「医療区分㉙:悪性腫瘍(疼痛コントロールが必要な場合)」をわかりやすく解説|【疾患・状態に係る医療区分:医療区分2】

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療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。

そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。

この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。

※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。

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参考図書


目次

医療区分の概要(医科点数表の解釈)

医療区分「悪性腫瘍」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


29. 悪性腫瘍(医療用麻薬等の薬剤投与による疼痛コントロールが必要な場合に限る。)

項目の定義
悪性腫瘍医療用麻薬等の薬剤投与による疼痛コントロールが必要な場合に限る。)
評価の単位
1日毎
留意点
ここでいう医療用麻薬等とは、WHO’s pain ladderに定められる第2段階以上のものをいう。

語句の説明

「悪性腫瘍」とは?

悪性腫瘍とは、体の細胞が異常に増殖して周囲の組織に広がり(浸潤)、他の臓器に転移する可能性がある、生命を脅かす可能性のある腫瘍です。

一般的に「がん」とも呼ばれ、上皮細胞から発生する「癌(がん)」と、骨や筋肉などの細胞から発生する「肉腫」に大きく分けられます。

悪性腫瘍の特徴
異常な増殖正常な細胞と異なり、自律的な制御を失って無制限に増殖します。
浸潤周囲の健康な組織や臓器に侵入します。
転移血管やリンパの流れに乗って、体の離れた場所にある臓器にも広がり、新たな腫瘍を形成します。

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「医療用麻薬」とは?

医療用麻薬は、主にがんによる強い痛みや息苦しさなどの症状を和らげるために使用される鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)です。

脳や脊髄のオピオイド受容体に作用することで鎮痛効果を発揮します。

医療用麻薬には様々な種類があり、痛みの強さに応じて使い分けられます。

種類と投与方法
主な種類モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、コデイン、トラマドールなどがあります。
投与経路飲み薬(錠剤、散剤、液剤)、貼り薬、坐薬、注射薬などがあり、患者さんの状態や症状の強さに応じて選択されます。注射薬は、携帯装置を用いて自宅療養時にも使用可能です。

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「疼痛コントロール」とは?

疼痛コントロールとは、薬物療法と非薬物療法の組み合わせで、痛みを和らげ、患者のQOL(生活の質)を向上させるための医学的・看護的アプローチです。

主な薬物療法としては、鎮痛薬を定期的に投与し、痛みの程度に応じて段階的に強力な薬に変更していきます(鎮痛薬使用の4原則)。

非薬物療法には、運動療法、温熱・冷却、マッサージ、鍼治療などがあります。

疼痛コントロールの目標
・痛みによって夜間の睡眠が妨げられない。
・安静時の痛みがなくなる。
・体動時の痛みがなくなる。

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「WHO’s pain ladder(WHO方式の三段階除痛ラダー)」とは?

WHO’s pain ladder(WHO方式の三段階除痛ラダー)は、がん性疼痛に対する薬物療法の基本的な考え方です。

これは、基礎および臨床研究に基づいて考案された治療法で、非オピオイド鎮痛薬とオピオイド鎮痛薬を痛みの強さによって段階的に進めていく方法です。

鎮痛補助薬、神経ブロック、放射線治療は必要に応じて、どの時点から導入しても良いとされています。

WHO’s pain ladder(WHO方式の三段階除痛ラダー)
第1段階軽度の痛みに対し非オピオイド鎮痛薬(NSAIDsやアセトアミノフェン)を開始する。
第2段階軽度から中等度の痛みに対し、弱オピオイド(コデインやトラマドール)を追加する。
第3段階中等度から高度の痛みに対し、弱オピオイドから強オピオイド(モルヒネ・フェンタニル・オキシコドン・タペンタドール)に切り替える。この4種類のオピオイドで管理が困難な症例にメサドンを考慮する。

第一段階の薬剤は作用機序が異なるので基本的に継続します。放射線治療や神経ブロックなどにより痛みが減弱した場合には、鎮痛薬の減量が可能となります。オピオイドの適応は、痛みの強さと原因で決定されるべきであり、生命予後の長短を考慮する必要はありません。

「WHOがん疼痛治療ガイドライン」のがん疼痛マネジメントの1つ、「鎮痛薬使用の4原則」も重要です。

鎮痛薬使用の4原則
経口投与を基本とする簡便かつ容量調節が容易で、経済的にも望ましい。貼付剤は、経口困難、経口投与を希望しない患者や、痛みが安定している症例に適している。
時刻を決めて規則正しくがんの痛みは薬剤の血中濃度が低下する(痛み閾値が下がる)と出現する。先取り鎮痛の目的で時刻を決めて投与し、血中濃度(痛み閾値)を安定させQOLの向上を目指す。
③ 患者ごとの個別の量で年齢・体重・腎機能・肝機能などを考慮し、最少量で最大の鎮痛効果が得られる用量調節を行う。
④ その上で細かい配慮を痛みの原因、鎮痛薬の必要性、作用機序などを患者と家族に十分説明し、安心して使用継続できるように配慮する。便秘、悪心嘔吐、眠気などの副作用にも十分に配慮し、鎮痛薬の効果および副作用を評価し、治療の継続を行う。鎮痛効果が得られず副作用のみ発現してしまうと、オピオイドに対する拒否感が強くなりその後の疼痛治療に大きな影響をもたらす危惧がある。

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評価の要点

【疾患・状態に係る医療区分㉙】悪性腫瘍(疼痛コントロールが必要な場合に限る)

分類医療区分算定期間評価の単位
疾患・状態医療区分2期間に限りなし1日毎

悪性腫瘍に罹患していることを確認します。

その上で、医療用麻薬等で疼痛コントロールが必要なことを確認します。

医療用麻薬等とは、WHO’s pain ladderに定められる第2段階以上のものになります。

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

該当要件のチェックポイント
悪性腫瘍(医療用麻薬等の薬剤投与による疼痛コントロールが必要な場合に限る。)に該当する。     
症状の経過と現状が十分把握されている。
疼痛コントロールと診療・看護計画が作成されている。
QOLに十分な配慮がなされている。
緩和ケア計画が作成され、対応がなされている。
ここでいう医療用麻薬等とは、WHO’s pain ladderに定められる第2段階以上のものをいう。
算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。                                      

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