繁に併発しています。 |
| 経緯と対策 | キノホルム事件 | 1950年代から1970年代にかけて整腸剤の「キノホルム」を服用したことで発生した薬害事件(薬害スモン)です。当初は原因不明の奇病や伝染病と疑われていましたが、薬害であることが判明しました。 |
| 使用中止 | 1970年9月8日、厚生省(当時)はキノホルムの製造販売、および使用を中止しました。 |
| 新患者の発生 | この使用中止以降、新たな患者の発生は激減しました。 |
| 現在の状況 | 現在も国の難病対策の対象疾患であり、医療費は全額公費負担など、国や自治体による医療・福祉支援が行われています。 |
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- 「特定疾患治療研究事業について」とは?
-
「特定疾患治療研究事業」は、原因不明で治療法が確立していない難病(特定疾患)の医療費の一部を公費で負担し、患者の経済的負担を軽減するとともに、その治療の確立・普及を図る制度です。
事業の実施要領は、「特定疾患治療研究事業実施要綱」に定められいます。
この事業は、難病対策の根幹をなす制度の一つとして長年実施されてきましたが、2015年1月1日施行の「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)に基づく新たな医療費助成制度へ移行しました。
特定疾患治療研究事業実施要綱(抜粋)
昭 和 48年 4 月 17日 衛 発 第 242号
最終一部改正 平成27年2月2日健発0202第9号
第1 目的
難病の患者に対する医療等に関する法律(平成26年法律第50号。以下「難病法」という。)に基づく医療費助成制度が平成27年1月1日から施行されることに伴い、難病法の施行前に特定疾患治療研究事業で対象とされてきた特定疾患のうち、難病法に基づく特定医療費の支給対象となる指定難病(難病法第5条第1項に規定する指定難病をいう。以下同じ。)以外の疾患については、治療がきわめて困難であり、かつ、その医療費も高額であるため、特定疾患治療研究事業を推進することにより引き続き当該患者の医療費の負担軽減を図ることを目的として行うものとする。
第2 実施主体
実施主体は、都道府県とする。
第3 対象疾患
(1)スモン
(2)難治性の肝炎のうち劇症肝炎
(3)重症急性膵炎
(4)プリオン病(ヒト由来乾燥硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病に限る。)
(5)重症多形滲出性紅斑(急性期)
以下、参照(外部リンク:特定疾患治療研究事業について)
難病情報センター:特定疾患治療研究事業実施要綱 一部改正 新旧対照表
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- 「特定疾患医療受給者証」とは?
-
「特定疾患医療受給者証」とは、難病患者が医療費助成を受けるための正式名称で、「特定医療費(指定難病)受給者証」といいます。
この受給者証を都道府県・指定都市が指定した医療機関に提示すると、治療費の一部または全部が公費で負担され、自己負担額が軽減されます。
申請は各自治体を通じて行い、認定されると発行されます。
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評価の要点
【疾患・状態に係る医療区分⑪】スモン
| 分類 | 医療区分 | 算定期間 | 評価の単位 |
|---|
| 疾患・状態 | 医療区分3 | 期間に限りなし | ― |
スモンに罹患していることを確認します。
スモンは、「特定疾患治療研究事業について」(昭和48年4月17日衛発第242号)に定めるものを対象とします。
確認は、以下のどちらかで行います。
- 特定疾患医療受給者証の交付を受けているもの
- 過去に当該疾患の公的な認定を受けたことが確認できるもの
医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。
評価のチェックポイント
評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。
| 該当要件のチェックポイント |
|---|
| ☐ | スモン(「特定疾患治療研究事業について」(昭和48年4月17日衛発第242号)に定めるものを対象とする。)に罹患している。 |
| ☐ | 医師により診断根拠(現症・所見)、治療方針を診療録に記載している。 |
| ☐ | 特定疾患医療受給者証を受けている、または、過去に当該疾患の公的な認定を受けたことが確認できる。 |
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- 患者単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
- 病棟単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
- 病棟単位の医療区分の内訳(割合)