療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。
そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。
この記事では、「評価の手引き」にどのようなことが記載されているかについて解説します。
医療区分・ADL区分の評価に携わるスタッフは、「評価の手引き」をしっかり理解しておきましょう。
医科点数表の解釈における「評価の手引き」についての記載
療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者に対して医療区分・ADL区分の評価を行うようになっています。
そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるように医科点数表の解釈に記載されています。
医療区分・ADL区分の評価は「評価の手引き」を用いて行う
療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっていて、その際、該当する項目すべてに記入をするようになっています。
また、医療区分・ADL区分の評価は「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いて行うようになっています。
当該療養病棟に入院する患者については、別添6の別紙8の「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いて毎日評価を行い、別添6の別紙8の2の「医療区分・ADL区分等に係る評価票(療養病棟入院基本料)」の所定の欄に記載すること。その際、該当する全ての項目に記載すること。
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1318
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当該療養病棟に入院する患者については、別添6の別紙8の「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いて毎日評価を行い、別添6の別紙8の2の「医療区分・ADL区分等に係る評価票(療養病棟入院基本料)」の所定の欄に記載すること。その際、該当する全ての項目に記載すること。
医療区分・ADL区分の評価に携わるスタッフは、評価項目に漏れがないように「評価の手引き」をしっかり理解し、医療区分・ADL区分の評価について十分な知識を持つことが必要です。
「評価の手引き」の主な記載事項について
医科点数表の解釈に記載されている「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要は以下の通りです(一部省略)。
別紙8
医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き
「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の記入に当たっては、各項目の「項目の定義」に該当するか否かを判定すること。また、各項目の評価の単位については、「評価の単位」及び「留意点」に従うこと。
なお、「該当する」と判定した場合には、診療録にその根拠を記載すること。ただし、判定以降に患者の状態等の変化がない場合には、診療録に記載しなくても良いが、状態等の変化が見られた場合には診療録に記載すること。
Ⅰ. 算定期間に限りがある区分
(1)【処置等に係る医療区分3(別表第五のニ)】
…略…
(2)【疾患・状態に係る医療区分2(別表第五の三)】
…略…
(3)【処置等に係る医療区分2(別表第五の三)】
…略…
Ⅱ. 算定期間に限りがない区分
(1)【疾患・状態に係る医療区分3(別表第五のニ)】
…略…
(2)【処置等に係る医療区分3(別表第五のニ)】
…略…
(3)【疾患・状態に係る医療区分2(別表第五の三)】
…略…
(4)【処置等に係る医療区分2(別表第五の三)】
…略…
Ⅲ. ADL区分
当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、4項目(a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用)に0~6の範囲で最も近いものを記入し合計する。
新入院(転棟)の場合は、入院(転棟)後の状態について評価する。
…略…
Ⅳ. その他
91. 身体的拘束を実施している
…略…
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1430
「評価の手引き」には、医療区分の評価・ADL区分の評価・身体的拘束の実施についての項目があります。
「評価の手引き」の解釈|医療区分の評価
「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」において、医療区分の評価については以下の通り記載があります。
「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の記入に当たっては、各項目の「項目の定義」に該当するか否かを判定すること。また、各項目の評価の単位については、「評価の単位」及び「留意点」に従うこと。
なお、「該当する」と判定した場合には、診療録にその根拠を記載すること。ただし、判定以降に患者の状態等の変化がない場合には、診療録に記載しなくても良いが、状態等の変化が見られた場合には診療録に記載すること。
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1430
① 該当しそうな「項目の定義」を確認する
「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の記入に当たっては、各項目の「項目の定義」に該当するか否かを判定すること。また、各項目の評価の単位については、「評価の単位」及び「留意点」に従うこと。
なお、「該当する」と判定した場合には、診療録にその根拠を記載すること。ただし、判定以降に患者の状態等の変化がない場合には、診療録に記載しなくても良いが、状態等の変化が見られた場合には診療録に記載すること。
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1430
医療区分の評価は、まず該当しそうな「項目の定義」を確認します。
評価票の手引き内の各項目には、「項目の定義」として簡単にその概要が記載されています。
「項目の定義」を参考にして、まずは入院患者の状態に当てはまりそうな項目がないかの確認をします。

リハビリをしているから「5.リハビリテーションを行っている状態」に当てはまるかも…。



酸素をしているから「18.酸素療法(密度の高い治療)」か「41.酸素療法(密度の高い治療を除く)」に当てはまるかも…。
医療区分の項目は、「処置等に係るもの」と「疾患・状態に係るもの」に分類され、それぞれ以下の項目があります。
| 処置等に係る医療区分 | 疾患・状態に係る医療区分 |
|---|---|
| 【算定期間に限りのある医療区分】 ≪医療区分3≫ ① 24時間持続しての点滴 ② 中心静脈栄養(対象疾患以外、30日以内) ≪医療区分2≫ ④ 尿路感染症 ⑤ リハビリテーション ⑥ 脱水 ⑦ 頻回の嘔吐 ⑧ せん妄 ⑨ 経腸栄養 ⑩ 頻回の血糖検査 | 【算定期間に限りのある医療区分】 ≪医療区分2≫ ③ 消化管等の体内からの出血 |
| 【算定期間に限りのない医療区分】 ≪医療区分3≫ ⑭ 中心静脈栄養(対象疾患を有する場合) ⑮ 人工呼吸器 ⑯ ドレーン法 ⑰ 気管切開・気管内挿管+発熱 ⑱ 酸素療法(高密度) ⑲ 感染症の治療 ≪医療区分2≫ ㉜ 中心静脈栄養(対象疾患以外、30日を超える) ㉝ 人工腎臓等 ㉞ 肺炎 ㉟ 褥瘡 ㊱ 下肢末端の開放創 ㊲ うつ症状 ㊳ 喀痰吸引 ㊴ 気管切開・気管内挿管+発熱なし ㊵ 創傷、皮膚潰瘍等 ㊶ 酸素療法(高密度除く) | 【算定期間に限りのない医療区分】 ≪医療区分3≫ ⑪ スモン ⑫ 欠番 ⑬ 常時、監視・管理 ≪医療区分2≫ ⑳ 筋ジストロフィー ㉑ 多発性硬化症 ㉒ 筋委縮性側索硬化症 ㉓ パーキンソン病関連疾患 ㉔ その他の指定難病等 ㉕ 脊髄損傷 ㉖ 慢性閉塞性肺疾患 ㉗ 欠番 ㉘ 省略 ㉙ 悪性腫瘍(疼痛コントロールが必要な場合に限る) ㉚ 他者に対する暴行 ㉛ 欠番 |
医療区分の評価は、患者の状態に当てはまる項目がないかを考えることが重要です。
② 該当しそうな項目の「評価の単位」と「留意点」を確認する
「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の記入に当たっては、各項目の「項目の定義」に該当するか否かを判定すること。また、各項目の評価の単位については、「評価の単位」及び「留意点」に従うこと。
なお、「該当する」と判定した場合には、診療録にその根拠を記載すること。ただし、判定以降に患者の状態等の変化がない場合には、診療録に記載しなくても良いが、状態等の変化が見られた場合には診療録に記載すること。
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1430
「項目の定義」に当てはまりそうな場合には、「評価の単位」と「留意点」を確認して該当するかを判定します。
「留意点」には、その項目に対しての確認事項が記載してあり、「評価の単位」に従って確認を行います。
| 評価の単位 | 考え方 |
|---|---|
| 1日毎 | ・毎日の状態を確認して項目に該当すれば記入します ・算定期間に限りがある項目もあるので「留意点」を確認しておきます |
| 月1回 | ・月に1回は項目に該当しているか状態を確認します |
| ー | ・算定期間に限りがないものです |
例. 処置等に係る医療区分3に該当する「24時間持続しての点滴」
例として、処置等に係る医療区分3に該当する「24時間持続しての点滴」を挙げます。
「評価の単位」と「留意点」を確認してみましょう。
| 項目の定義 |
| 24時間持続しての点滴 |
| 評価の単位 |
| 1日毎 |
| 留意点 |
| 本項目でいう24時間持続しての点滴とは、経口摂取が困難な場合、循環動態が不安定な場合又は電解質異常が認められるなど体液の不均衡が認められる場合に限るものとする。(初日を含む。) また、連続した7日間を超えて24時間持続して点滴を行った場合は、8日目以降は該当しないものとする。ただし、一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には、本項目に該当する。 |
「留意点」には、以下のような記載があります。
本項目でいう24時間持続しての点滴とは、経口摂取が困難な場合、循環動態が不安定な場合又は電解質異常が認められるなど体液の不均衡が認められる場合に限るものとする。(初日を含む。)
記載の通り、ただ24時間持続して点滴をしていれば本項目に当てはまるわけではなく、「留意点」に記載されている内容に該当している必要があります。
24時間持続しての点滴に当てはまるためには?
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経口摂取が困難
循環動態が不安定
電解質異常が認められるなど体液の不均衡が認められる
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上記の理由で「24時間持続しての点滴」をしている
「評価の単位」には、「1日毎」とあるので毎日評価をする必要があります。
また、「留意点」に以下のような記載があるので、算定期間に注意する必要があります。
また、連続した7日間を超えて24時間持続して点滴を行った場合は、8日目以降は該当しないものとする。ただし、一旦非該当となった後、再び病状が悪化した場合には、本項目に該当する。
上記の文では、「連続した7日間を超えて24時間持続して点滴を行った場合は、8日目以降は該当しない」とあるので、24時間持続して点滴をしていても、8日目からは該当しないことになります。
24時間持続しての点滴を継続していても…
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連続した7日間を超えた場合は、8日目以降は該当しない
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一旦「非該当」となって、再び病状が悪化した場合は再度「該当」になる
「留意点」には、「項目の定義」に当てはまるかの詳細な確認事項が定められているので、患者様の状態が該当するかをきちんと確認することが大切です。
③ 評価の根拠を診療録に記載する
「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の記入に当たっては、各項目の「項目の定義」に該当するか否かを判定すること。また、各項目の評価の単位については、「評価の単位」及び「留意点」に従うこと。
なお、「該当する」と判定した場合には、診療録にその根拠を記載すること。ただし、判定以降に患者の状態等の変化がない場合には、診療録に記載しなくても良いが、状態等の変化が見られた場合には診療録に記載すること。
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1430
医療区分の評価を実施した場合には、その根拠を診療録に記載します。
診療録への記載は、医師による記載だけではなく看護師による看護記録などへの記載も含まれます。
厚生局から返還請求があった場合、診療録の記載事項などの提出も求められます。常日頃から行った診療行為はしっかり記載しておくことが大切です。
④ 評価の判定後は「状態等の変化」を診療録に記載する
「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の記入に当たっては、各項目の「項目の定義」に該当するか否かを判定すること。また、各項目の評価の単位については、「評価の単位」及び「留意点」に従うこと。
なお、「該当する」と判定した場合には、診療録にその根拠を記載すること。ただし、判定以降に患者の状態等の変化がない場合には、診療録に記載しなくても良いが、状態等の変化が見られた場合には診療録に記載すること。
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1430
医療区分の評価の判定後は、患者の状態等に変化がなければ診療録への記載はしなくても良いことになっています。
ただし、状態等に変化があった場合には診療録への記載が必要になります。
診療録への記載は「何か変化があったから記載する」ではなく、「何もなくても”何もなかった”と記載する」ことが本来は望ましいです。
「評価の手引き」の解釈|ADL区分の評価
「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」において、ADL区分の評価については以下の通り記載があります。
当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、4項目(a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用)に0~6の範囲で最も近いものを記入し合計する。
新入院(転棟)の場合は、入院(転棟)後の状態について評価する。
医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1436
ADL区分の評価は、「a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用」の4項目について行います。
それぞれの項目について支援のレベルを「0~6」の範囲で点数化します。
毎日、ADL区分の評価を行いますが、当日を含む過去3日間の評価の結果の中で、最も当てはまる点数を当時の点数とします。
その日の4項目の合計点数によってADL区分が決定します。
① 4項目「ベッド上の可動性、移乗、食事、トイレの使用」を評価する
「ベッド上の可動性、移乗、食事、トイレの使用」の4項目について、それぞれ評価を行い0~6の範囲で点数をつけます。
支援のレベルの点数の評価は、下の表の通りです。
| 点数 | 状態 | 支援のレベル |
|---|---|---|
| 0 | 自立 | ・手助け、準備、観察は不要 ・手助け、準備、観察が1~2回のみ |
| 1 | 準備のみ | ・物や用具を患者の手の届く範囲に置くことが3回以上 |
| 2 | 観察 | ・見守り、励まし、誘導が3回以上 |
| 3 | 部分的な援助 | ・動作の大部分(50%以上)は自分でできる ・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支えない援助を3回以上 |
| 4 | 広範な援助 | ・動作の大部分(50%以上)は自分でできる ・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支える援助を3回以上 |
| 5 | 最大の援助 | ・動作の一部(50%未満)しか自分でできない ・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支える援助を3回以上 |
| 6 | 全面依存 | ・まる3日間、すべての面で他者が全面援助した ・及び、本動作は一度もなかった場合 |
介護の支援のレベルが必要になるほど点数は高くなります。(0点:自立 ~ 6点:全面依存)
② 4項目の合計点を計算する
4項目がそれぞれ0~6点で評価されるので、4項目の合計点(0~24点)を出します。
| 項目 | 支援のレベル |
|---|---|
| ベッド上の可動性 | 0 ~ 6点 |
| 移乗 | 0 ~ 6点 |
| 食事 | 0 ~ 6点 |
| トイレの使用 | 0 ~ 6点 |
| 4項目の合計点数 | 0 ~ 24点 |
4項目の合計点によってADL区分が決定します。


まとめ
医療区分・ADL区分の評価は、「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」をしっかり理解して行うことが重要です。
評価漏れや記入ミスがないように、医療区分・ADL区分の評価に携わるスタッフは「評価の手引き」をしっかり理解しておきましょう。
また、評価の際には「評価の手引き」をその都度参照しながら確認することも大切です。
