療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。
そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。
この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。
※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。
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「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を理解する
療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入します。その評価は「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっているため、評価を行うスタッフは、評価の手引きをしっかり理解しておく必要があります。
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目次
医療区分の概要
医療区分「筋ジストロフィー」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。
20. 筋ジストロフィー
語句の説明
- 「筋ジストロフィー」とは?
-
筋ジストロフィーは、遺伝子の異常により筋肉に必要なタンパク質が作られず、筋肉が壊れやすくなる進行性の難病です。
これにより筋力が徐々に低下し、手足の動きのほか、呼吸や嚥下機能、心機能などにも影響が出ます。
初期症状は疾患タイプによって異なり、小児期に発症するケースが多いですが、成人で発症することもあります。
| 原因 |
|---|
| 遺伝子の変異 | 筋肉の形成・維持に必要な遺伝子に異常(変異)があることが原因です。 |
| タンパク質の不足・機能不全 | 遺伝子変異により、筋肉内で必要なタンパク質が作られないか、うまく機能しなくなります。その結果、筋肉が壊れやすくなり、再生が追いつかなくなり、筋肉の減少と筋力低下が起こります。 |
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- 「難病の患者に対する医療等に関する法律第5条に規定する指定難病」とは?
-
「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)第5条に規定する指定難病とは、厚生労働大臣が定める一定の要件を満たす難病の疾患群です。
この法律に基づき、指定難病の患者は医療費助成の対象となります。
難病法では、以下の4つの要件をすべて満たすものを「難病」と定義しています。
- 発病の機構が明らかでないこと
- 治療方法が確立していないこと
- 希少な疾病であること
- 長期にわたり療養を必要とすること
「難病」の定義を満たすもののうち、厚生労働大臣が定める基準(患者数が本邦において一定の人数に満たないこと等)を満たすものを「指定難病」として定めています。
指定難病の数は定期的に見直されており、2025年4月1日時点では348疾病が対象となっています。
指定難病と診断され、一定の要件(重症度等)を満たす患者は、申請により「特定医療費受給者証」が交付され、医療費の自己負担分が軽減されます。
指定難病の一覧は、厚生労働省のHPで確認することができます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000084783.html
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- 「同法第7条第4項」とは?
-
同法第7条第4項について、「同法」は前文にある「難病の患者に対する医療等に関する法律」のことなので、「難病法 第7条第4項」のことになります。
難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)第7条第4項は、都道府県が特定医療費の支給認定を行った際の手続きについて定めています。
難病法 第7条第4項
都道府県は、支給認定をしたときは、支給認定を受けた指定難病の患者又はその保護者(以下「支給認定患者等」という。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、支給認定の有効期間その他の厚生労働省令で定める事項を記載した医療受給者証を交付しなければならない。
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- 「医療受給者証」とは?
-
難病の「医療受給者証」は、「特定医療費(指定難病)受給者証」のことで、指定難病にかかった医療費の一部助成を受けるための証明書です。
申請は居住地の保健所などに提出し、審査を経て交付されます。
この受給者証は、記載された「指定医療機関」でのみ使用でき、医療費の自己負担額が自己負担上限額まで軽減されます。
| 医療受給者証について |
|---|
| 目的 | 指定難病患者の高額な医療費負担を軽減するための制度です。 |
| 対象 | 厚生労働省が定める「指定難病」に該当する方。 |
| 内容 | 医療費の自己負担額の上限が定められ、それを超える医療費は助成されます。 |
| 申請から交付までの流れ |
|---|
| 申請 | 住所地の保健所や、県難病・相談支援センターに申請書を提出します。 |
| 審査 | 都道府県や指定都市が審査を行い、承認・不承認が決定されます。 |
| 交付 | 承認された場合、「特定医療費(指定難病)受給者証」と「自己負担上限額管理表」が送付されます。 |
| 注意点 | 審査結果が出るまで数ヶ月かかることがあります。交付されるまでに指定医療機関で支払った医療費は、後日払い戻しの請求が可能です。 |
| 医療受給者証の使い方 |
|---|
| 受診時 | 医療機関に受給者証を提示し、自己負担上限額までを支払います。 |
| 対象医療機関 | 受給者証に記載された「指定医療機関」での治療が対象です。 |
| 記載内容 | 助成対象となる病名や、受診する医療機関(基幹病院やかかりつけ医)が記載されています。 |
| 変更時 | かかりつけ医などを変更する際は、都道府県に届け出が必要です。 |
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- 「同条第1項」とは?
-
同条第1項について、「同条」は前文にある「同法第7条第4項(難病法 第7条第4項)」のことなので、「難病法 第7条第1項」のことになります。
難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)第7条第1項は、指定難病患者の支給認定について定めています。
難病法 第7条第1項
都道府県は、前条第1項の申請に係る指定難病の患者が、次の各号のいずれかに該当する場合であって特定医療を受ける必要があるときは、支給認定を行うものとする。
一 その病状の程度が厚生労働大臣が厚生科学審議会の意見を聴いて定める程度であるとき。
ニ その治療状況その他の事情を勘案して政令で定める基準に該当するとき。
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評価の要点
【疾患・状態に係る医療区分⑳】筋ジストロフィー
| 分類 | 医療区分 | 算定期間 | 評価の単位 |
|---|
| 疾患・状態 | 医療区分2 | 期間に限りなし | ― |
筋ジストロフィーに罹患していて、以下のいずれかに当てはまるものに限ります。
- 医療受給者証を交付されている
- 特定医療費の支給認定に係る基準を満たす状態にあることを医療機関において確実に診断されている
医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。
受給者証の交付を受けていない場合の対象基準
受給者証の交付を受けていない患者については、留意点に「特定医療費の支給認定に係る基準を満たす状態にあることを医療機関において確実に診断されるもの」という記載があります。
この医療機関における診断の基準については、医科点数表の解釈に事務連絡の記載がされています。
療養病棟入院基本料に関する事務連絡(医科点数表の解釈:令和6年6月版 p94)
- 指定難病については、A101療養病棟入院基本料の「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」19~23(編注:20~24)においては、「同法(難病の患者に対する医療等に関する法律)第7条第4項に規定する医療受給者証を交付されている患者(同条第1項各号に規定する特定医療費の支給認定に係る基準を満たすものとして診断を受けたものを含む。)に係るものに限る」と規定されています。
これについて、病名及び重症度が「特定医療費の支給認定に係る基準」を満たすことを患者が受診する保険医療機関の医師が診断したが、受給者証の交付を受けていない場合も、対象に含まれるか?
-
医師が、病名及び重症度が基準を満たすことを客観的な根拠とともに医学的に明確に診断できる場合には含まれる。(平28.6.14 その4・問4)
指定難病については、A101療養病棟入院基本料の「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」19~23(編注:20~24)においては、「同法(難病の患者に対する医療等に関する法律)第7条第4項に規定する医療受給者証を交付されている患者(同条第1項各号に規定する特定医療費の支給認定に係る基準を満たすものとして診断を受けたものを含む。)に係るものに限る」と規定されています。
これについて、病名及び重症度が「特定医療費の支給認定に係る基準」を満たすことを患者が受診する保険医療機関の医師が診断したが、受給者証の交付を受けていない場合も、対象に含まれるか?
医師が、病名及び重症度が基準を満たすことを客観的な根拠とともに医学的に明確に診断できる場合には含まれる。(平28.6.14 その4・問4)
「評価の手引き:医療区分⑳~㉔」について
「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」19~23(編注:20~24)は以下の5つです。
- 医療区分⑳:筋ジストロフィー
- 医療区分㉑:多発性硬化症
- 医療区分㉒:筋萎縮性側索硬化症
- 医療区分㉓:パーキンソン病関連疾患
- 医療区分㉔:その他の指定難病等
受給者証の交付を受けていない場合の対象基準
受給者証の交付を受けていない場合も、「評価の手引き」の留意点に「医師が、病名及び重症度が基準を満たすことを客観的な根拠とともに医学的に明確に診断できる場合には含まれる。」と記載があります。
それについて、療養病棟入院基本料に関する事務連絡で、「医師が、病名及び重症度が基準を満たすことを客観的な根拠とともに医学的に明確に診断できる場合には含まれる。」とあるので、医師によって医学的根拠を示した上で判断することで医療区分に該当することになります。
受給者証の交付を受けていない場合であっても、患者が受診する保険医療機関の医師が、病名及び重症度が「特定医療費の支給認定に係る基準」を満たすことを診断する必要があります。また、その医学的な根拠を診療録等に記載することが必要です。
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業務でご活用ください。
- 患者単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
- 病棟単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
- 病棟単位の医療区分の内訳(割合)