「医療区分③:消化管等の体内からの出血が反復継続している状態」をわかりやすく解説|【疾患・状態に係る医療区分:医療区分2】

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療養病棟入院基本料を算定する療養病棟では、入院患者の医療区分・ADL区分の評価を毎日行い、その結果を「医療区分・ADL区分等に係る評価票」に記入するようになっています。

そして、その評価には「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」を用いるようになっています。

この記事では、「評価の手引き」に記載されている医療区分の項目について分かりやすく解説します。

※「医療区分・ADL区分等に係る評価票 評価の手引き」の概要については以下の記事をご参照ください。

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参考図書


目次

医療区分の概要(医科点数表の解釈)

医療区分「消化管等の体内からの出血が反復継続している状態」は、医科点数表の解釈において以下のように記載されています。


3. 消化管等の体内からの出血が反復継続している状態

項目の定義
消化管等の体内からの出血が反復継続している状態
評価の単位
1日毎
留意点
本項目でいう消化管等の体内からの出血が反復継続している状態とは、例えば、黒色便コーヒー残渣様嘔吐喀血痔核を除く持続性の便潜血が認められる状態をいう。

出血を認めた日から7日間まで、本項目に該当するものとする。

語句の説明

「消化管」とは?

消化管とは、口から肛門までつながる、食物の消化、吸収、排泄を担う管状の器官の総称です。

具体的には、口腔、咽頭、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸(盲腸、結腸、直腸)から成り立っており、私たちの体が食物から栄養を摂取するために不可欠な役割を果たしています。

主な役割
消化と吸収食物を消化液で分解し、体に必要な栄養分を吸収します。
排泄吸収されなかったものを便として体外に排出します。
防御機能食物と一緒に侵入してくる細菌やウイルスなどから体を守ります。

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「出血が反復継続している状態」とは?

「出血が反復継続している状態」とは、一度止血した出血が再び起こったり、少量の出血が何度も続いたりする状態を指します。

消化管出血の主な原因には、「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」、「大腸憩室」があります。

消化管出血の主な原因
胃潰瘍・十二指腸潰瘍繰り返し起こりやすい代表的な原因です。検査で見つかったり、露出した血管が認められたりした場合は、クリップで血管を縛るなどの止血処置が行われます。
大腸憩室一度できた憩室は自然には戻らず、治療後も再発することがあります。再発率は約40%です。

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「黒色便」とは?

黒色便とは、タールのように真っ黒で粘り気のある便のことです。

これは、胃や十二指腸など消化管の上部で出血が起こり、血液が胃酸などの消化液と混ざって酸化したことが原因である場合が多く、消化管からの出血を示すサインとなる可能性があります。

一方で、鉄分を多く含む食品やサプリメント、イカスミなどを食べたことが原因で黒くなることもあります。

考えられる原因
消化管出血胃、十二指腸、小腸の上部などで出血が起こると、血液が消化液によって黒く変色します。
・潰瘍
・十二指腸潰瘍
・胃がん
・食道がん
・食道静脈瘤  など
食事・薬特定の食品や薬の摂取によって黒くなることがあります。
・食品例:イカスミ、黒ごま、海藻類、レバーなど
・薬例:鉄剤、一部の漢方薬、活性炭など

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「コーヒー残渣様嘔吐」とは?

コーヒー残渣様嘔吐は、上部消化管(食道、胃、十二指腸)からの出血が胃酸によって酸化・変色し、コーヒーの出がらしのような暗褐色の吐物となる症状です。

主な原因
胃・十二指腸潰瘍出血が起こり、血液が胃酸と混ざることでコーヒー残渣状になります。
胃がん胃がんが原因で出血し、同様の症状を引き起こすことがあります。
マロリー・ワイス症候群激しい嘔吐などにより食道と胃の接合部が裂けて出血する病気です。
びらん性胃炎胃の粘膜が炎症を起こし、ただれた状態になることで出血します。
その他のまれな原因脳圧亢進や腸閉塞、食道静脈瘤、食道破裂などでも、同様の症状が現れることがあります。

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「喀血」とは?

咳とともに血液を喀出することを喀血(かっけつ)と言います。

原因としては、肺がん、肺結核、非結核性抗酸菌症、気管支拡張症、肺炎、肺アスペルギルス症、肺梗塞、心不全など色々な病気が考えられます。

喀血と似たもので吐血(とけつ)がありますが、喀血と吐血の違いは出血部位が呼吸器系なのか消化器系なのかということです。

吐血は、胃や食道などの消化管からの出血で、嘔吐とともに吐き出すことが多く、血液が胃酸と混じって赤黒くなるのが特徴です。

一方、喀血は、気管や肺などの呼吸器系からの出血で、咳とともに吐き出すことが多く、鮮やかな赤色で泡が混じっている場合があります。

項目喀血(かっけつ)吐血(とけつ)
出血部位呼吸器系(気管、気管支、肺など)消化管(胃、食道、十二指腸など)
排出のされ方咳とともに吐き出す。嘔吐とともに吐き出す。
血液の色鮮やかな赤色で泡が混じっていることが多い。赤黒いことが多い(胃酸と混じるため)が、大量出血の場合は鮮やかな赤色になることもある。
その他の特徴泡が混じっていることが多い。咳、呼吸困難などの症状を伴うことが多い。食べ物のカスが混じっている場合がある。酸っぱいにおいがすることがある。

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「痔核」とは?

痔核とは、「いぼ痔」とも呼ばれ、肛門の近くにある血管がうっ血して腫れ上がった状態を指します。

主な原因は、排便時のいきみや便秘、長時間の座りっぱなし、妊娠・出産などによって肛門にかかる負担です。

歯状線(直腸と肛門の境目)より内側にできる「内痔核」と外側にできる「外痔核」の2種類に分類されます。

 内痔核
(ないじかく)
歯状線より内側の直腸粘膜にできるいぼ痔です。痛みは感じにくいですが、出血したり、排便時に脱出したりすることがあります。
 外痔核
(がいじかく)
歯状線より外側の皮膚側にできるいぼ痔です。突然腫れて激しい痛みを伴うことが多く、自分でも気づきやすいのが特徴です。
主な原因
・排便時のいきみ、便秘、下痢
・長時間の座位や立ち仕事
・妊娠・出産
・加齢による肛門周囲の組織の緩み
・長時間のトイレでのスマートフォン使用

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「便潜血」とは?

便潜血とは、肉眼では見えないほど微量の血液が便に混じっている状態を指します。

この状態を調べる検査が便潜血検査で、主に大腸がんや大腸ポリープなどの消化管の病気を早期に発見することを目的としています。

便潜血検査で陽性が出た場合、何らかの出血があるサインのため、放置せずに必ず消化器内科で大腸カメラなどの精密検査を受ける必要があります。

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評価の要点

【疾患・状態に係る医療区分③】消化管等の体内からの出血が反復継続している状態

分類医療区分算定期間評価の単位
疾患・状態医療区分2期間に限りあり出血を認めた日から7日間

消化管等の体内から、出血が繰り返されている状態を確認します。

消化管等からの出血の例は、下記のようなものです。

  • 黒色便
  • コーヒー残渣様嘔吐
  • 喀血
  • 痔核を除く持続性の便潜血  など

出血を認めた日から、7日間は本項目に該当することになります。

医療区分の該当要件に当てはまるかを確認し、算定期間の要件に注意して評価票に記入をすることが大切です。

評価のチェックポイント

評価のチェックポイントを確認して、評価ミスや記入漏れがないようにしましょう。

該当要件のチェックポイント
消化管等の体内からの出血を確認し、診療録に記載している。
体内出血の原因を明らかにする努力をしている。
出血が反復継続している状態が認められるような既往・診断名がある。              
体内出血の原因を明らかにするために、適切な検査が実施されている。
診療計画を立てて治療を実施している。
医師が治癒を確認している。
算定期間のチェックポイント
1日毎に評価を行っている。
出血が繰り返されていることを確認した上で、出血を認めた日から7日間まで本項目に該当する。

評価票の考え方・記入例

評価票の考え方と記入例です。

①「消化管等の体内からの出血」の考え方

「消化管等の体内からの出血」という記載は、「…等」といった曖昧な記載で解釈が難しいです。

一部の研修会において、鼻血や血尿も体内からの出血とする旨の説明もあるようですが、判断が難しい部分でもあります。

留意点において、痔核からの出血を認めない記載があることから、「経鼻胃管による鼻腔損傷を原因とする出血」や「尿道カテーテル留置による尿道粘膜の損傷を原因とする血尿」などは、本項目に該当しないことが考えられます。

ただし、「副鼻腔腫瘍を原因とする鼻血」や「膀胱腫瘍を原因とする血尿」などといった体内からの出血ならば、本項目に該当すると考えられます。

体内出血の原因を明らかにするために、適切な検査を実施することが必要です。

② 「消化管等の体内から出血を認めた日から7日間」の考え方

消化管等の体内から出血を認めた日から7日間は医療区分に該当するため、出血を認めた日から7日間の算定が可能になる。

例 1

11/1~11/3に出血を確認。

11/4以降は、消化管等の体内からの出血はなし。

最後に出血を確認した11/3から数えて、7日目にあたる11/9までが該当することになる。

日付症状・治療評価票
11/1出血を確認該当(1日目)
11/2出血を確認該当(1日目)
11/3出血を確認該当(1日目)
11/4なし該当(2日目)
11/5なし該当(3日目)
11/6なし該当(4日目)
11/7なし該当(5日目)
11/8なし該当(6日目)
11/9なし該当(7日目)
11/10なし非該当

例 2

11/1~11/3に出血を確認。

11/4~11/6は、消化管等の体内からの出血はなし。

11/7~11/9に再度、出血を確認。

11/10以降は、消化管等の体内からの出血はなし。

最後に出血を確認した11/9から数えて、7日目にあたる11/15までが該当することになる。

日付症状・治療評価票
11/1出血を確認該当(1日目)
11/2出血を確認該当(1日目)
11/3出血を確認該当(1日目)
11/4なし該当(2日目)
11/5なし該当(3日目)
11/6なし該当(4日目)
11/7出血を確認該当(1日目)
11/8出血を確認該当(1日目)
11/9出血を確認該当(1日目)
11/10なし該当(2日目)
11/11なし該当(3日目)
11/12なし該当(4日目)
11/13なし該当(5日目)
11/14なし該当(6日目)
11/15なし該当(7日目)
11/16なし非該当

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  • 患者単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
  • 病棟単位の医療区分2・3の割合(重症度割合)
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