ADL区分の評価のながれと評価のポイント|「医療区分・ADL区分等に係る評価票」

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療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、「医療区分・ADL区分等に係る評価票」を用いて入院患者の介護必要度の評価を行います。

そして、この介護必要度の結果を表したものが「ADL区分」になります。

ADL区分は、療養病棟入院基本料の入院料を決定するために必要となるので、「評価の手引き」に沿った適切な評価が必要になります。


参考図書


目次

ADL区分の評価についての記載(医科点数表の解釈への記載事項)

ADL区分の評価は、医科点数表の解釈「別添8 医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」において以下のように記載されています。

 当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、4項目(a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用)に0~6の範囲で最も近いものを記入し合計する。

 新入院(転棟)の場合は、入院(転棟)後の状態について評価する。

医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1436

ADL区分の評価では、「当日を含む過去3日間の~」と記載があるので、入院(転棟)直後でない場合には、瞬間的な評価を行うのではなく3日間における平均的な評価が必要になります。

ADL区分の評価のながれ

ADL区分は「a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用」の4項目について、入院患者の介護必要度を評価します。

STEP

ADL区分の評価項目の内容を確認する

ADL区分の評価項目である4項目「a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用」を確認します。

項目評価の内容
a. ベッド上の可動性横になった状態からの動き
・寝返り
・起き上がり
・身体の位置の調整など
b. 移乗ベッドからイスや車イスへの移乗
・座る
・立ち上がる
※浴槽や便座への移乗は除く
c. 食事食べたり、飲んだりの状態
※上手、下手に関係なく
※経管や経静脈栄養も含む
d. トイレの使用トイレの使用の状態
・排泄後の始末
・おむつの替え
・人工肛門またはカテーテルの管理
・衣服を整える
※ポータブルトイレ、便器、尿器を含む
※移乗は除く
STEP

評価内容の支援レベルを0~6点の範囲で評価する

「ベッド上の可動性、移乗、食事、トイレの使用」の4項目について、それぞれ評価を行い0~6の範囲で点数をつけます。

  • 「ベッド上の可動性、移乗、食事、トイレの使用」の4項目
  • 0~6の点数の範囲で評価
点数状態支援のレベル
自立・手助け、準備、観察は不要
・手助け、準備、観察が1~2回のみ
準備のみ・物や用具を患者の手の届く範囲に置くことが3回以上
観察・見守り、励まし、誘導が3回以上
部分的な援助・動作の大部分(50%以上)は自分でできる
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支えない援助を3回以上
広範な援助・動作の大部分(50%以上)は自分でできる
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支える援助を3回以上
最大の援助・動作の一部(50%未満)しか自分でできない
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支える援助を3回以上
全面依存・まる3日間、すべての面で他者が全面援助した
・及び、本動作は一度もなかった場合

それぞれの評価については、医科点数表の解釈において「当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、最も近いもの」と記載があるので、当日・昨日・一昨日の状態を確認し、最も当てはまる点数を記入します。

このとき、新入院・転棟の場合には「昨日・一昨日」の状態を評価できないので、入院・転棟後の状態について評価を行います。

ADL区分の評価の注意点
  • 当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、最も近いもの
  • 当日・昨日・一昨日の状態を確認して、最も当てはまる点数
  • 新入院・転棟の場合には、入院・転棟後の状態について評価

当日・昨日・一昨日の状態を確認する必要があることを理解しておきましょう。

STEP

4項目の評価の合計点を出す

4項目がそれぞれ0~6点で評価されるので、4項目の合計点(0~24点)を出します。

項目支援のレベル
ベッド上の可動性0 ~ 6点
移乗0 ~ 6点
食事0 ~ 6点
トイレの使用0 ~ 6点
4項目の合計点数0 ~ 24点

4項目の合計点数は0~24点の幅がありますが、介護必要度が高いほど合計点数も高くなります。

STEP

4項目の合計点数をもとにADL区分が決定する

4項目がそれぞれ0~6点で評価されるので、4項目を合計点(0~24点)を出します。

ADL区分1ADL区分2ADL区分3
介護の必要度(点)0 ~ 1011 ~ 2223 ~ 24
状 態自 立寝たきり
介護必要度低い       ⇔       高い

4項目の合計点が24点に近づくほど、介護必要度が高く、寝たきりの状態になっていきます。

ADL区分の評価のポイント

ADL区分の評価は、4つの評価項目「a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用」について評価を行い、各項目を0~6点(自立から全面依存まで)の範囲で点数をつけます。

そして、4つの項目の合計点数でADL区分が決定します。

 当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、4項目(a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用)に0~6の範囲で最も近いものを記入し合計する。

 新入院(転棟)の場合は、入院(転棟)後の状態について評価する。

医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1436

医科点数表の解釈においての記載分を確認していきます。

ポイント ①:3日間の全勤務帯における評価だということに注意する

 当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、4項目(a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用)に0~6の範囲で最も近いものを記入し合計する。

 新入院(転棟)の場合は、入院(転棟)後の状態について評価する。

医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1436

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 当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、4項目(a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用)に0~6の範囲で最も近いものを記入し合計する。
 新入院(転棟)の場合は、入院(転棟)後の状態について評価する。

ADL区分の評価は、その瞬間の介護必要度の評価の点数を記入するのではなく、「当日を含む過去3日間の全勤務帯における支援レベルで最も近い評価」を記入するようになっています。

そのため、項目の評価をする際には、当日を含む3日間(当日・前日・前々日)の全勤務帯の状態を確認する必要があります。

なお、新入院(転棟)の場合は、前日と前々日の評価ができないため入院後の状態について評価を行います。

ADL区分の各項目の評価期間
  • 当日を含む3日間(当日・前日・前々日)の全勤務帯
  • 新入院(転棟)の場合は、入院後の状態を評価

ポイント ②:3日間の支援レベルに最も近い点数で評価する

 当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、4項目(a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用)に0~6の範囲で最も近いものを記入し合計する。

 新入院(転棟)の場合は、入院(転棟)後の状態について評価する。

医科点数表の解釈(令和6年6月版)p1436

⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩⇩

 当日を含む過去3日間の全勤務帯における患者に対する支援のレベルについて、4項目(a.ベッド上の可動性、b.移乗、c.食事、d.トイレの使用)に0~6の範囲で最も近いものを記入し合計する。
 新入院(転棟)の場合は、入院(転棟)後の状態について評価する。

ADL区分の評価は、その瞬間の介護必要度の評価の点数を記入するのではなく、「当日を含む過去3日間の全勤務帯における支援レベルで最も近い評価」を記入するようになっています。

そのため、当日を含む3日間(当日・前日・前々日)の評価において平均的な介護必要度の点数を0~6の範囲でつける必要があります。

そのため、一瞬だけ支援のレベルが高くなったとしても、その評価点をつけるわけではなく、あくまでも3日間の支援レベルを確認した上での平均的な評価をしなくてはいけません。

ADL区分の各項目の評価点数
  • 評価項目をa~dについて、それぞれ 0~6点 で評価
  • 最も重いレベルの点数ではなく3日間の評価で最も近いもの

複数のスタッフで評価を行う場合、点数のつけ方に差が出てしまいます。常日頃から介護の支援レベルについての認識を統一できるように確認しておくことが大切です。

ポイント ③:フローチャートで適切な評価をする

各項目の評価の点数は、「自立:0点、準備のみ:1点、観察:2点、部分的の援助:3点、広範な援助:4点、最大の援助:5点、全面依存:6点」と定められています。

点数状態支援のレベル
自立・手助け、準備、観察は不要
・手助け、準備、観察が1~2回のみ
準備のみ・物や用具を患者の手の届く範囲に置くことが3回以上
観察・見守り、励まし、誘導が3回以上
部分的な援助・動作の大部分(50%以上)は自分でできる
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支えない援助を3回以上
広範な援助・動作の大部分(50%以上)は自分でできる
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支える援助を3回以上
最大の援助・動作の一部(50%未満)しか自分でできない
・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支える援助を3回以上
全面依存・まる3日間、すべての面で他者が全面援助した
・及び、本動作は一度もなかった場合

上記の表に当てはめた評価をしやすいように、フロチャートが記載されているので、フロチャートを用いて適切な評価を行うようにします。

ボディタッチは必要か?

必要なし ⇨ 「0点:自立」「1点:準備のみ」「2点:観察」

必要ある ⇩⇩⇩

体重を支える必要はあるか?

必要なし ⇨ 「3点:部分的な援助」

必要ある ⇩⇩⇩

本動作の半分以上を自力でできているか?

できる  ⇨ 「4点:広範な援助」

必要ある ⇩⇩⇩

少しでも本動作に参加しているか?

している  ⇨ 5点:最大の援助

していない ⇨ 6点:全面依存

ポイント ④:評価の合計点によってADL区分が決定する

各項目の評価をした後は、その合計点によって当日のADL区分が決定します。

評価項目abcdの4項目はそれぞれ ”0~6点” なので合計は ”0~24点” になり、「0~10点ならADL区分1」「11~22点ならADL区分2」「23~24点ならADL区分3」となります。

評価点数ADL区分
0 ~ 10点 ADL区分1
11 ~ 22点 ADL区分2
23 ~ 24点 ADL区分3

評価の合計点によるADL区分の決定:例

ADL区分の評価による区分の決定を例で挙げます。

仮に、1~3日目の各項目の評価が下の画像のような状態だったとします。

1234531
 a ベッド上の可能性246
 b 移乗246
 c 食事246
 d トイレの使用246
 ADL得点(0~24点)81624

1日目のADL区分は?

1234531
 a ベッド上の可能性246
 b 移乗246
 c 食事246
 d トイレの使用246
 ADL得点(0~24点)81624

1日目の各項目の評価点は、a:2点、b:2点、c:2点、d:2点で合計8点です。

合計点数が8点であり、0~10点の範囲に含まれるので「ADL区分1」になります。

ADL区分評価点数
ADL区分10 ~ 10点
ADL区分211 ~ 22点
ADL区分323 ~ 24点

2日目のADL区分は?

1234531
 a ベッド上の可能性246
 b 移乗246
 c 食事246
 d トイレの使用246
 ADL得点(0~24点)81624

2日目の各項目の評価点は、a:4点、b:4点、c:4点、d:4点で合計16点になります。

合計点数が16点であり、11~22点の範囲に含まれるので「ADL区分2」になります。

ADL区分評価点数
ADL区分10 ~ 10点
ADL区分211 ~ 22点
ADL区分323 ~ 24点

3日目のADL区分は?

1234531
 a ベッド上の可能性246
 b 移乗246
 c 食事246
 d トイレの使用246
 ADL得点(0~24点)81624

3日目の各項目の評価点は、a:6点、b:6点、c:6点、d:6点で合計24点になります。

合計点数が24点であり、23~24点の範囲に含まれるので「ADL区分3」になります。 

ADL区分評価点数
ADL区分10 ~ 10点
ADL区分211 ~ 22点
ADL区分323 ~ 24点

まとめ

ADL区分は、療養病棟入院基本料の入院料を決定するために必要となるので、「評価の手引き」に沿った適切な評価が必要になります。

フローチャートに沿って評価を行えばスムーズに評価をすることが可能です。

評価に携わるスタッフが複数いる場合には、大きく評価の違いが出ないように話し合いながら評価を行っていきましょう。

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